俺は転生した

2 


 目覚めると、目の前に白い机があり、白い椅子に座っていた。


 手に何かを持っていて、視線を向けると〝はずれ〟と書かれたアイスの棒だった。


 俺は眉を寄せながら、とりあえず机にその棒を置く。


 机の上には畳まれた白いノートパソコンが置かれていた。


 むしろそれ以外の物体はこの空間には存在していないっぽい。


 ノートパソコンにマウスが付いていないから、素直に使いづらそうだなぁと思う。


 ……いや、そんなことよりも、ここはどこだ?


 視線を巡らせたが、この世界には、やはり白色しかない。


 白い部屋にいる、というわけではない。壁や地面の繋ぎ目があるなら影になって見えるはずだが、そんなものは見当たらないし、視線を上げれば天井はどこまでも見当たらない。

 

 つまり、俺は白色がどこまでも続く謎の空間にいるらしい。


 白い地面と白い空の境界線だけがはる彼方かなたに見えた。


 格闘ゲームのトレーニングモードのステージみたいだと思う。


 俺はそこまで探ってから、ふと思い出す。


 俺は確か、トラックにひかれたはずだ。


 身体をまさぐってみるが、俺は私服姿のままで、怪我はしてないらしい。


 しかし、トラックにひかれて無傷では済まないだろう。


 つまり、これは夢? それとも天国か地獄? はたまた、流行りの異世界転生モノで、魔王を倒すためにチート能力を授けてくれる女神がいる部屋なのか?


 当然だけど、俺は死んだことがない。


 死んだ人間がどうなるのかなんて知らないし、もしかしたら、死んだ人間は全員がここに飛ばされるのかも知れない。


 俺はとりあえず、目の前に置かれたノートパソコンを開いてみた。


 その画面にはワードが開かれていて、俺にとっては見慣れた画面だ。


 具体的に言えば、紙が横向きになっていて、文字の向きは縦書き。点滅するカーソルの大きさからして、34行42文字。どうして調べもせずに詳しい事が言えるのかと言えば――それは俺が、このフォーマットを前に二年間も奮闘したことがあるからだ。


 間違いない。


 このフォーマットは、電撃小説大賞の応募要項に書かれていたものと同じだ。


 そして、そのページには中央に、一言だけ文字が書かれていた。

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