平成の娯楽文化に関する考察置き場

@sikisetu999

ある平成人の一日(物語形式)


1、序文

 この平成という時代の諸文化・諸現象について語る前に、まずは我々平成人の普段の生活をおさらいしておきたいと思う。平成という時代を知らない人に我々の生活を紹介するような心持ちで、平成人の一日を見てみよう。

 ここでは日本の首都東京に住むごく普通の大学生をモデルとして、平成30年のある一日の生活を覗いてみることにする。ここで平成30年を挙げるのに大きな理由はない。強いて言えば平成初期のバブル崩壊や平成20年のリーマンショック、平成23年の東日本大震災とそれに伴う福島第一原子力発電所事故などの深刻な影響がひとまず収まり、世間がひとまず落ち着きを取り戻した時代といえる。


2、睡眠時間

 11月1日朝。スマートフォンのアラームとともに起床したA氏は寝ぼけまなこで朝食を採る。A氏は前日に夜更かししてネットをしていたためか時折船を漕ぎながらもなんとか朝食を食べ終え、大学へ向かう準備をし始めた。

 NHK放送文化研究所が5年ごとに実施している国民生活時間調査(2015年最新版)によると、国民全体の平日(休日除く)の平均睡眠時間は平成7年7時間27分、平成27年7時間15分と徐々に減少する傾向にあるが大幅な減少は見られない。しかしながらOECD(経済協力開発機構)が2014年に行った国際比較調査で各国の15~64歳の男女の睡眠時間を見ると、日本は主要29ヶ国の中で韓国に次いで二番目に低いことが分かっており、世界的には日本は睡眠不足の国とされ、たびたび社会問題として取り上げられてきた。睡眠時間が短いことの一因としてはパソコン・スマートフォンなどの便利機械や24時間営業の店舗などの普及による夜型の生活の増加が挙げられる。


3、人口の変遷

 準備を終えたA氏は家を出て、最寄りの地下鉄の駅へ向かう。時間は午前7時30分、通勤ラッシュのため駅構内は人で溢れかえっていた。駅へやってくる電車はどれも満員状態だが、そこへ人をさらに押し込むため駅員が奮闘している。

 総務省による住民基本台帳に基づく人口動態調査(2018年)によると2018年の東京、埼玉、千葉、神奈川を合わせた東京圏の人口は約3544万人にもなる。日本の総人口が約1億2770万人なので、全人口の28%ほどが東京圏に集中していることになる。この一極集中は戦後、昭和の時代から続く問題であり、当時の新聞には電車のガラスが割れたとかドアが外れたといったラッシュアワーの地獄っぷりが記載されている。なお少子高齢化社会に入った日本の人口は平成23年以降減少を続けており、都市圏から離れた田舎では人口減少が深刻な問題となっているのをA氏はまだ知らない。


4、スマートフォンの普及

 とはいえA氏にとって満員電車は慣れた日常。少しげんなりながらも列に並び、電車が来るのを待ちながらスマートフォンを弄る。周囲を見ると、皆一様にしてスマートフォンを弄っている。

 昭和のポケベル、ショルダーホンから平成のガラケー(多機能携帯電話)を経て民間に普及してきた携帯電話は、平成19年にApple社が発売した「iPhone」を代表とするスマートフォン、いわゆるスマホに取って替わられ、今や携帯電話市場の8割がスマートフォンと言われている。平成30年現在使われているスマートフォンの特徴として、感覚的な操作が可能なタッチパネル式、多機能、オープンソースのOS、無数のアプリ(アプリケーション)の追加による拡張性、などが挙げられる。これにより人々はスマホ端末一つで電話、メール、電卓、時計、カメラ、メモ帳、音楽、ゲーム、そしてインターネットとそれを媒介にした様々なサービスを手軽に利用できるようになった。

 総務省の通信利用動向調査によると2016年の20代のスマートフォン個人保有率は94.2%、年代が上がるごとに保有率は下がり70代以降はほとんど利用していない。スマートフォンの爆発的な普及の一因として、パソコン利用者によるインターネット文化の成熟が挙げられると私は考えている。インターネットについては後々触れるが、スマートフォンがパソコンに近い性能とあらゆる場所で使える利便性を兼ね備えていることは覚えておいてほしい。


5、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)

 A氏はしばらくの間ソーシャルゲームを開いて同じ動作を延々と繰り返していたが、その作業が終わるとホーム画面に戻り、twitterを開き新しいツイートがないかを確認する。これはA氏がインストールしている無料アプリの一つであり、SNSと呼ばれるコミュニケーションツールである。

 SNSには多くの種類があり、その機能や役割も各サービスごとに異なる。例えばA氏の利用しているTwitterは140字以内(アルファベットなどの半角文字は280字以内)のメッセージや画像、動画、URLを呟く(ツイートする)、あるいは他の人の呟きを読んだり、返信(リプ)したり、拡散(リツイート)したりして楽しむwebサービスである。他にも友人同士でグループチャットを作るLINE、実名登録によって友人間だけでなく仕事相手との連絡にも用いられることのあるFacebook、写真や動画などビジュアルに特化したInstagramなど、様々な特徴を持ったSNSが存在する。Twitterで自身がフォローしたユーザーの何気ない呟き、社会批判や評論、美麗なイラストやファンシーな動画などが流れるタイムラインを眺めていたA氏は、電車のドアが開く音を耳にすると慌ててスマホをポケットにしまい込んだ。


5、デジタル・ディバイド(電子機器による情報格差)

 さて無事に電車に乗って大学へ到着したA氏は、教室でスマホを弄りながら授業の始まりを待つ。しばらくすると年配の教授が教室へ入ってくるが、スマホを弄る大学生達を一瞥すると不快そうに顔をしかめた。確かこの教授は初回の授業中、スマホを触っていた生徒に怒鳴り散らしていたなと思い出したA氏はスマホを鞄にしまい、授業のレジュメに手を伸ばした。

 先述した通り、スマートフォンが世間から注目を集めるようになったのは平成19年以降の話。平成に入ってからの情報通信技術の進化と普及は目覚ましく、それにより年代間で電子機器に対する認識は大きく異なってしまっている。若い世代ほどスマートフォンなどの電子機器に慣れ端末の操作を手軽に行えるが、高年齢層においては操作も不慣れ、所持すらしたがらず嫌悪を抱く人すらいる。

 こうした世代間の情報機器操作可能性の格差は先進技術への不信感や変化する社会への抵抗感から生まれている側面もあるが、結果として生活や仕事など様々な場面で使われる社会基盤の一つと化したインターネットの利用に大きな影響を及ぼしている。インターネットなどの情報通信技術を使える人と使えない人との間に生じる格差を表す言葉が「デジタル・ディバイド」である。デジタル・ディバイドの原因には年代によるもの以外にも、情報機器の高価さやそのインフラ整備の予算から生じる個人・国家間の貧富の差によるものもある。現代は情報通信技術により世界中の情報へアクセスしたり、世界に情報を発信したり、相互にコミュニケーションをとることができる時代であるため、その恩恵を受けられるか受けられないかはそのまま生活の格差を広げることにに繋がりやすく、デジタル・ディバイドの解消は一つの社会問題として受け入れられている。


6、コンビニエンスストア(コンビニ)

 昼休み、お腹を空かせたA氏は近場のコンビニでお茶と食べ物を購入し、そのままイートインコーナーで食事をとる。本日のA氏の昼食は山崎製パンのランチパックたまごにクラムチャウダーのカップスープ、ついでに野菜スティックだ。世を席巻する健康ブームに付随してネット上でコンビニ食品の危険性などが騒がれて久しいが、産地・農薬・添加物などによる危険言説に疑問を持つA氏はコンビニ食品にそれほど忌避感を持っていなかった。しかし昼食に野菜スティックを追加しているあたり健康に無関心というわけでもないらしい。食事を終えたA氏はしばらくコンビニ内でホットスナックやアイスクリームを物色したり漫画を立ち読みしたりしていたが、腕時計を見て授業の時間が迫っているのを確認すると素早くコンビニを出ていった。

