エピローグ

97


 次の日の朝、俺とタルサは神ランキング協会に来ていた。


 今日も集会所は飲んだくれる人たちであふれている。


 タルサを連れて歩いている俺を見て、さきほど狼男さんが親指を立ててきた。


 俺はそれに親指を立て返す。


 こういう交流を楽しめるのなら、異世界への適性があるかもしれない。


 タルサと受付のカウンターへ向かうと、昨日と同じくコメットさんが座っていた。


「おはようございます!」


 俺が声をかけると、コメットさんは笑顔を作った。


「シュウさん! 来てくださったんですね!」


 コメットさんはわざわざ受付から出てきて口を開く。


「昨日の件で上層部から返答がありましたよ! シュウさんの力に、悠久の魔女様が大変興味をお持ちになったとのことです。詳細は直接お話ししたいとのことですので、悠久の魔女様のお屋敷に向かってほしいのですが、ご都合つごうの良い日はありますか?」


「悠久の魔女には、こちらからも用事があるのじゃ」


 コメットさんの言葉に、タルサが答えている。


「悠久の魔女には明日にでも向かうと伝えて下され」


「わかりました。では、その予定でお願いしますね!」


 頭を下げるコメットさんに、タルサは改めて口を開く。


「実はコメット殿に、折り入って頼みがある」


 それを聞いて、コメットさんはタルサに小首を傾げる。


「……どのようなご用件でしょうか?」


 タルサはふところに手を伸ばし、自分の登録カードを差し出した。


わらわの登録情報を破棄はきしてほしいのじゃ」


「え!? せっかくのSSランクを取り消すんですか!?」


 驚くコメットさんに、タルサはうなずく。


「よろしく頼む」


 その目に迷いがないのを見て、コメットさんは渋々しぶしぶといった感じでカードを受け取った。


「SSランクなんて、なりたくても中々なれないんですよ? 気が変わったら、また登録してくださいね?」


「……気が変わったら、のぅ?」


 タルサはニヤリと笑った。


「コメット殿の気持ちも分からぬではないが、そう残念がるな。ちなみに妾は知っておるぞ? 有能な神が登録する場合、担当者に特別手当てが支給されるんじゃろ?」


 タルサの言葉に、コメットさんは「あはははは」と棒読みで笑う。


「知っておられたんですね? ……すみません」


 丁寧に謝ってくれるコメットさんの姿に申し訳なく思う。


 それぐらいの報酬ほうしゅうはコメットさんにあげたいが、タルサが表で活動し続けるわけにはいかないから、こればかりは仕方がなかった。

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