折りたたみ傘と僕
「折りたたみ傘って便利だよね」
ぽつり
昇降口の前で
降り出した雨と一緒に隣の声が言った
「折りたためるし」
「そりゃね」
「持ち運ぶのも楽」
「折りたためるからね」
「考えだした人にお礼言いたい」
「言ったらいいよ」
ぽつり
「でも言えない」
「なんで」
「おかげで傘の存在を忘れやすい」
「ということは」
「傘、電車に忘れてきたから一緒に入れて」
ぽつり
「」
「なに?」
隣の声がくるりとこちらに向いた
「2回も言わないよ」
そう言って大きな傘を開く
もう一度なんて言えるはずがない
誰かが折りたたみ傘を考え出してくれたおかげで
君と相合傘ができるだなんて
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