第八話 大治郎さんのおすすめ
終業式の日。今日は午前中ですべての行事が終わって、部活もないのでお昼から自由っ。
でも私は知尋ちゃんの家へ行って大治郎さんのおすすめ高校を聞かなくちゃ。流都くんも一緒。
ちなみに期末テストの結果はまぁまぁでした。お父さんお母さんからもほめられました。よかったよかった。敬ちゃんはテスト返ってくる度に涙目になっちゃってた。
終業式を終えて、帰りの会なども済ませて下校の時間になると、私と流都くんは知尋ちゃんのところに集まった。
そして今日も三人で学校を出た。やっぱり私は後ろから前の二人を眺めながらの位置で。
知尋ちゃんの家に着くと、今日も大治郎さんが出迎えてくれて、なんと今日は知尋ちゃんのお母さんも一緒だった。
実はそれよりもすごいことが決まっていて……
「……なぁ雪乃」
「なに?」
「俺さ。今どこにいるんだっけ」
「知尋ちゃんの家……かな?」
「つまり同級生の家、ってことだよな」
「うん、そうだね」
「なぁ雪乃」
「なに?」
「今食べたのって、どこの家で出てる料理なんだっけ」
「知尋ちゃんの家……かな」
「つまり同級生の家、ってことで間違いないよな」
「うん、そうだね」
流都くんはそこまでしゃべると、大治郎さんと知尋ちゃんと知尋ちゃんのお母さんを見た。
「……おいしすぎました。ごちそうさまでした」
「お口に合いまして幸いにございます」
「今日は知尋のお友達も一緒にお昼ごはんを食べるということでしたから、腕によりをかけて作りましたわ」
「よ、よりかけすぎだと思います……こんなに豪華なお料理をごちそうになっちゃって……」
「料理はお母様の趣味なの。気にしなくても大丈夫よ」
「ううっ」
おいしかった。なんかもう、うん、すごいという言葉しか出てこない。
味はもちろん、食器もすごいし、盛り付けもすごいし、そもそも執事さんがいるっていうのもすごいし。
「知尋ちゃんはいつもこういうお料理を食べてるの?」
「いつもは大治郎さんが作ってくれることが多いわ。お母様は忙しいことが多いから」
「学校の給食には大助かりですわ」
「給食と横に並べちゃいけないんじゃないか……?」
給食もおいしいけどっ。おいしいけどっ。
すごいお昼ごはんが終わって、いよいよ本題。大治郎さんがプリントを複数枚くれた。ぱっと見ただけでも学校の様々な写真や情報がたくさん書かれてあった。
「まずは雪乃様から。私がお見受けするに、雪乃様は立地や校風、学校の機能面などを重視されるとよいかと考えました。まずはこちら」
説明によると、海も山も程近くて、電車も急行が止まって、生徒がたくさんいて、制服も人気? 海や山を利用した授業も多く、変わった授業がたくさんあるんだって。予想難易度は普通。
次におすすめされたのは、知尋ちゃんも候補に入れている地元の高校。他の候補より最も近いのと来年から新しい学部が作られて制服も変わる、というのが魅力。知ってる友達もたくさん行きそうとのこと。予想難易度はやさしめ。
その次におすすめされたのは、ちょっと遠いけど、設備がとても充実してて吹奏楽部が強い高校。一応知尋ちゃんの候補にもなってるらしいけど、今のところ優先順位は低めとのこと。授業に工夫が凝らされているから、将来のビジョンをつかみやすそうとかなんとか。難易度は難しめ。
最後におすすめされたのは、一人暮らしすることが前提になっちゃうけど、実際に通う生徒や保護者の人たちから絶大な人気を誇っているという海沿いのところ。とにかく生徒が過ごしやすいように取り組んでいるらしく、すこぶる評判がいいんだって。難易度は難しめ。
ちなみに、全部吹奏楽部があるところの公立高校を選んでくれたみたい。
「いかがでしょうか」
「難しいよぅ」
「じっくり考えていただければと存じます。もちろんさらに別の高校を探すことも可能ですので、なんなりとお申し付けください」
「ありがとうございます……考えるので、先に流都くんどうぞ」
「かしこまりました。それでは流都様……」
流都くんへの説明がされてたけど、私は自分のことを考えるのでいっぱいいっぱいだった。でも知尋ちゃんが寄ってきた。
「どうかしら。気になるところはあるかしら?」
「うーん、あるにはあるけど……まだこう、想像つかないっていうか……」
「わたくしもそのようなところよ。でも見学会をしていることが多いから、わたくしはこれから参加していこうと思っているわ」
「見学会かぁ」
「もし気になるところが同じなら、一緒に行きましょう」
「あ、うん。なんか最近知尋ちゃんにいっぱい誘われてるね」
「ファゴットパートには大変お世話になったわ」
義理堅いなぁ~。
いろいろ考えた結果、とりあえず三番目の吹奏楽部強豪校は外すことに。最も気になるところは四番目の評判がすこぶるいいところ。でも評判がいい分受験する生徒も多くて難しくなるかもだって。一人暮らしもすることになるし……。
流都くんは今のところ私の候補にもあった二番目の地元のところかなぁって言ってる。
学校のお話が終わったら、まだ時間もあるし気分転換に外へ出ようっていうことになっちゃった。
知尋ちゃんは着替えてから、私と流都くんとお出かけすることになった。
「さあ、参りましょう」
「わあっ、私服の知尋ちゃんだあ」
「さすが知尋……いや林延寺知尋っ」
薄い赤色のワンピースに麦わら帽子、白いポシェットを持ってる知尋ちゃん。靴はいつもの茶色のローファー。
「いってらっしゃいませ」
「気をつけていってくるのよ」
「いってきます」
「おじゃましました」
「おじゃましました~!」
私たち三人は、林延寺さん家を出た。
「わたくしだけ着替えているのは、なんだか変ね」
「そう言われてもなぁ、一回帰らないと着替えらんないしな」
「……そうだわっ。雪乃さんと流都の家を見てみたいわ。見るついでに着替えるというのはどうかしら」
「え!? さっきの散々林延寺らしさ見ての俺ん家かよ!?」
「わ、私も、その、なんていうか……普通の家、だよ?」
私の家に執事さんはいません。
「気が進まないのなら無理にとは言わないわ。でもわたくしだってお友達の家を見たい気持ちくらいわいてくるわ」
「あいや無理とかじゃないんだけどー……さ? なぁ雪乃」
「う、うん。いいのはいいのだけど、ほんとにその、普通……だよ? 執事さんもいないし」
「見せていただけるのなら、ぜひ見せていただきたいわ」
「わ、わあったよっ。じゃあ俺ん家から行って、最後雪乃ん家に行って遊ぶっていうのはどうだ?」
「私はいいよ」
「ではそうしましょう」
私も流都くんの家を見るのは初めてになる。
団地の中でも結構上ったところに流都くんの家はあるみたい。
「ほら、あそこのガレージのある家だよ」
私たちは歩いて近づいていきました。
(ここが流都くんの家かぁ)
家の横に大きなガレージがある。シャッターは閉まってる。
「雪乃と会ったときの自転車も、ここに入れてあるんだ」
「あの水色のすっごく速そうな?」
「そうだ。じゃあ家ん中に入るか?」
「ええ、見てみたいわ」
「今なら母さんいるかな……お、開いた。ただいまー」
流都くんのお母さんも初めて見ることになりそう。授業参観とかで見かけてるかもしれないけど。
私と知尋ちゃんも、ドアのすき間からちらっちらっ。
「おかえりー」
流都くんのお母さんの声。
「友達連れてきたー、けどちょっとしたら出てくからー」
「はいはいー、だれかしら、将くんー?」
「い、いやぁ……」
「じゃあ秀作くんかしらねーっと……まあっ!!」
流都くんのお母さんの姿が見えました。私たちは流都くんに招かれて、玄関に入りました。
「こんにちは」
私たちはほとんど同じタイミングでこんにちはをしました。
「こんにちは……ちょ、ちょっと流都! あんたいつの間にこんなにモテるようになったんだい!?」
「も、モテとかそんなの知らねーよっ。じゃあ雪乃、知尋、着替えてくるから、適当に待っててくれるか?」
「うん」
「わかったわ」
流都くんは慣れた動きで靴を脱いで、二階へ上がっていった。
家の中は……普通な感じかな。
「ささ! 玄関に立ってないで上がってちょうだい!」
「おじゃまします」
私たち二人は、初めて流都くんの家に上がりました。
リビングでソファーに座るように言ってくれたので座ってると、コップにつがれたジュースが運ばれてきた。
「飲んで飲んで! 外は暑かったでしょう! ごめんなさいねエアコンつけるわね」
「ありがとうございます」
流れるような動作(『流』都くんのお母さんだけに?)でエアコンのリモコンをピッピッ。ぐぉーんと動き出しました。
ジュースを飲んでみると……みかんジュースかな?
