第6話 アントロポファジーとマゾヒズムとロリィタと
件の少女の遺した日記帳曰く。
「今日は友達と公園で遊んだ。友達は、私が漢字まで書けるのに公園で遊ぶっていう子供っぽい遊びが好きなのが不思議だと言っていた。私だって、好きで無理な勉強をしてる訳じゃないのに。夕方になると、友達の母親が迎えに来た。友達は母親に文句を言いながらも、私に手を振って楽しそうに帰って行った。私はまた独りぼっちで家に帰った。私も、夕方になると迎えに来てくれるお母さんが欲しかった。夜に仕事をしなくても良い家に生まれたかった」
「今日の夕御飯はソーセージの残りを食べた。でも、冷蔵庫が壊れかけているから、明日には新しい材料を採りに行かないといけない」
「今日は、友達と秘密基地で遊んだ。友達は不安そうな顔で「ここだとお母さんが迎えに来られないね」と言った。一緒に遊んでいるときは、いつも勉強しろとかお手伝いをしろとかうるさい、って文句を言っていたのに。だから本当はそんなつもりは無かったけど、頭に来てその子の肩にカッターを刺した。その子は吃驚していたけれど、すぐに泣きながらカッターをつけたままで逃げ出した。カッターを返して貰おうと、追い駆けようとしたら、近くから凄い悲鳴が聞こえた。部屋を出ると、あの子は血塗れで倒れていて、側にはカッターを持った顔色の悪くて、背が高いお兄さんが立っていた。叱られるかと思ったけど、お兄さんは「これ、君の? 」と聞きながら、カッターを返してくれた。私は何だか嬉しくなって、微笑みながら「ありがとう」って答えた。そうしたら、お兄さんは吃驚した顔をしてから、私の前に跪いた。訳が解らない。」
「今日も、秘密基地であのお兄さんと遊んだ。お兄さんの話だと、ずっと私のような女の子に、優しい声をかけてもらったり、微笑みかけてもらいたかったらしい。私が望を叶えてくれたから、お礼に私の言うことは何でも叶えてくれるらしい。だから、食材の調達と、お料理と……家を燃やしてくれることを頼んだ。お兄さんは嬉しそうに了解してくれた。それから、お兄さんに御飯を作ってもらった。凄くお料理上手だったから、少し吃驚した。」
「家が無くなってくれから、これからずっと秘密基地に住むことにした。お兄さんは着る服も燃やしてしまったからと言って、私に綺麗なドレスを買ってくれた。今までこんなドレスを着たことが無かったから、とても嬉しかった。」
「今日、お兄さんに何でこんな食事をしているのか聞かれた。私は「食べてみたかっただけ」と嘘を吐いた。」
「お兄さんは私のことを「お嬢様」と呼ぶ。少し、恥ずかしい気もするけど、悪い気はしないからそのままにしておいた。」
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
「多分、お兄さんは私のことが好きなんだと思う。私も、同じ気持ちだから嬉しいと思う。でも、お兄さんは優しいから、仕事をしていた時のお客さん達のような事はしない。私は、彼とならば構わないと思っているのに。」
「彼とここで暮らすようになってから、とても長い月日が経った。彼は私の命令なら何でも聞いてくれるし、私が苛々して八つ当りして叩いたりしても、少し怖がりながら嬉しそうな顔をしている。それはともかく、この生活を何時までも続けられるか解らないから、明日の日記には本当のことを書いておこう。でも、本当は、ずっと、大好きな彼と一緒に暮らしていたい。」
「私が、私と同じ歳くらいの女の子を食べたきっかけは、羨ましかったから。馬鹿なことだと解っていても、彼女達を食べれば、彼女達と同じように、夕方になるとお母さんかお父さんが迎えに来てくれる女の子になれそうな気がしたから。あと、食べてしまえば、一緒に遊ぶことが出来なくても、ずっとに一緒にいられて、独りぼっちだと思わなくて済むと思ったから。でも、本当は少し悲しかった。」
「昨日の日記は、彼だけには、見つからない様にしないといけない。だって、昨日の考え方が正しいということになれば、彼とずっと一緒にいるためには………………………………………彼を食べなくてはいけなくなってしまうから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます