第4話 俺は別に、貧乳でも良いんだけどさ

 さて、すべてのキューブを揃える前に……分からない人も多いと思うので、その種類についてもう一度お浚いしようと思う。キューブには知って通り、金や銀と言ったスーパーレア、有色透明のレア、有色不透明のノーマルがあり、それぞれ赤、青、黄、緑、紫、茶、黒、白(白はノーマル限定)をベースにして、レアには44色、ノーマルには49色のキューブが存在するが、残り12色(というか種類)については、ダブルカラーが使われている。

 「赤×青」、「青×黒」と言う風に、色が対面事に2色ずつ塗られているのだ。レアとノーマルの色は、白とダブルカラー、黒系の「漆黒、鈍、鉛」を除いて、すべてが同じ色になっている(つまり、有色透明の赤と、有色不透明の赤があると言うわけだ)。

 それらの色は、っと! まずは、その色を言わないとね。


 赤は「赤」、「真紅」、「臙脂えんじ」、「桃」、「橙」、「赤銅しゃくどう」、「朱」の7色。

 青は「青」、「水」、「紺」、「藍」、「群青」、「天」、「瑠璃」の7色。

 黄は「黄」、「山吹」、「琥珀」、「浅黄あさぎ」、「淡黄たんこう」、「小麦」、「飴」の7色。

 緑は「緑」、「若葉」、「黄緑」、「萌黄もえぎ」、「翡翠ひすい」、「深緑」、「緑青ろくしょう」の7色。

 紫は「紫」、「藤」、「青紫」、「赤紫」、「薄紫」、「小紫」、「紫檀したん」の7色。

 茶は「茶」、「亜麻」、「胡桃」、「褐色」、「駱駝らくだ」、「黄土」、「檜皮ひわだ」、の7色。

 黒は「黒」、「漆黒」、「にび」、「灰」、「鉛」の5色。

 白は「白」、「純白」の2色。

 ノーマル限定のダブルカラーは

「赤×青」、「黄×緑」、「紫×茶」、「黒×白」、「青×黄」、「緑×紫」、「茶×黒」、「赤×白」、「赤×緑」、「青×白」、「緑×茶」、「紫×黒」の12(黄色を含んだパターンが一つ少ない)パターンだ。

 

 現在、俺が持っているのは、金、銀、銅、赤(レア)の4色。それらは、その色に合った性格(俺の主観で)をしているが……。残りの奴らは、どんな性格になるのか分からない。たぶん、その系統に合った性格になると思うけど。

 

 俺は学校の部活を終えた後、彼女達(学校の敷地から出た後に擬人化して貰った)と別れて(彼女達は事前に調べた情報に従って、別の店にキューブを買いに行った)、町のホビーショップに行った。

 ホビーショップの中は……混んではいないものの、それなりに人が入っていた。まるでキューブの袋に導かれるように。俺の前を歩いていた男も、楽しげな顔でキューブの売り場に行き、その袋を嬉しそうに持ちはじめた。

 

 俺はそれに続いて、キューブマニアの袋を持った。


「よし」と、気合いを入れる。「買うか」


 俺は会計所の列に並び、自分の番が来ると、財布の中から金を取り出して、オモチャの代金を払った。


 店員は「有り難う御座いました」と言い、俺にお釣りとレシートを渡した。


 俺は財布の中にそれを入れると、急いで自分の家に帰った。家の中では、ラミア達(どうやら、俺よりも先に帰っていたようだ)が俺の帰りを待っていた。


「お帰り」の声に微笑む。


 俺は机の椅子に座り、鞄の中からキューブマニアの袋を取り出した。


 ラミアは、周りのモノリス達に目配せした。「たぶん、元の姿に戻れ」と。俺の部屋に入れるのは、自分も含めて五人が限界だった。


 モノフル達はその支持に従い、キューブの姿に戻すと、揃って机の上に移動し、そこにゆっくりと着地した。


 俺は、自分の買ってきたキューブの袋を開けた。

 袋の中に入っていたのは「黒」、その色が有色透明になっているレアだった。

 

 俺は自分の掌に「それ」を乗せると、真面目な顔で「それ」が擬人化するのを待った。

 

 それは、すぐに擬人化した。最初は掌の上から浮かんで、その動きに飽きると(変な表現だが)、部屋の中を飛びまわり、その真ん中辺りでボディを強く光らせた。

 

 俺はその光に目を瞑ったが、それも数秒程で終わってしまった。


 光のあった方に目をやる。


 視線の先には一人、黒髪(前髪パッツンのセミロング)の少女が立っていた。年齢の方はそう、俺やラミア達と同じくらい。服装はやはり、アニメのコスプレを思わせるアレだった。近未来チックだが、現実にいてもおかしくない感じの。

 身長は、ラミアと大体同じくらいだ。体型の方は、ガリガリではないけれど、かなり痩せている。特に胸は、ゴホン。俺は別に、貧乳でも良いんだけどさ。歳の割には、かなり小さかった。

 

 俺は笑顔で、彼女に話し掛けた。


「や、やぁ」


 彼女は、俺の声に応えなかった。視線こそ、俺に向けていたけれど。その静かに閉じられた口は、「初めまして」……ええぇえ! このタイミングで話すのかよ?


 彼女は感情のない顔で、俺の顔を見つめた。


「私は、フォルト……。あなたが?」


「お、おう、時任智。ラミアの言葉を借りりゃ、選ばれた人間だ」


 フォルトは(やっぱり感情の無い顔で)、ラミアの顔に視線を移した。


「あなたもモノフル?」


「そう、あなたと同じ。……フォルト」


「なに?」


 ラミアは、彼女の目を見つめた。


「大事な話がある」


「大事な話?」と驚くフォルトだったが……たぶん、何かを察したのだろう。その理由も聞かぬまま、ただ一言「分かった」とうなずいた。

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