タルサとヘッドの切り札

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「あのじゃじゃ馬を丸め込むとは見事なモンだな?」


 ロウが煙草に火を点け、煙を吐き出している。


「ロウ殿とて他人事ではないぞ?」


 タルサの瞳はロウを見つめていて、次のターゲットを品定めしているようにも見える。


 しかし、その視線は、不意にヘッドへと移った。


「ここから軍事関係へと話を進めるつもりじゃったが、その前にヘッド殿に聞くことがある」


「……三人目のことだよな?」


 ヘッドが答え、タルサがうなずく。


 ヘッドは頭をかき、改めて口を開いた。


「……俺が最後の一人を見つけられずに帰ってきたのは、タルサさんの情報を頼るためだ」


「だらしない情報屋じゃな?」


 タルサが目を細めると、ヘッドは笑った。


「何も掴んでないわけじゃないんだが――まぁいい、順を追って話すが、俺が最後の一人として考えていたのは、悠久の魔女様の右腕とも呼ばれていた、エルフの魔法使いネルだ」


「彼女……ですか」


 その名が出た時、ミーナさんが眉を寄せた。


 タルサもすでに何かを知っているのだろう、口元がまた弧を描いている。


 ヘッドはそんなタルサの様子に感づきながらも、改めて口を開く。


「魔法使いネルは、エターナル内での神ランキング上位者だ。ネルは単独で仕事をするエルフで、Aランクの中でも――その仕事のほとんどは国がらみの――つまりは、悠久の魔女様の仕事だと聞いている。元々が同じ神として付き合いのある奴で、これを機に仲間に引き込もうと思ったんだが、一週間前からの足取りが掴めなくなった。あれだけ派手に動き回ってたネルが、急に活動を辞めたのが引っかかってな?」


「それで、ヘッド殿は何が言いたい?」


 タルサの促す言葉に、ヘッドは仏頂面になった。


 タルサはやはり、聞かなくても分かることをわざわざ言わせようとしているのだろう。


「俺も無駄足はごめんだし、効率重視で回答を聞きに戻ってきたんだが――ネルの正体は、悠久の魔女様そのものだったんじゃねぇか?」


 タルサは不敵に笑い、ミーナさんへと視線を向けた。


 ミーナさんはその意をくみ取り、遠慮がちに口を開く。


「ヘッドさんの考えは正しいです。悠久の魔女様は、他人と触れあう必要がある場合や、汚れ仕事を行う場合に限り、魔法使いネルとして様々な問題を解決されておりました」

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