 コンビニエンス(convenience)の名の通り、コンビニエンスストアは便利なお店である。現代のコンビニは、パン・おにぎり・弁当・総菜・冷凍食品・菓子・保存食などの食料品、お茶・ジュース・コーヒー・酒といったあらゆる飲料、マスク・洗剤・歯ブラシなどの生活用品、電池・充電器・イヤホンなどの電子付属機器、雑誌や漫画などの出版物に至るまで多種多様な商品と、通販の受け取りやコピー・印刷、銀行からネット予約など様々なサービスの提供を、平均50~60坪(約165~200平方メートル)という狭い敷地面積の店舗で行っている。ほとんどのコンビニはフランチャイズ形式により本部が加盟店に商標の使用権と商品・サービスの販売権、経営のノウハウなどを提供し、加盟店がその対価を支払う方法をとっており、サプライチェーン・マネジメント(SMC)を用いて受注・配送コストを抑えながら膨大な種類の商品・サービスを少量ずつ提供することを可能としている。

 コンビニエンスストアは1920年代、アメリカで氷販売をしていたサウスランド・アイス社のとある一店舗で日用雑貨や食料品などの品を揃えて営業するようになったのが起源と言われている。このお店は週7日、営業時間が朝7時から夜11時までということにちなんで、後に「セブンイレブン」と改名しチェーン店として事業化、後年日本にも広まった。

 日本フランチャイズチェーン協会(JFA)が公開している統計調査資料によるコンビニ主要7社(セイコーマート、セブンイレブン、ファミリーマート、ポプラ、ミニストップ、デイリーヤマザキ、 ローソン)の店舗数は、1983年には6308店舗であったのが平成最初の年である1989年には16466店舗と倍以上になっており、その後も順調に数を増やし2018年には55743店舗にまで達している。つまり昭和の終わりごろから平成にかけて、コンビニの数は激増したと言ってよいだろう。今や田舎であっても幹線道路沿いには必ずと言っていいほどコンビニがあるし、都市部なら徒歩20秒の場所にコンビニが三つあるなんてことも珍しくない。


7、娯楽施設

 一日の授業が終わったA氏。モラトリアムで遊び盛りな年頃のA氏はそのまま帰宅するようなことはなく、大学の門前でLINEで連絡をしておいた友人と合流する。今日はどこへ行こうか、映画は前に行ったしゲーセンとかカラオケとかかな、そういえばこの間友人の○○が……そんな話に花を咲かせながらA氏は繁華街へと足を進めていった。

 さてここでは平成の娯楽施設について書こうと思っていたのだが、はっきりいって電子機器関連(ゲームやネットなど)以外の娯楽については、実は昭和の頃から大して変化していない。もちろんCDやBDなど再生機器の発達によって映画を見るために映画館に通う人は減っただろうし、家庭用ゲーム機が普及したことでゲームセンターに通う人も少なくなっただろう。しかしそういった技術の発展による場所の変化を除けば、根本的に何を楽しんでいるかはそれほど変わっていないのだ。スマホにしろCDにしろ音楽は聴くし、カラオケで歌ったりもする。相変わらず人々は映画を見る、『ファインディング・ニモ』『アナと雪の女王』などのCGアニメ映画や『ハリー・ポッター』『スパイダーマン』『スター・ウォーズ』など、数々のアメリカ製映画が人々を熱狂させたし、スタジオジブリはもちろんそれ以外でも『君の名は』など日本のアニメ映画も人気を博している。スポーツも観戦する、イチローの大リーグでの活躍は逐次日本のお茶の間に流れてきていたし、フィギュアスケートでの浅田真央や羽生結弦、レスリングにおける吉田沙保里など多くの選手が人々をにぎわせた、ロシアワールドカップでの日本の戦いぶりも記憶に新しい。

 一方で廃れた娯楽もある。代表例がパチンコだろう。一般社団法人パチンコ・トラスティ・ボードによる平成29年10月の『パチンコ・パチスロ産業関連データ』によると2001年から2019年にかけてパチンコ店舗数は35%、遊技人口は51%も減少している。パチンコは娯楽というよりは賭け事の側面が強い施設であることから若い世代に受け入れられなかったのだろうか。もしかすると私が知らないだけで他にも廃れた娯楽も存在しているのかもしれない。しかしまあ、多くの娯楽は電子機器の発達に合わせて形を変えながらも根強く残っている、と言っていいのではないだろうか。


8、国内、国外の社会問題

 散々遊んだ後友人と別れ帰宅したA氏は、冷蔵庫から取り出した作り置きの料理を電子レンジで温めて食べる。食卓の前にあるテレビでは、海外のテロによる被害についてのニュースが放映されていた。焼け焦げた建物と共に死者数・負傷者数のテロップが流れてくるのを見たA氏は、暗い気持ちになりながらリモコンを握り電源を落とした。

 冷戦の終結とともに始まった平成という時代は、当時の人々が夢見たほど平和にはならなかった。国内だけでも数々の災害や異常気象が頻発した他、経済の停滞や少子高齢化、グローバル化やデジタル化への対応の遅れといった社会問題も多い。

 世界に目を向けると一見大きな戦争はなかったように見えるが、水面下では常に民族紛争とテロの脅威にさらされていたと言っても過言ではない。2001年9月11日、世界貿易センタービルに2機の航空機が突っ込んだ事件、9.11アメリカ同時多発テロ事件は世界を震撼させた。その後も各国で様々な形のテロが起こるようになり、世界はテロ戦争の時代へ突入したといってもよいだろう。また平成以前から不安定なだった中東の情勢には未だ解決の兆しが見えないし、『アラブの春』と呼ばれたシリアの民主化運動は結果的に内戦を引き起こし多数の難民が発生している。中東で発生した大量の難民が他国へ流れ込むことで流入先の国民感情を刺激する問題もあり、2019年ニュージーランドのクライストチャーチモスク銃乱射事件など悲惨な事件も起こっている。しかしこれらの問題の原因である中東の混乱は元を辿れば欧米ならびにユダヤ系資本が引き起こしたものであることは否定できない。

 世界情勢をよりミクロに、日本周辺に絞ってみても、歴史問題によって関係が悪化した韓国、活発な動きを見せる北朝鮮、そして経済・軍事共に大国となり更なる発展を見せる中国など、直接的な闘争はないものの緊迫した情勢を保っており、国際的に見て平成は平和な時代とは言えなかった。しかし一方でグローバル化による国を超えた人・モノの移動やインターネットを介した地理的制約を超えた情報ネットワークの構築などにより、民間のレベルでは国際交流が大いに進んだ時代であったともいえる。


9、ゲーム機

 夕食を終えたA氏はリビングのソファに座り、コントローラーを手にもってNintendo Swichを起動する。起動するゲームソフトは『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』。大乱闘スマッシュブラザーズ、略してスマブラとは『スーパーマリオ』『ゼルダの伝説』『星のカービィ』『ポケットモンスター』など任天堂が過去に発売したコンピュータゲームシリーズの代表的な人気キャラクターが一堂に会して、彼らの登場するゲームの世界観をモチーフにしたステージ上で戦う対戦アクションゲームであり、その最新作であるSPECIALは発売一週目の売り上げが500万本を超えるなど大きな評判を呼んだ。彼は他にも『ドラゴンクエスト』シリーズ、『モンスターハンター』シリーズ、『FINAL FANTASY』シリーズなど様々なコンシューマーゲームに手を出している。

 平成という時代は、ゲーム業界成長の時代でもあった。アーケードゲームやファミコンが人気を博していた昭和後期から平成に入って、任天堂は携帯ゲーム機である『ゲームボーイ』シリーズや折りたためる二つの画面と下部のタッチパネルが特徴的な『ニンテンドーDS』シリーズ、家庭用テレビゲーム機でありモーションセンサーが特徴的な『Wii』シリーズ、テレビゲームとしても携帯ゲームとしても使えるジャイロセンサーが装備された『Nintendo Switch』など。ソニーは『Playstation』~『Playstation4』に至る据え置きゲーム機と『Playstation Portable』『Playstation Vita』といった携帯ゲーム機。また海外の会社、マイクロソフトによる『Xbox』『Xbox360』『Xbox ONE』など。多くのゲームハードが改良と革新を繰り返しながらしのぎを削り、その狭間で様々なゲームソフトが発売されてきた。2019年現在、ソフトが複数のハードで同時に発売されることによりハードの壁は徐々になくなりつつあるが、日本のゲーム市場の外、海外から参入してきたゲームやPCゲームが徐々に市民権を得つつあり、この先どうなるかは正直分からない。しかし平成初期、ピコピコ音と共にドット絵がぎこちなく動いていた頃と比べると、現在のゲームはもはや仮想現実と呼べるほどのグラフィック、音楽、操作性を得たことは間違いない。


10、インターネット

 一時間のゲームの後、風呂や歯磨きなど寝る準備を整えたA氏は自分の部屋に戻り、パソコンを起動する。ログインのためのパスワードを打ちWifiへの接続を確認したA氏は、youtubeで見繕った音楽を裏で流しながら、特に目的も持たないままインターネットの海を巡回し始めた。

 平成7年に日本でWindows95のOSが発売されて以降、パーソナルコンピューター、いわゆるパソコン(PC)とインターネットは急速に普及していった。同年には「インターネット」が流行語大賞を受賞しており、当時の人々の関心が伺える。総務省の『通信利用動向調査』によるとインターネットの人口当たりの普及率は平成9年にはわずか9%だったが、その後急速に上昇し平成17年には70%に達し、その後伸びは鈍化するものの平成28年には83%を記録している。

 今やインターネットはあらゆる地域のあらゆる個人・集団によってあらゆる情報とサービスが行き交う現代の必須インフラだ。もともと軍用や学術用に限られていたインターネット利用が一般向けの商用サービスとして認められるようになり、IEやGoogleといった検索エンジンの整備と利用者の激増、そしてAmazonなどの企業の参入によって現在のインターネットは形作られた。日本におけるインターネット内での主な流行としては、1999年以降の2ちゃんねるを始めとする電子掲示板、2001年のWikipediaによる集合知利用の開始、2002年頃の個人ブログの流行、2004年以降のSNSの流行と浸透、2006年以降のYoutubeやニコニコ動画といった動画投稿サイトの出現などが挙げられる。


 インターネットは我々の生活を変えた、そこに疑問を挟む余地はない。インターネットという空間で様々な文化が生まれ、混じり合い、現実をも巻き込んで歴史上類を見ない生活様式と文化を生み出している。それは間違いないのだが、その全貌を把握するにはインターネットの世界は巨大化しすぎた。国家間の紛争や経済については、有識者がうまく調べて説明してくれるだろう。現実の文化や生活様式についても、学者に任せればそれでいいかもしれない。しかし、インターネット上の文化はどうだ? もちろん個々のサイトやジャンルの傾向を考えることは学者にもできるだろう。しかし文化というものはそう単純ではない。例えば既に閉鎖された10年以上前の2ちゃんねるのスラングが今もネット上で使われているように、最新のSNSのトレンドのネタが本来無関係なイラストや動画内において使用されるように、文化とは紡がれるものであり、またその複雑性は不規則極まりない、ほんの少しの気まぐれで容易に変わりうるものだ。また文化は変化する。特に担い手が多く、生まれたてで固定化しておらず、活気に満ち溢れているほど文化の流動は激しい。

 インターネットの文化史を綴ることは、インターネット上に情報が残り続ける限りは不可能な試みではない。しかし、手探りで進められるほど甘い作業でもない。それには指針が必要だろう。インターネット上の諸現象に対する私の考察が、いつか誰かの指針となればと思い、筆をとりたいと思う。




この章の参考文献

・竹村民郎(2010)『大正文化 帝国のユートピア -- 世界史の転換期と大衆消費社会の形成』三元社

・博報堂生活総合研究所(2019)『生活者の平成30年史 -- データで読む価値観の変化』日本経済新聞出版社

・吉野太喜(2019)『平成の通信簿 -- 106のデータでみる30年』理想社

・総務省『通信利用動向調査』

・総務省統計局『社会生活基本調査』

・総務省統計局『社会生活基本調査』

・日本フランチャイズチェーン協会(JFA)『コンビニエンスストア統計時系列データ』

・インターネットの歴史(概要)(http://www.kogures.com/hitoshi/history/internet/index.html)

・日本遊技関連事業協会(http://www.nichiyukyo.or.jp/condition/index.php)

・HighCharts FreQuent(http://frequ2156.blog.fc2.com/blog-entry-148.html)

・パチンコ・トラスティ・ボード『PTB パチンコ・パチスロ産業関連データ』(http://www.ptb.or.jp/s_pachinko_slot_industry_data.htm)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る