誰かの記憶


もはや何も思い出せない。

私は誰なのだろう。

さっきまで覚えていたはずなのに、記憶を手繰ろうとするほど、靄がかかって消えていく。

私の名前は何だった?

私の家族は誰だった?

私の家は、年齢は、私の人生は、どんなものだったのだろう。

頭のなかは真っ白だ。もはや何も思い出せない。

もはや、何もーー

ーーーいや、ひとつだけ。

ひとつだけ………そうだ、私は。


私は、みんなを守れるひとになりたかった。

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