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「メリッサが規格外なのは知ってたが、シュウもヤベェ奴だったのか」
ゴーレムの残骸を前に、ロウがじろりと俺たちを見ている。
「これからもっと強い敵と戦うんだ。これぐらいできなきゃ話にならないだろ?」
「そりゃそうかも知れねぇがなぁ?」
メリッサさんの挑戦的な視線を受け、ロウが苦笑いを漏らしていた。
そんなロウに、メリッサはさんは宣言する。
「私も儀式を止めるために悠久の魔女様のお屋敷を目指す。ロウも手伝ってくれるんだよな?」
「……そのつもりだったが、俺には俺のやるべきことがある」
気持ちの良いメリッサさんの言葉に反して、ロウはかぶりをふった。
ロウの視線の先には、負傷したリザードマンたちがいた。
監獄の周りには俺が倒したゴーレム以外の土塊も三体分ほど生まれていた。俺は自分のことで必死だったから気づかなかったけれど、他のゴーレムとリザードマンたちの戦闘も行われていたらしい。あれほど巨大なゴーレムが現れたのだから、怪我人が出るのも無理はない。
「俺は医者だ。負傷者は俺が預かる」
ロウの力強い言葉に、メリッサさんは笑った。
「なら、代わりに腕に自信のあるリザードマンと馬を貸してくれ。用意できるか?」
「あれだけ見せられて拒否する奴なんかいねぇよ。……俺の仲間を頼む」
ロウが早速準備に向かい、
「私も残って、私のやるべきことをやるわ」
次に声をかけてきたのはアリシアだった。
俺たちは悠久の魔女のお屋敷へと向かうことになるし、ここからは戦闘がメインになるハズだ。考えてみれば、修道女であるアリシアが着いてきても、力にはなれないだろう。
「私も教会に戻って、できるだけ皆を説得してみる」
アリシアの瞳も力強い。
しかし、それが難しいということは、アリシア自身が先ほど言っていた。
なぜなら、教会にいる者たちは悠久の魔女の敬虔な信者たちだ。そんな信者たちに真実を話したとしても、悠久の魔女のために死のうと考える者も出てくるだろう。
もしかしたら、その行為は敵を増やすだけかも知れない。
「……無茶するなよ?」
「大丈夫よ」
にこりと笑うアリシアは体格も小柄だ。もしも、真実を話した信者たちが暴れたら、アリシアが危険なのは間違いない。本当に、大丈夫だろうか?
「そうだ、アリシアに頼みがあるんだけど聞いてもらえるか?」
「……何よ?」
眉を寄せるアリシアは、俺の話を聞いても怪訝そうなままだった。
「別にいいけど、こんなモノなんに使うのよ?」
俺は躊躇いながらも答える。
「タルサを説得するためには、これがいる気がしてさ」
アリシアは察してくれたのか、呆れたようにため息をついた。
「アンタこそ、タルサとミーナを説得して、無事に帰って来なさいよ?」
自分も危険なのに、アリシアはそんな様子はまるで見せない。
「ありがとな」
アリシアはふんと鼻を鳴らし、俺が頼んだソレを渡してくれた。
「信じて、待ってるからね」
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