19


 ガラスが割れる様に、白い世界が崩壊した。


 地面が抜けて落ちる――と気付いた頃には、すでに空気抵抗を肌で感じていた。


 


 それは、まるで飛行機の窓からの眺めだった。




 太陽に照らされた世界は快晴で、どこまでも広がる青い空は眩しいぐらいで、眼下には雄大な大陸と、巨大な弧を描く大海原。


 どこまでも壮大な景色に包まれていた。


「お主様ぁああっ!!」


 空から落ち続ける俺を、抱きしめる様にしてタルサが拾い上げてくれた。


 タルサの足元には魔方陣が展開されていて、空を飛んでいる、らしい。


「タルサ!? 天使と、さっきの黒い腕は!?」


「どさくさで逃げられてしもうた! しかし、なんという景色じゃ! お主様の力はやはり、神そのもの――だったみたいじゃのう!」


 これは本当に、現実なんだろうか?


 激しく風が吹いており、俺の短い髪がなびく。


 頬に当たる風と直射日光の温かさが気持ちよかった。


 現実味があるのは、気付かぬうちに抱いていたパソコンの感触ぐらいで――先ほどと同じ場所にいるとは、到底思えない。


 俺たちは、異世界にいた。

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