思い出

 神殿。俺は光龍様にすがる。まりえを呼び戻したい。


(全てそなたが悪いのじゃ)

(まりえが側にいるなんて、気付かなかったんです)

(ま、悔やんでもはじまらぬのじゃ)

(光龍様、お助けください!)

(こうなっては、まりえの気持ちになって、とことん考えるのじゃ)

(まりえの、気持ち……。)


 結局、光龍様にもまりえの居場所は分からず、俺が自分で考えることに。まりえとは15年の付き合いだけど、何を考えているかなんて、全く分からない。これからいろいろなことを話すうちにもっと仲良くなれるだろうと思った矢先のことで、今の俺には打つ手がない。


 諦めかけたそのとき、俺の脳裏にまりえとの思い出が浮かぶ。それは小学生のとき、はじめて人前で不思議な光を放った日のこと。友達に散々嫌われ、独りぼっちになった俺は、社務所の地下室に行った。


「ここにいると、嫌なことも忘れられるんだ……。」


 本当は忘れられる訳ではないけど、そうやって自分に言い聞かせる代わりに、まりえに話しかけていた。優姫がくる前だったから、水槽にはまりえしかいなかったはず。だからこのことを知っているのは、俺とまりえの2人だけ。


 俺の足は、何となく社務所の地下室へと向かう。

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