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 今更いまさらになって、タルサの真意が分かった。


 いつでも笑顔を絶やさず、優しく俺に全てを教えてくれて、時には体を受け入れようとまでしてくれた。


 しかも、タルサの想いはそれにとどまらない。


 タルサは今、命すら投げうって俺を守ろうとしてくれている。


 タルサが、どうしてそこまでしてくれるのか? 


 その答えは、最初から目の前にあった。


 タルサは〝死にたい〟と思っている俺に対して〝生きたい〟と思わせたかったんだ。


 なんてことだろう。

 

 俺のことをこんなにも考えてくれた人の前なのに、俺はくやしいぐらいに無力だ。


 俺には、タルサを助けることはできない。


「最後に、お主様に呪いをかけてやろう」


 タルサの声に顔を上げると、視界がぐにゃりと歪んでいた。


 いつの間にか、目に涙がまっていた、らしい。


わらわの死を、絶対に無駄にするではない。必ず生き返り、現世で人生を取り戻すのじゃ」


 タルサも涙目になっていた。


「……そんなこと言われたら、死んでも死にきれねぇじゃねぇか!」


 俺の言葉に、タルサは大きく笑った。


「妾は死んでも、お主様が生き返られれば、それで幸せじゃ」


 無意識にこもった力に、指がしびれている。


「……何を、自分だけ幸せになってやがるんだよ?」


「お主様?」


「それがタルサの幸せなのかもしれない。でもな、俺の幸せはどうなるんだよ? 俺はタルサを現世で助けたことだって、後悔なんてしてない。それに、俺なんかが生き返っても、引きこもりのニートになるのがせきやまかもしれないんだぞ?」


 俺に、どうして、そこまでするんだよ。


「俺は、そんな俺なんかのために、タルサがここまでしてくれたのに、お返しができない。今だって、俺が馬鹿じゃなければ、タルサを俺の〝願い〟で助けられたかも知れないのに。俺がやりたいことは、生き返ることなんかじゃないんだ」


「……落ち着け、お主様」


「魔力がいくらあったって、俺は無能力者だ。俺には〝願い〟を叶えるパソコンがもうないんだ。百歩譲ひゃっぽゆずっても、俺には生き返るなんて無理だろ?」


「頭を使うのじゃ。例えば〝満たす〟という願いを持つものが転生してこれば、お主様のパソコンの充電を〝満たす〟ことで新たな願いを書き込むことも可能じゃろう。現状ではそんな転生者はおらぬが、生きてさえいれば、チャンスは必ずある」


「……死にく奴がいうセリフかよ?」


 ニヤリと笑うタルサが憎らしい。


 こんな時にも笑い続けられるタルサに感服かんぷくした。

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