第8話 作戦会議(という名前のミアの独演会)

「すーみーまーせーん!キンちゃんいますか?」



ドアがノックされ、ミアの声がした。



「ここにいるって聞いたんですけど……あ、キンちゃんおはよう!」


「おはよう、ミア」


「ギルドの応接室なんてレベルが高い人しか入れない所でしょ。キンちゃん、マジすげー」



入ってきた途端、部屋の中をキョロキョロ見て回るミア。



「あ、お菓子食べてるの?いいなー」


「ミアさんにもお茶をお入れしましょうか?」



イザベラはミアのことを知っているようだった。ギルドに顔を出している人間はだいたい覚えているのだろうか。



「いいの?やったー。じゃあキンちゃん、作戦会議だけど、ここでする?」


「あまり長い時間ここにいたら悪いだろう……」


「よかったら、このまま応接室を使ってもいいですよ」



ずうずうしいことを言うミアだったが、イザベラは気にした様子もなかった。



「何か、えらく親切だな……」


「キンちゃんが有望な冒険者だからだね」



ミア、気軽にギルドの連中のことを簡単に信用してはいけないぞ……。


声には出さずそう思うキンバリーであった。



―――――



作戦会議という名前だった気がするが、ほとんどミアの話を聞くような形になってしまった。



「フレンドリーファイヤーーーー!!!!」


「………?」


「オウンゴーーーーーールッ!!!!!」


「………………???」


「みたいな感じでね、私のパーティーは半壊状態。メンバーは4人いたんだけど、2人が抜けちゃったんだ」



時々、意味の分からない雄叫びが入り、何とも要領の得ない内容であった。



話を要約するとこんな感じ。


ミア達は女の子4人でパーティーを組んでいた。


冒険者学校の仲間で、卒業してもそのまま一緒に行動していたらしい。


魔物の討伐中に、仲間のうちの一人が別の仲間に弓矢を誤射してしまったそうだ。


パーティーを抜けたのは、その加害者と被害者。



「でも、もう一人の子とは今も組んでいるんだよ!レベルの低い女の子2人で受けられる依頼があまりないから、最近は冒険にも出れてなかったけど」


「キンちゃんが探しているって人を見つけるのも、ギルドからの依頼とかじゃないけど、私にとってはクエストみたいなものだよ。だから全力で手伝うよ!」


「全然頼りないんだけど、わたしが一応パーティーのリーダをやっていたんだ。柄じゃないのは自分でも分かってるんだけど、わたしって声が大きいから?選ばれた的な?」


「ブレアって名前の子でね、私はブーちゃんって呼んでいるけど。彼女がしっかりしてて、すごく支えてくれたんだ。ブーちゃんは知的でクールだし。黒髪ロングのエキゾチック美人さんだよ」

 


黒髪ロング!?


私が一番興味をひかれたのはそこだった。




―――――




自分で言うのもなんだが、私の容姿はよく褒められる。


天使のようだとか、女神のようだとか。


その中でも、金色の長い髪が綺麗だと言われる。


動くと邪魔になるので、最近はリボンで留めてポニーテールにしたり、


帽子をかぶって、そこにまとめてしまったりもしている。


手入れも適当で、身だしなみには無頓着な方だ。




そんな私なのだが、実は黒髪に憧れを持っている。


ある時、養父が人形をくれた。


知り合いから貰ってきたのだという。


真っ黒くて艶やかな長い髪に、黒真珠のような瞳。


白い肌に紅をさし、白い着物を着た美しい人形だった。


あまり、おもちゃなどに興味を示さなかった私だが、それだけはとても大切にしていた。


夜中にシクシク泣き声をあげたり、知らぬ間に髪の毛が物凄く伸びているところなんかも可愛かった。


それなのに、2週間ほど経ったある日、忽然と姿を消した。


いつも置いていた場所からなくなってしまったのだ。


家にいる誰に聞いても知らないと言う。


多分、一人で故郷に帰ってしまったんだろう。


私はそう思っていた。




―――――




「この間、刀剣展に行ってきたんだ!伝説の剣のレプリカが公開されてて超胸熱だったよ。伝説の武器を模したミニチュアサイズのペーパーナイフサイズが当たるガチャガチャがあったんだけど、有り金全部投入して、全種類コンプリートしたよ。途中、ブーちゃんに『もう止めましょう!』って羽交い絞めにされたけど、それくらいではわたしを止めることはできなかったんね」


「来年、中堅クラス以下の女性限定武術大会が開かれるんだよ!もちろんわたしも参加するつもり。なんでも優勝賞品は次世代の伝説の武器だとか言われているんだよ。伝説の剣!キタコレ!!絶対勝たないといけないよね」



途中からミアの話は全然違う方向へ脱線していった。


私も途中から全然違うことを考えていた。


1時間くらい話を聞いた後、私たちはブレアに会いに行くことになった。




ブレアは酒屋でバイトしているらしい。


夜はバーを経営しているお店だそう。


昼間はお酒の配達、夜はバーで働いており、街の情報もよく知っているそうだ。


だから、何か参考になる情報も持っているかもしれない。




黒髪ロングの美人かぁ……。楽しみだなあ。

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