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 あの交通事故から、さらに五年の月日が流れ、私は中学生になっていた。


 ハーフであり、地毛が金髪である私の外見は完全に外国人だけれど、私は日本育ちの日本人だ。そんな私は、見た目によって迫害はくがいを受けることもなく日本の学校に馴染なじんでいた。そんな日常を過ごす中で、彼のことを考える時間は少しずつ減りつつあった。


 彼のお陰で今の私があるけれど、その意識が月日と共に鳴りをひそめるのは仕方のないことだろう。過去にそんな体験があっても、私の日常はごく普通の一般人と同じだったのだから。


 そんな日々の、とある日の夜。


やなぎシュウ〟


 私はなんとなく、彼の名前をインターネットで検索していた。


 そこに理由はなかった。


 いて理由を上げるのなら、私が彼と同じくスマホを持つようになったからかも知れない。


 それは本当にただの思い付きで、これといった意味のある行動ではなかった。


 しかし、それは意外な結果をもたらした。


 ヒットしたページはネット小説の掲載けいさいされているサイトで、彼と同じ名前の作者がいたのだ。


 私はそれを見て〝彼が小説を書いていた〟ということを思い出していた。


 まさか本名で活動しているとは思わなかったから、かなり動揺したのを覚えている。


 しかし、それはただの同姓同名である可能性は否めない。


 私は彼の作品の中で最も新しく〝完結済み〟となっている物語をタップした。


 その物語のメインページには【あらすじ】と【注意点】の二つが書かれている。

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