「それにしてもこんーなにかわいらしい女の子を二人も連れてくるなんて! そんなに流都って学校でモテるのかしら?」
私と知尋ちゃんは顔を合わせた。
「わたくしはあまり詳しくありませんわ。雪乃さんはなにか知ってるかしら?」
「えっ」
う。それを言われた瞬間、あのらぶれたぁのことを思い出したけど……い、言っていいかわかんないし……えーっとー……
「も、モテなくはないと思います。はい。だれとでも気兼ねなくしゃべってると思います」
「あらそうなのっ。まあこうして美人さんを二人も連れてきてるんだものね、ふふっ。二人は流都とどういう関係なのかしら?」
おばさん楽しそう。え、待って美人さん私も含まれてるの?
「私たちはクラスメイトです。私は去年も同じクラスで、文化祭のときにクラスをまとめる役を一緒にしてから仲良くなりました」
「あらそうなのー。仲良くしてくれてありがとねっ。あの子男の子とはよく遊んでるのは知ってたけど、女の子を二人も連れてきてびっくりしちゃったわっ」
流都くん、あんまり女の子と遊ばないんだ。
「あぁ……それにしても本当に二人ともかわいらしいわねぇ……あなたたちの方がもっとモテるんじゃないかしらっ」
「知尋ちゃんすごくモテそう」
「そうかしら……? 雪乃さんの方が人気がありそうだわ」
「ないない! 知尋ちゃんより人気があるなんて絶対ないない!」
ここは全力否定っ。
「そんなにも否定することかしら……?」
「私なんて知尋ちゃんのこと憧れの眼差しでいっぱいだよっ」
「あら、ありがとう。そのご期待に恥じないように頑張るわ」
かっこいいなぁ。そんな言葉すっと出てきません。
「あなた本当に中学三年生? 流都と同い年なのかしら? しっかりしてるわねぇ~」
「ありがとうございます」
「うんうん知尋ちゃんすごくしっかりしてる」
「ありがとう」
どう考えても私よりモテるよ知尋ちゃん……。
「なんか盛り上がってるな」
着替えた流都くんがやってきた。黒色に白色の文字が少し書かれた半袖のシャツに紺色のジーパン、白い靴下に赤いラインが入ってる。見るからに健康的。
「流都がまさか女の子二人も連れてくるなんてねぇ~」
「変な言い方すんなっ。知尋の家でごちそうになって、なんか外に出ることになっただけだよ」
「あら、ごはん食べてくるって言ってた子があなたなのね! 悪いわねぇごちそうになってしまって」
「いえ、わたくしやお母様、みんなが楽しかったのでよかったです。よければ今度御家族ででもいらしてください」
「まあ~どうしましょう流都、お食事に誘われてしまったわよっ」
「い、行けばいいんじゃないかな」
「ええ。流都なら歓迎するわ」
「さ、さんきゅっ」
知尋ちゃんがちょっと笑ってた。流都くんもちょっと笑ってた。
エアコン涼しい~。
「そういえば流都は普段どんなお部屋で過ごしているのかしら」
気になる。
「お、俺の部屋? ただの部屋だよ。そういや知尋の部屋って見たことなかったな」
「そうね。今度来たときに見せてあげてもいいわ」
「自信満々だなっ。たぶんその部屋に比べたら俺の部屋は……」
わかる。流都くん。その気持ち。
「あらっ。知尋ちゃんのお宅はそんなにすごいのかしらっ」
「すごすぎて腰抜かすかもな」
本当に同級生だもんなぁ、知尋ちゃん。
