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私は先ほど、シュウさんと風呂場で出くわしている。
この板がシュウさんにとって大切なモノだとしたら、私が疑われるのは間違いない。実際、私が持っていこうとしているのだし。
「しらばっくれれば良かろう」
「……」
「悩んでいる間に誰か来ても知らんぞ?」
「……」
私は仕方なく、その薄い板を手に廊下へと出た。
外気を肌で感じ、自分が今はタオル一枚しか身にまとっていないことを思い知る。悠久の魔女様がお出かけしていて、
ここから無事に逃げ帰れたら、美味しいデザートを作ろうと思う。嘘で口にした言葉とはいえ、小心者である私は、できるだけ嘘を圧縮しておきたかった。
だから、それまで、誰とも会いませんように。
そう祈りながら廊下を進み、角を曲がったところで、
「良い湯じゃったか?」
心臓が、飛び出るかと思った。
私が振り返ると、そこには不敵に笑うタルサさんの姿があった。
……いつからいたのだろう?
背後にいるということは、どこからか私をつけていて、この不自然極まりない恰好を見られ続けたということである。
「ミーナ殿が何をしておったのか、
タルサさんは値踏みするように私の身体を見つめる。
「こ、これは――そ、その、違うんです!」
「それがミーナ殿の
声を立ててタルサさんは笑っているが、その真意はいまいちわからない。
困り顔の私に、タルサさんは「気にするでない」と言葉を続ける。
「ミーナ殿に悪気が無いのも知っておる。そして、妾はその主犯であるカルヴァン殿と直接話したいのじゃが、顔を出してくださらんか?」
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