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 ニヤリと笑うタルサを見て、久しぶりに命の恩人のことが思い浮かぶ。


 つまり、私は彼のお陰で魔法使いになれたということか。


「それじゃ、タルサにもそういう経験があるの?」


「いや、わらわはお主様達、現代の魔法使いとは違い、由緒ゆいしょ正しき魔導士の家系なのじゃ。妾の一族は先代の魂を――」


「こちら、モンブランと紅茶のセットになります」


 店員さんが私たちのテーブルにモンブランを置き、紅茶を注いでくれる。


 紅茶の匂いというのは、どうしてこれほど心をきつけるのだろう。


「くっくっく」


 私を見て、タルサが楽しそうに笑っていた。


「お主様は本当に分かりやすいのぅ?」


「……だって美味しそうなんだもん」


 どうしてもモンブランに目移りしてしまう私を見て、タルサはうなずく。


「じゃが、お主様の言葉にも一理ある。コイツをやっつけることの方が先決じゃ!」


 何気なく話したそれが、タルサにとって大切なことだなんて私は知らなかったし、タルサもそれを伝える気は無くなったらしい。


 もっと話し合えていたら、なんて考えてしまうのは欲張りすぎだろうか。


 後悔こうかい先に立たずとはよく言ったものである。

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