25


 俺は文章を書きこんだが――あれ?


 エンターキーを押した瞬間に文章が消えたぞ? 


 いくら書き直しても、俺の文章は確定されてくれない。


 あせる俺の前に、タルサの仏頂面ぶっちょうづらがあった。


わらわたちの願いは、何を媒介ばいかいにして発動すると思うておる?」


「そりゃ……なんだ? カロリー? でもないし……何かエネルギーが必要なのか?」


「ずばり、妾たち転生者の願いが発動するために消費しておるのは精神エネルギーであり、言い換えれば魔力じゃ。願いと言っておるが、それは物理法則を無視するという特性があるだけであり、実際は魔力を消費する魔法と願いに違いはない。そして、そんな魔術を発動するための魔力が、お主様には圧倒的に足りておらぬ」


「魔力が足りないって、そもそも異世界を創る前だって、俺には魔力なんか――」


「お主様には無かったが、あの空間には存在しておったのじゃ」


「……どういうことだよ?」


「あの空間は魂がただよう場所であり、魔力とは精神エネルギーじゃ。精神エネルギーとはつまるところ、魂そのものである」


 転生するための通り道だったあの空間には、精神エネルギーが満ちていたらしい。


「……つまり俺は、あそこにただよっていた魂を使って願いを叶えていたのか?」


「正解じゃ。そして、この異世界を創るために、そのエネルギーは消費された。つまり、新たにお主様の願いを叶えることは不可能と言う訳じゃな」


「……マジか」


「今のお主様は弾のない拳銃とでも言った所かの? いや、弾が無くてもぶん殴れるだけ拳銃の方がマシかも知れぬな?」


 タルサの笑い声に眉を寄せる。


「笑い事じゃねーだろっ!? どうすんだよ! これじゃ生き返るなんて無理じゃねぇか!」


「案ずるな。代替案だいたいあんは用意しておる」


「本当か!?」


「拳銃の弾が無ければ用意するだけのことじゃ。お主様には、これから神を目指してもらう」


「俺が、神を目指す?」


 どっかで聞いたタイトルみてぇな話だな。


 ……それにしても、タルサの話は難しくて、着いて行くのがやっとだ。

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