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掃除と一言で言っても、お屋敷は物凄く広い。
広すぎるお屋敷は一日で掃除できる場所にも限りがあるし、俺は毎日場所を変えて掃除を続けている。今日は先ほど風呂掃除を終えたところだ。
「ところで、タルサはいるかしら?」
「今日は書斎にいると思うけど、何の用事だ?」
タルサはあれから、悠久の魔女の書斎にこもっていることが多い。
書斎と言っても広々としているあの部屋には、様々な権利書やら国籍登録書や、他国との協定などの重要な書類だらけだ。悠久の魔女はそれを活用しなかったようだが、タルサやミーナさんの仕事量を考えるに、役所のような施設も必要だろうと思う。
「魔力の供給方法も確立できたし、教会としては余裕が出てきたから――私は、ずっと取り止めていた奴隷の買い付けや移民の受け入れを再開したいのよね」
「やっとそこまで漕ぎつけたのか」
「まぁね」
アリシアは控えめに笑みを浮かべる。
「暇ならアンタも援護してよ!」
アリシアの政策は、また次の段階に進もうとしているらしい。
タルサがこの国を〝奴隷国家〟だと言っていたのは記憶に新しい。
エターナルは、他国から奴隷を買い取り、その奴隷を信者にすることで魔力を貯め、その魔力によってさらに奴隷を買い取るということを続けることで、徐々に国を大きくしていた。
アリシアも自らが奴隷上がりだと言っていたし、余裕があるのなら、さらに多くの奴隷をエターナルに迎え入れたいと考えているのだろう。
そして、俺はその活動を応援したいと思っていて、その考え方の一致こそが、俺たちの仲良くなれた理由でもあったりする。
俺は掃除道具を片付け、アリシアと二階の書斎へと向かった。
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