「知尋が見たいんなら、見せてもいいけどさ……俺の部屋」
「じゃあお願いするわ」
「ジュース持っていっていいわよ!」
私たちはみかんジュースが入ったコップを持って、流都の部屋へ。
二階に上がって奥の部屋。
「ここだ」
流都くんがドアを開けると、
(わあ~、これが流都くんのお部屋~)
テレビがあって、ゲームがあって、遊び道具もいっぱいあるみたい。あのベッドで毎日おやすみしてるんだね。
知尋ちゃんは部屋の中をいろいろ眺めてる。
「あら。これは何かしら」
知尋ちゃんは勉強机の上に置かれてあった封筒を手に取っ
「わあ! それは見るな!」
たと思ったら流都くんが急いで取り上げた。
「封筒にしては随分と意味深な反応ね。まさか……」
ごくり。
「……流都。好きな女の子でも……できたのかしら……?」
「ぃえ!? そう来た!? はははー、お、俺が好きな女子とか、いるわけないじゃん!」
あの封筒は流都くんが真遊ちゃんからもらったらぶれたぁだと思うけど、流都くんが書いた物と勘違いしたのかな。
「そうなの。じゃあその封筒とその反応は何なのかしら」
「そ、それはー……」
流都くんはここでため息をひとつ。
「……これは。俺が書いたんじゃなくて、俺がもらったんだよ」
「その話、詳しく聴かせてちょうだい」
流都くんはまたため息。
「わ、わあったよ」
と、いうことでカーペットに三人ぺたんと座って、らぶれたぁ話と、そしてお断りしました話がされました。
「……その女の子のことを思うと、胸が痛むわ」
「そのセリフを聴かされる俺の胸の痛みもわかってくれーっ!」
「流都くんも一生懸命考えた結果だと思うから、ねっ」
知尋ちゃんの視線はらぶれたぁに一直線。
「仕方のないことよね。それぞれに事情があるもの。それにしても、それほどかわいい女の子からの告白を断るなんて……」
「た、頼む知尋、その目はやめてくれっ」
その複雑な想いがたくさん混ざった視線、確かに耐えられなさそう。
「ち、知尋ならラブレター出したら、きっとどんな男子でも受けてくれると思うぜ?」
「今の流都が言ってもまったく説得力がないわ」
「ぐさっ」
見えない矢が刺さっているようです。
「でも……いいわね、ラブレター」
知尋ちゃんがしみじみしています。
「告白しても断られちゃうかもって思うと、私は書けないなぁ」
「ゆ、雪乃が書いたらきっとどんな男子でも」
「流都くんが言っても説得力ないよ?」
「ぐさぐさっ」
刺さってる矢の数が増えたようです。
「雪乃さんは、どのようなタイプの男の子がいいのかしらっ」
「た、たいぷ、とか、えと、うーん、そうだなぁ……」
恋愛話になってきちゃった。
「一緒にいてて楽しい人がいいかな」
「それはほとんどの人がそうじゃないかしら」
「あぅ。うーん……じゃあ、引っ張っていってくれる人がいいかな」
「雪乃さんも充分立案してくれていると思うけど」
「あぅ。えーっと…………そばに寄り添ってくれる人?」
「それは自然とそうなるものじゃないかしら」
「あぅ。知尋ちゃ~ん」
「もし好きな男の子ができたら、わたくしにも知らせてほしいわ」
「し、知らせて……どうするの?」
「林延寺家の総力をもって支援するわ」
「きょ、強力すぎるサポート体制だね」
こんな強力なサポートを得られるなんて、ファゴットパートを選んでよかった……かも?
「てかそんな話を当の男子がいる前でするなよっ」
ここで流都くんが口を開きました。
「あら。流都は雪乃さんのことが恋愛対象なのかしら?」
「はっ!?」
「えっ」
私の名前が出てきました。私は思わず流都くんを見る。
「な、きゅ、急にいきなり突然なんでそんな話になるんだよっ!」
「質問に対しての回答を得られていないわ。答えたくないのならそれでも構わないけど」
言葉はこんなでも、表情は明るい知尋ちゃん。恋愛話好きなのかな。今まで部活の話ばっかりしかしてこなかったけど。
「…………ま、まぁそのなんだ。れ、恋愛対象かどうかはともかく! こ、こういう機会でもないと言えないと思うから……言う」
なにを言ってくれるのかな。流都くんが改めてこっちを向いた。
「……いつも。その……声かけたら返事くれて……ありがとう、雪乃」
わあっ。急に胸がきゅぅんってなったっ。
「どういたしまして、流都くん」
まっすぐな流都くんの言葉に、とってもうれしくなっちゃった。胸がわくわくしてる。
「質問に対しての回答を得られていないわっ」
知尋ちゃん笑っちゃってるっ。
「だーもー!! わあったわあったから! れ、恋愛対象に入るよ! ほらどうだこれで満足か!?」
「えっ……?」
今。聞こえてきたのって……。
「とても満足のいく回答だったわ」
知尋ちゃんすごく笑ってるっ。こんなに笑う知尋ちゃんは珍しいかも……じゃなくって!
「りゅ、流都、くん……?」
「あ、あくまでその! 対象に入るか入らないかだったら入るってだけだからな! その、今、えと、どうのこうのとか、そういうのじゃないからな!!」
私……私が、流都くんの、恋愛……対象……?
「ちなみに……わたくしは、対象に……入るのかしら?」
わ、知尋ちゃんがさらに聞いています。
「なんだよ知尋さっきから! 入る入る性格いいやつはみんな入る! ほら満足か!?」
すっごくぷんぷんしてる流都くんかわいい。
「……満足ではないけど、貴重な意見として受け止めておくわ」
「おーし俺ばっか答えさせないぞ! 知尋、俺のこと好きか!? あん!?」
(え! そ、その聞き方……!)
私は知尋ちゃんをしっかり見ました。知尋ちゃんすごい表情してる。
「な、なにを聞いているのかしらっ。と、友達としてなら……れ、恋愛としては……その……」
わ~もじもじしてる知尋ちゃんだ! なかなかお目にかかれません。
「……ゆ、雪乃さんはどうなのかしら! 雪乃さんは流都のこと、どう思っているのかしら!」
「わ、私っ!?」
ここで私なの!?
(流都くんのことを、そんな、その、好きかどうか、なんて……)
私は流都くんをちらっと見た。流都くんがこっち向いてる。
(そんなに考えたことなかったけど……でも、たぶんいちばんおしゃべりしてる男の子って、流都くんになると思うし……それが好きっていう証拠なのかもとか考えちゃったら……意識が……)
私はたくさん考えて考えて…………
「……わ、わからないよぉ……」
思わず私ももじもじしちゃった。
「も、もし二人が両想いなら、林延寺家の総力をもって応援するわっ」
「それどこをどう応援するのぉ……」
ツッコミを入れながらも私の頭はいっぱいいっぱい。
「質問に対する答えになってないぞ知尋っ」
「うっ」
流都くんが再び知尋ちゃんの方を向いた。
「……わ、わかったわ。答えるわ」
知尋ちゃんは意を決したみたい。
「わ、悪くないと、思うわ」
「納得のいかない答えだなっ」
「ううっ」
知尋ちゃんが押されてる!?
「……ゆ、雪乃さん次第だわ! わたくしはここまでしか答えられないわっ。これ以上の回答を求められても応じられないわっ」
なんでそんなに私次第なのぉっ。
「じゃあ……ゆ、雪乃はさ。俺……恋愛対象に、入るのか……さんにーいちはいっ」
静かなトーンで言われても……。
「………………ほ、本人に言うことではないと思います!」
私はちょっと声を張りました。
「そ、そうだよな! 無理して答えるようなことでもないよな! ははっ! じゃーこの話は終わり! 終わりったら終わりだー! おーし雪乃ん家行こーぜー!」
流都くんはそう言うと立ち上がって私たちに部屋出ろ出ろジェスチャーをしてきました。
私たちは慌てて空になったコップを持って立ち上がり、流都くんの部屋を出た。
流都くんのおかあさんにおじゃましましたをして川音家を出た私たちは、今度は私の家へと向かった。
私の家にはだれもいなかったので、そのまま私のお部屋でおしゃべりしすることになった。話題は普通のことばかり。
と、流都くんのバックギャモンの力が披露されました。知尋ちゃん負けてた。
……でも私。ちょっと……意識しちゃうよ、あんな話になっちゃったら……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます