第3話 とんでもないことを知る

全力で猫を連れて事務所の扉を弘樹は勢いよく開けた。

「何なんだよ、あのチンピラは!」

と言っているとその問いに答える人がいた。

「それは、伊崎組の下っ端だ」

声の主は、彼とは高校時代からの付き合いであり我妻組の若頭の兼平かねひらだった。

いかにもヤクザというような見た目で、応接机に足を上げていた。

そんな2人のやり取りを聞きながら、そっとお茶を出していた。

「こいつには茶なんて出さなくていい。どうせ、ろくな話もってきてないからな」

「そんなひどい言い方しなくてもいいだろ」

と彼女が出したお茶を飲みながら言った。

「知りたくないのか?お前が厳ついお兄様方に追い掛け回された理由」

「知ってるのか!」

「そりゃ、こっちの組にまで情報が入ってくるほどだからな」

彼の話によると、三毛猫が伊崎組で何かをやらかして逃げたらしく必死で探している。

そして、三毛猫を捕まえたら賞金が出るということになり血眼になってでも探しているのだ。

その三毛猫が弘樹が依頼を受けた猫だったということだ。

「ちょっと待て!この猫は絶対に渡せないからな!」

と言って、猫を渡さないと兼平から遠ざけるように抱いた。

「俺に渡されても賞金はいらねぇし、敵対している相手にそんなことするか」

我妻組と伊崎組は元々対立関係にあり、よく衝突することがある。

そんな相手の猫探しなんてというように猫を向こうに連れてけというように彼を追い払った。

「じゃあ、なんでここに来たんだよ」

「そりゃ、お前がチンピラに追いかけられているのをうちの者が見たから情報だけでもってな。

 あと五体満足でお前が事務所に帰ってきているのかと思ってな」

ため息をつきながら、猫をゲージに入れようとすると彼の腕から逃げ出して部屋の隅に行った。

「おいおい、また逃げるのか!」

と言っていると部屋の隅で猫は用を足した。

近くにあったビニール袋を手に取り、嫌々猫の糞をつかむと違和感があった。

「ちょっとビニール手袋ってあったか?」

とに言うと陵は給湯室から取ってきてすぐに彼に渡した。

2人は異様な顔をして彼を見ていた。

受け取った彼は違和感のあった部分を崩してみるとケースに入ったSDカードが出てきた。

「なんでこんなもんが猫の糞から出てくんだよ!」

「もしかして、組総出で探しているのってそれじゃねぇか?」

それを聞いて、彼は兼平に押し付けようとした。

だが、猫の糞から出てきた状態だったからかわしてソファーから逃げた。

「そんなの俺に渡すな!しかも、出てきた状態で」

ケースは濡れないようになっていた為、ケースごと1度水で洗いSDカードを取り出した。

弘樹はケースから取り出したけどどうしようというような顔をして兼平を見た。

「俺はそれ見たくないから帰るぞ!」

と言ってそそくさと事務所を出ていった。

残った2人はどうしようか迷っていた。

「先に依頼人の家にネコを連れて行こう!」

と言いゲージに入れて、依頼主の家に向かう準備をした。

事務所を出る時に彼女に向かって

「そのSDカードは帰ってから見るから、そのままで置いておいて」

と言って、ゲージを片手に依頼主の家に向かった。

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