第390話 変態の力
浅田が芸能関係者へと電話を始めてくれて1時間ほど経過した午前8時――。
俺のお部屋に1人の来訪者が現れた。
それは約半年以上ぶりの再会だ。
スーツ姿でスレンダーなスタイルに黒のショートカットの美人。
「まさか、あんたに『頼みがある』なんて言われる日が来るなんてね……人生何があるかわからないわ」
「俺もそう思うよ……」
彼女は――明菜のストーカーであった秋村だ。
仇敵に会ったような不機嫌そうな表情だ。
(まあ、俺に呼び出されたら当然か……というか、よく来たな。正直9割以上の確率で来ないと思ってた。だって、あんだけ派手にぶつかったわけだし)
「あらあら、まあまま、ふふふっ、てんちょうには美人のお知り合いがたくさんいるのねェ~。あの記事、実は本当なのかなぁ~」
そんな俺と秋村のなんとも言えない、微妙な空気の中で浅田が失礼なことを言い始めた。
おい、なんてこと言うんだ。
「川島義孝、誰よこの子供は……ん? あんたどこかで見た気が……ああああああ! あ、浅田冬!?」
秋村は不機嫌さを隠そうともせずに、浅田を見ていたが……やがて、浅田の正体に気が付いたのか、驚きの声を上げる。
「ええ、この家の実花ちゃんと未来ちゃんの親友なんだよぉ~同級生ぃ~」
「実花? 未来? えっ? えっ? な、何で、現役のトップアイドルがここに……」
「それは……」
俺がこの面倒な状況をどう説明したものかと考えていると……。
秋村は軽くため息をついて、首を左右に振り、俺に手のひらを差し出して『待て』とジェスチャーしてくる。
「そうか……芸能関係者からあんたの記事の件を探ろうとしているのね。事情はよくわからないけど……そうか、なるほど……だから、私が呼ばれた」
「えっと……秋村?」
「ふふふふっ、変わった方みたいですねぇ~~」
秋村はぶつぶつと何かを呟き始めた。その顔は真剣で、こちらの声は聞こえていないみたいだ。
「てんちょう、この方とはどういう関係なんですかぁ~」
浅田がしたから覗き込むように俺に顔を近づけて、そんなことを聞いてきた。
『お前、マジで愛人連れて来たんじゃねぇだろうな? ああん? この性欲の権化が』と、目で語ってきている。
いや、そんな怒られる関係じゃないんだけど…ていや、会ってるって知られたら未来に殺されるかもしれないけど……。
「てんちょう、まずは如月の望ちゃんに連絡した方がよかったんじゃないですかぁ?」
「えっ? お前、如月のこと知ってるのか?」
「もうぅぅ、さっき言ったでしょ~」
可愛くウインクしてくる浅田。
ああ、4大名家の分家って話か……如月と北条のこともある程度は知ってるのか。
「もちろん……あいつや爺さんに泣きつくことも考えたけどな……でも、たぶん、俺が泣きつくまでもなく、あの人たちは動いてくれてると思う」
如月と爺さん、俺のこと大好きだし……まったく、俺はそんなできた人間じゃないんだけどな。
「だから、俺は俺しか知らない人脈を頼ることにした」
「それがこの方ですかぁ~?」
「こいつは……変態だ」
「えっ……?」
「言うなれば、変態のプロフェッショナルでプロのストーカーだ。俺やお前、恐らく如月も爺さんも持ってない情報網を持っている」
秋村に頼るのが正解かわからない……そもそも協力してくれるかどうかも謎だしな……はぁ、秋村に頼るとか、俺も危ない橋渡ってるよな。
と……不安になっていると、秋村は相変わらず不機嫌そうにこちらを見る
「川島義孝、私に詳しく事情を話なさい……おそらく……力になれる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます