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俺たちは馬を飛ばしていた。
俺はメリッサさんの背中に抱き着いて一緒の馬に乗っており、その後ろを馬に跨るリザードマンたちが続く形だ。
「怪我したくなきゃ、さっさとどきやがれっ!」
俺たちの意気込みとは裏腹に、街は平和そのものだった。
大声を上げるメリッサさんに通行人たちが度肝を抜いており、クモの子を散らすように道を譲っていく。先頭を行くメリッサさんはまるで減速する気がなく、そんな俺たちの姿は暴走族のようにしか見えないだろう。
そんな俺たちが街を抜けるまでは、敵らしい敵に襲われることは無かった。
ミーナさんもタルサも、街中で暴れて無駄な怪我人を出したいとは思っていないのだと思う。
俺たちはそのままお屋敷へと続く山道へと入った。
石畳でできた山道は広々としているが一本道で――俺たちを足止めするなら、これ以上の場所は無いだろう。
「こっからが本番だ! 気を引き締めな!」
「おう!」
「やってやるぜ!」
メリッサさんの声に、続くリザードマンたちが雄叫びを上げる。
そんな道の先に、俺たちを塞ぐようにして並ぶ複数の人影が見えた。
「こっからは通さねぇぞ!」
大声でそう宣言しているのは弓を持つドワーフさんで、その背後には青い肌のサイクロプスさんが巨大な斧を構えている。他にも神ランキング協会で見た覚えのある、様々な異種族ののんべぇたちの姿があり、明らかに俺たちへ敵意を向けていた。
そこにいるのは、ヘッドさんが集めた人たちだろう。
そう思いながらも、ヘッドさんがいないことに気がかかる。
「雑魚は俺たちに任せろ!」
「雑魚とは言ってくれるじゃねぇか!」
馬に乗るリザードマンたちが器用に弓を構え、そのまま正面に放った。
たまらずのんべぇたちの人垣に穴が開き、そこに向かってメリッサさんは馬を進める。
そんな俺たちが横切る瞬間にサイクロプスさんの斧が振り下ろされるが、それも別のリザードマンが投擲した剣に弾かれていた。
その隙を見過ごさず、メリッサさんは器用に馬を操って駆け抜ける。
「お前ら! 無理すんじゃねぇぞっ!」
メリッサさんの言葉を残し、残ったリザードマンたちとのんべぇたちの戦いが始まる。
背後で剣と剣が交わり、怒号が飛び交う。
遠ざかる金属音を耳にしながら、彼らが戦士なのだと今更のように思った。
メリッサさんが言っていた通りに、俺の初戦の相手が生きている相手じゃなくて良かったと思う。当たり前だけれど、剣とは武器であり人を傷つけ、命を奪う道具だ。
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