第十話:追憶-もう一つの世界へ-

 レッドダイバーとヤルダバオトのバトル、その結果は別の意味でも別の何かが起こるとも考える人物もいた。

「今回のレッドダイバーとヤルダバオト、これが意味するのは――更なるSNS炎上が起こる事。SNS炎上を阻止する為にも、一刻も早い対策が必要だ」

 指摘した人物の正体、それは七瀬時雨ななせ・しぐれだった。彼が指摘するのも珍しいというつぶやきもあったが――。

今回の一件こそ、悪意でSNSを炎上させようという勢力が動いた結果とも考えているようだった。

明らかなマッチポンプ、それこそが――あの事件の原因だったのかもしれない。

【マッチポンプとは言うが、今更では?】

【レッドダイバーの一件自体、何者かの主導があった可能性が高いだろう】

【レッドダイバー事件の真相と言っても、結局はSNS炎上と同じなのでは?】

【しかし、何が真相なのか――検討がつかない】

【本当の意味で、は存在しないのかもしれないな】

 時雨がチェックしているつぶやきのタイムラインでも、一連の事件をつぶやくコメントが出ているが――大抵がバズる事を狙ったパリピ勢力なのは言うまでもない。

そうしたつぶやきはガーディアンに警戒され、炎上行為は犯罪であるという認識を広める為に利用される事も、つぶやいた人物達は気付いていないだろう。



 六月上旬に入り、一連の事件もSNS上でつぶやかれなくなった頃、新たな動きがあった。

それは草加市の変化とも言えるような新たな商業施設オープンの告知である。これに関しては一部の人物は知っていたようだが、まとめサイト等はノーマークだった。

その理由は、その頃のまとめサイトはヤルダバオトの正体を突き止める為のまとめ記事やフェイクニュースを集中的に取り上げていたのもあるだろう。

「これらのフェイクが本物であるはずがないだろう」

 ニュースの内容を見て、数秒でフェイクニュースと見破ったのはゲーマー同盟のパーシヴァルだった。

ガラハッドはすぐにフェイクニュースと決めつけるのは早計と言うのだが、それでも文章のパターンや書き方を見ればフェイクと分かってしまう。

「だからこそ、逆に見落とす事になってしまったというべきなのか。あの状況変化を」

 彼女は、コンビニの入り口近くで誰かを待つ合間にまとめサイトをチェックしており、そこで別のニュースを目撃する事になる。

それが、草加市に出来た新商業施設だったのだ。明らかに、この施設が新たなステージと言わんばかりの煽りをするようなサイトもあるのだが――。

(それ以上に変わったというべきは、周囲の環境なのか。それとも、ガーディアンへの認識なのか)

 彼女は普段着でコンビニの前に立っているのだが、それを踏まえると周囲に姿を見せているコスプレイヤー等は相変わらずだという事に感心させられる。

それ以外としてはゲーマーと思わしき人物もゲーセン等に立ち寄り、更に言えばヤンキー等に代表されるような不良も姿を見せていない。

草加市が様々な対策を発表していき、その中には草加市のクリーン化も含まれている。これをクリーン化と言うかは疑問に残るのだが。



 草加市にあるスーパーに立ち寄った一般客も、流れているBGMには聞き覚えのない楽曲で驚く人も多い。

一昔前の楽曲であれば流れている店舗もあるかもしれないが、大抵のスーパーは楽曲使用料の高騰が足かせになっていた。

何故、このタイミングでこうした事が行われたのかは分からない。足立区と草加市の同じ系列スーパーでも、対応が分かれているからだ。

 一説によると、特定芸能事務所が主導して様々なコンテンツを広める宣伝を行っており、その宣伝費を回収する為と言うらしいが――。

こうした余計なを行った結果、草加市で行っているキャンペーンこそが、流れている楽曲にあった。

(周囲の客も、反応していない。まさか、この曲を聞いた事がないのか?)

 偶然、このスーパーに入店した真田さなだシオンは、流れている楽曲に聞き覚えがあったのである。

リズムゲームプラスパルクールでは未収録というか、収録された覚えがないのだが――他のリズムゲームでは収録されていた気配も。

(どう考えても、この曲は――)

 曲のテンポ的にはスーパー用にアレンジされている訳ではなく、原曲そのままだ。

そこまでバトルを連想する曲は使えないので、ヒーリング系の楽曲を選んだのだろう。

しかし、この曲を聴き覚えがあったのは――アル動画サイトである。つまり、スーパーで流れていたのはソーシャルミュージックだった。

近年のリズムゲームでは版権楽曲よりも、収録許可を取るのが容易になっている動画サイトで有名な楽曲や、特定作品のアレンジ楽曲が使われている。

これはリズムゲームをプレイしている年代に合わせた物だが、まさか草加市がソーシャルミュージックを大々的に推奨するとは予想外と言えるだろう。

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