ミーナと創造神
219
「ここの魔力を使って、何をする気なんですか?」
私は白い世界でシュウさんに問いかけていた。
あれだけ酷いことをして、敗者である私が口出しできるとは思ってはいないけれど、この国の未来だけは教えてほしかった。
私の問いに、シュウさんは見覚えのある手のひらサイズの――確か、タルサさんがスマホと言っていた板を取り出しながら答えてくれる。
「俺は昔、その……転生する前に、神様って嫌な奴だなって思ってました」
「嫌な奴、ですか?」
私が聞き返すと、シュウさんはうなずく。
「だって、神様って、全知全能で、すごく良い人なんでしょう? だったら、どうしてこの世界には不幸なことや、目を背けたくなるような酷いことが多いんだろうなぁって、漠然と考えていたんですよね」
その言葉は、私にも身に覚えがある。
そんな神がいないからこそ、悠久の魔女様はこの国を創ったのだ。
シュウさんはスマホを弄りながら、改めて口を開く。
「実は、俺がこの世界を創った張本人なんです」
「……え?」
それはとても、私には信じられない言葉だった。
神話でもあるまいし、人間が一人で世界を創造できるハズなんてないと思う。
でも、そんなシュウさんは、まるで冗談を口にしているような表情ではなかった。
「現実が酷いのなんて、俺も知っているつもりです。でも、だからこそ、俺の創った世界ぐらい、みんなが幸せにいてほしい。そのために――ここにある魔力を、俺に預けてください」
……。
追い詰められた私は、シュウさんを殺そうとまでした。
そんな私という存在は、シュウさんにとって、殺して魔力を奪っても構わないぐらいの価値しかないだろう。
それなのに、シュウさんはどこまでも、お人好しだった。
「わかりました」
私は素直に口を開いていた。
そもそも、私にはシュウさんの言葉を拒否する方法など残っていない。
「ここの魔力を使って、この世界が少しでも幸せになるなら――私はそれで充分です。悠久の魔女様のための魔力ですが、シュウさんに託します」
私の言葉を受け、シュウさんはスマホを操作し始める。
「ミーナさんは、勘違いしているかも知れないですね?」
「私が……勘違い、ですか?」
私が聞き返すと、シュウさんは苦笑した。
「俺が幸せにしたい人には、ミーナさんも含まれているんですよ?」
……。
タルサさんの気持ちが、ようやく、分かった気がした。
少しだけ、かっこいいと思う。
「こんな感じでどうでしょうか?」
シュウさんは、私にスマホの画面を向けた。
そこに表示されているのは、とても短い文章だ。
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