弟にファーストキスを捧げたい
桐生夏樹
大好きカケルちゃん
--キィィー
よしよし。まだ寝てるな……私の可愛い王子様!
かわいいなあ。ウチの弟、本当に可愛い。
--うぅーん……
わっ! 起きた……?!
--すぅすぅ……
よかったあ……
まだぐっすり眠っているみたい。
朝の六時、少しだけドアを開けて、その隙間から弟の寝姿を眺める。
これが私の日課……そして癒し。朝、すやすやと眠っている弟の
言うなれば……
『翔ちゃん無しでは生きられないカラダ』
もう、何で姉弟では結婚できないのかと
私の夢。
それは、女性初の総理大臣になって、『姉弟でも結婚できる法律』を作って、そして……『姉弟でも子供を授かることのできる仕組み』を発明するのが長年の夢。
--冗談だと思ってる?
私は本気だよ!!
そのために死ぬほど勉強して日本でトップクラスの
今の目標は、LDC……ラスト男子中学生の翔ちゃんを、超一流高の『
そうしたら、私が慶蘭大学四年生の時に翔ちゃんは大学一年生……! 一年と言えども翔ちゃんと私が同じキャンパスに通うことができるなんて想像しただけでも胸アツだ!
今も高校受験のためって『建前』で、
ともかく、私の人生は全て弟の翔ちゃんのために存在すると言っても過言じゃない。ううん……過言と言う軽い言葉では足りないくらいだ。ところで過言の上ってなんだろう……?
--私の人生は全て、この、今ここにいる可愛い寝顔の弟に捧げようと思っている。
やばっ!
もう我慢できない。
私はピンクのキャミソールにショーツ姿で、そーっと弟の部屋に侵入する。立て
よいしょ、よいしょ……
--やった!
やっとのことで弟の寝ているベッドの横に到達した。もう心臓がバクバクしてる。緊張するーーっ!
--すぅすぅ……
そんな私の気持ちも知らずに、グッスリ眠っている翔ちゃん。
いいんだ……
いいんだよ。ゆっくりおやすみ。王子さま。
むしろ暫く起きないでいいよ。
…………
…………
…………
添い寝しちゃおうかな。
……えいっ!
弟の寝ている布団の隣に元気よく潜り込む。
--ドサッ!
『んー……んんー……』
やばっ! 調子に乗りすぎた!
起きちゃったっ?!
--んーすぅすぅ……
あぶなーい……
はあ。良かった。ゆっくりおやすみ翔ちