100
「つまり、奴はお主様に手出しできない。しかも、奴はお主様がまだ願いを書き込む〝
タルサが俺に、
何かを
「どうしたんだ?」
「いや、お主様に……これだけは、しっかりと伝えねばと思うてな」
タルサはこほんと
「妾を助けてくれて、ありがとう」
タルサの顔はいつもの不敵な笑みではなくて――まるで恋する乙女にも見えるような、はにかむような、見ているこちらが恥ずかしくなるような笑顔だった。
「……こっちこそ、よろしくなっ!」
その顔に
俺はタルサの手を握り返し、ようやく始まったのだと思う。
「ところでお主様よ? ひとつ聞きたいことがあるのじゃが?」
「……なんだよ?」
タルサの問いに、嫌な予感がした。
タルサめ、今度は何を考えているんだ?
俺の
「お主様は、いつまで同じ服を着ておるのじゃ?」
……。
気づいた瞬間、
「なんてことを気づかせるんだよ!?」
俺は慣れない異世界で過ごすのが精一杯で、そこまで考える余裕がなかったらしい。考えてみれば、俺は別の服なんて持ってないし、風呂だって入ってなかった。
「くっくっく」
俺の抗議をタルサは笑い飛ばして、
「またこの異世界が不便になってしもうたのぅ? 残念無念じゃが、仕方ないから服を買って温泉でも行くしかあるまい」
……こいつ!
「今日は妾と、買い物デートするのじゃっ!」
それが目的か!
ニヤリと笑うタルサが、いつもの二割増しで可愛く見えた。
その顔を見ながら思う。
俺はまだまだ、ランキング上位の神には程遠い。
やることは山積みで、苦労する未来しか見えない。
でも、タルサの為にも――異世界で俺は神になる!
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます