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メリッサさんはニカッと清々しく笑うと、何故か大剣を背負い直した。
「ゴーレムは魔術生命体だ。術者の魔力によって生きている土人形で、その体には必ず核になる水晶が埋め込まれてる。魔力切れでも倒せるが、直接水晶を潰すのが手っ取り早いぜ? ま、そろそろ実戦を経験させたいと思ってたんだ。最初の実戦が生物じゃなくて良かったな?」
「……もしかして、メリッサさん?」
メリッサさんが暗に伝えてくるその言葉に焦る。
「さっさと倒してきな!」
「そ、そんなの――」
無理と続く言葉を、メリッサさんが否定する。
「シュウならできる。こいつぐらい倒せなきゃ、タルサと勝負になんねぇぞ?」
躊躇しながらも、確かに、そうかも知れないと思う。
そして、俺の戸惑いを聞く気が無いのはゴーレムも同じだった。
ゴーレムはまたしても素早く腕を伸ばしてくるが、その動きは単調だった。
速いが、直線的な動き。
それは一回目とまるで同じく、俺を掴むことしか考えていない動きでしかない。
俺が後ろに飛んでそれを避けると、ゴーレムは勢い余って体勢を崩している。
巨体な分だけ、隙は大きい――らしい。
「チャンスだ! いけぇ!!」
メリッサさんに背中を押され、俺はゴーレムの懐に躍り出ていた。
ゴーレムが姿勢を崩したまま、今度は左腕を伸ばしてくるが、
「や、やるしかねぇのか!?」
俺はそのままゴーレムの股下に逃げ込んだ。
なんとか反撃しなければと思いながら腰の魔剣を抜くが、ゴーレムはつま先まで岩でできていて、下手に斬れば刃が負けてしまうように思えた。
どうする?
しかし、悩んでいる暇はない。
先ほどメリッサさんが言っていた、俺が狙うべき場所は――
「ここか!」
俺が狙ったのは、ゴーレムの足首の裏だ。
人であればアキレス腱にあたる場所へ、剣を振る。
そして、俺のその一振りには、一か月の稽古の成果が如実に現れていた。
踏み込みによって自身の体重と重力を利用した、俺の渾身の一振り。
それはなんと――ゴーレムの足首を、気持ちよく切り裂いていた。
足の断面から泥が溢れ出し、ゴーレムはその泥に足を取られ、バランスを崩した。轟音と共に仰向けに倒れ、その巨体で建屋のひとつがぺしゃんこになり、ゴーレムはもがき続けている。
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