第七話 らぶれたぁの結果
次の日。私は朝からちょっとそわそわ。だってあの流都くんがお付き合いするかどうかの日なんだもん。
「おっはよー雪乃!」
「おはよう、敬ちゃん」
そういえばこのことって、敬ちゃん知らないんだよね?
「昨日知尋に川音とのことを聞いてみたら、全力で否定されちったてへっ」
ぺろっと舌を出してる敬ちゃん。
「そっちは川音には聞けたー?」
あ。あのことがあって、すっかり忘れてました。
「ううん、聞けなかった。話題変えられなくって。でも付き合ってるようには見えないけどなぁ」
「そっか。もし聞けたら教えてねん!」
お付き合いが始まったら、それもすぐうわさで広まっちゃうのかな? というか昨日の様子からしたら、流都くんはだれともお付き合いしてないように見えるけど。
私はそわそわしながら午前中の授業を受けて、給食をごちそうさまして、お昼休みになりました。
こそこそのぞきに行くのもあれなので、教室で座ってることに。
(あ、流都くん来たっ)
流都くんが教室に入ってきました。と思ったら、そのまままっすぐ……私の所へ?
「雪乃、ちょっと」
「うん」
私は流都くんに誘われ、廊下へ。
廊下どころか中庭までやってきました。中庭の中でもさらに人が少ない場所へ。
「どうだった?」
「俺……」
どきどき。
「……断ることにしたよ」
「ええっ!?」
声出ちゃいました。
「そ、そんなに驚くなよっ」
「驚いちゃうよ。だってかわいいこだったんだよね?」
「それもあんまり言うなっ」
いけないいけない。
「でもでもっ。じゃあなんで?」
「ちょっとしゃべったことはあったけど、そんなにはしゃべれてなかったこと。それと、他の女子に見向きもしちゃだめってのは、俺にはまだ早い気がしてさ」
「ど、どういうこと?」
「なんていうかな……好きな女子は、自分の手で見つけたいっていうか……中途半端に付き合うのは、なんかよくない気がして」
「そっかぁ……」
流都くんなりに一生懸命考えた答え、なんだよね。
「……でもかわいいこだったんだよ、ね?」
「だーもうはいはいかわいかったですよっ!」
てれてる流都くんかわいい。
「だからっ。そーいうことだから、今度の夏祭り。雪乃と二人で行くからな。いいなっ!」
「えっ? う、うん」
えっと、まさか……まさか…………
「ま、まさか流都くん、その約束を守るために、お付き合い断ったとか、そういうことじゃないよね?」
「それは違うっ。でも正直、雪乃といっぱい遊びたい気持ちもよぎった。そういうのも含めて中途半端だなって思ったから、断ったんだ」
「え、えと、じゃああの、やっぱり……私がいたから、お断りを……?」
「雪乃がいたから……って言えるかもしれないけど! でもそんなこと雪乃考えんなっ。もういいだろ? 俺だって悩み抜いて、勇気出して断ったんだ。多木さん泣かせちまったし……」
「そ、そう……」
ううっ。私、やっぱり悪いことしちゃったかな……。
「いいか! 夏祭り絶対俺と行けよ! 絶対だかんな!」
「う、うんっ、わかったからぁっ」
流都くんはそう言い残すと、すたすたと去っていっちゃいました。私中庭に置いてけぼり。
でもそろそろ掃除の時間なので、私も掃除場所へ向かうことにした。
「ゆのん~」
「あれ、穂綾ちゃん」
掃除時間中、焼却炉へゴミ捨てにやってきたら穂綾ちゃんと会った。
「もうすぐ夏休みだねー」
「そうだね」
うんうん穂綾ちゃんってほんとはこういうペースの女の子。
「最後の夏休みだねー」
「そうだね」
穂綾ちゃんとしゃべってると、いつもゆったりとした時間が流れていく。
「穂綾ちゃんは夏休みの予定とか、ある?」
……あれ。お返事がない。ゴミ袋を持ってる手がぎゅっと握られていた。
「……
しゅー。
「しゅー?」
「秀っ」
しゅー。
「あっ、日向くん?」
穂綾ちゃんはちょっと速くうなずいている。
「そうなんだ。何して遊ぶの?」
あ、私の番だ。ゴミ袋を担当の先生に渡して、私は横によける。
すぐ穂綾ちゃんの番が来て、ゴミ袋を担当の先生に渡すと、私の横に来た。夏だから先生とっても暑そう。
「海……行きたいって」
「う、海?」
私たちは掃除場所へ戻るために歩き出した。
「海だけはどうしても行きたいって」
「思い入れでもあるのかな」
「わからないけどぉ……」
カップルさんになっても、まだ日向くんのお話になったらてれちゃう穂綾ちゃんやっぱりかわいい。
「楽しくなるといいね」
「うん~」
手は後ろで組まれ、ちょっとうきうきしてるみたいだった。
(海、かぁ)
午後の授業に入ったのに、海のことを考えてるいけないこ雪乃はここです。
(しばらく海って行ってないなぁ。家族としか行ったことないけど、やっぱり同級生と行くのは楽しいのかな)
中学生最後の思い出に~……?
(でも行くならだれと行こう。やっぱり誘われたらでいいのかな)
でもでもだれからも誘われなかったら中学生最後の海もないし。
(う~ん。行ってみたい気はするけど、誘ってというほどでも……)
……無理してだれかを誘わずに、一人で行くのもいいのかな……?
(それはそれでいい気がしてきた)
ノート写さなきゃ。
午後の授業を終えて、部活もしっかりとこなした私。
楽器の片付けをしていると、知尋ちゃんがやってきた。
「雪乃さん」
「なに?」
「大治郎さんが、終業式の日に会いたいのですって。雪乃さんに合った高校を見つけてくれたそうよ」
「本当? うん、行く」
「わかったわ、伝えておくわ。流都も一緒でいいわよね?」
「うん」
こういう事務的な連絡をするときの知尋ちゃんって、なんかかっこいい。
「それと……よかったら今日一緒に帰らない? 塾があるからそこまでだけど」
「うん、いいよ」
「先に片付け終わったら、準備室の外で待ってるわ」
知尋ちゃんからお誘いがありました。前からよく一緒にしゃべってはいたけど、一緒に帰るのは本当に最近になってから。なんだか中学生最後の一年間は友達と一緒! っていう感じがする。
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