発注ミスはお嫌ですか
社務所の地下室。俺の仕事を手伝いながら、優姫が話しかけてくる。優姫は大きな勘違いをしていたらしい。
「あのぉ、マスター。この子達は、生贄にされるのでしょうか」
「えっ、どうしてそうなるの。そんなことする訳ないよ」
「供物は、どうするのですか?」
「それは『絵魚』を使うんだよ」
俺は地下室の物置きに大量に置かれた『絵魚』の中から1つを取り出す。かわいらしい金魚が描かれている。優姫はそれを俺から奪い取って、まじまじと見る。しばらくして優姫は安堵のため息を吐く。
このとき、まりえが地下室に入って来るんだけど、俺も優姫も気付かない。まりえは俺と優姫が2人きりなのでお邪魔かと思い、物陰に身を置く。
優姫はにっこりと笑って『絵魚』を片手に、俺に向かって言う。
「では、どうして金魚を発注なさったのですか?」
「発注? してないよ。親父が発注したんだろ」
「そうなんですか! マスターの発注ミスだと思ってました」
「さすがにそんな馬鹿なミスはしないよ!」
俺のその言葉に悪意はない。けどまりえには自身を咎めているように感じられたみたい。自分のような馬鹿な子は、俺の側にいてはいけないとまで考えてしまう。
「マスター、ごめんなさい! まりえが馬鹿で、ごめんなさい!」
まりえが近くにいることに俺が気付いたときは、もう手遅れ。まりえは階段を一気に駆け上がっていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます