18話

 side 平石 わかば

 盛大な拍手と共にステージを去った私達が控え室に帰ると待っていたのは近藤さんからの頬への平手打ちであった。


 思ったよりも強い力の平手打ちは私の体勢を容易に崩し、私は地面に倒れる


「わかば、分かってるのか」

 近藤さんは私を上から見下ろして、鬼の形相で言う。


「分かっているなら、今すぐ会場に戻って間違ってましたって謝ってこい」

 さゆりと花が私と近藤さんの間に入ってくれる。


「近藤さん、わかばの行動は間違っていると思いません」

「乙女の肌を傷つけるとか最低」


「いいか、お前らここで謝らなかったら干されるぞ、問題を抱えた弱小アイドルなんて要らないからな。それでも良いのか」

「楽しくやらなければアイドルじゃないです」

「別にどうでもいい」


「ふん」

 近藤さんは踵をかえす。


「近藤さん。少しは人の思いも考えたらどうですか?さもないと足下掬われますよ」

 私の口から多分、口に出してはいけない言葉が自然と紡がれていた。ゆかちゃんのこともあるし、頭にきていたんだと思う。


「ふん、アイドルに考えはいらないし、」


「それで、掬われるのなら本望さ」

 少しだけ、口元に笑みを浮かべ、近藤さんは去っていった。


「わかば元気だして?」

「足くじいていない」


「…ごめんなさい…。もしかしたら、私のせいで干されてアイドル活動さえ出来なくなるかもしれない」

 近藤さんは今までの仕事の取ってきかたを見るに、この事務所の中でも上の方にいる人だと思う。

 そんな人に私のせいで干されると言われてしまった。


 二人はアイドル活動さえ出来なくなってしまうかもしれない。


「大丈夫だよ、干されたって、今話題のねっとアイドルとかやれば三人なら絶対有名になれるよ」

 さゆりは前向きな事しか見ない、本当にアイドル向きの正確だと思う。


「はあ、私が可愛く見えるためにあなた達が必要だから、ネットアイドルでも路上アイドルでもやってあげるわ」

 花は花だな。少し丸くなったけど。


「…ありがとう。…私もこれから、今以上に頑張っていくから、宜しくお願いします…」

 私は立ち上がり、45度でお辞儀をした。


 なんか、この二人がいるならトップアイドル目指さなきゃいけないと思う。


 私がゆかちゃんからもらった希望を、二人やファンの方にあげるべきだ。








 引きこもり生活一日目。

 家をマスコミによって見張られているという、事件の容疑者さながらの扱いを受けているために結構簡単に私の引きこもりは許可されました。


 私は茜がいないため、久しぶりに自堕落な生活を送ってます。時々、チャイムと電話を無視すれば快適です。


 動画の再生数は1億5000万を越えている。凄いなー、コメント欄はすでに国際色豊かになっている。


 これは外国のマスコミにインタビューされるフラグかな。


 私はだらだらとテレビを流し見ながら、茜が作ってくれた昼御飯を食べる。


 12時と共にニュースになった。変えようとリモコンを手に取るとわかばちゃんがアップで移った。


 そして、そこには堂々と喋り、自分の意思をしっかり言うわかばちゃんの姿が映っていた。


 そういえば、私、わかばちゃんの一番のファンになるようって言ったな。あれ、一番目のファンになるよっていう意味だったんだだけど、まあいいかな。


 わかばちゃんが喜んでいてくれるならいいや。


 私もマスコミの前で堂々と話した方が良いのかな?

 面倒だしいいか。


 二度寝しましょうー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る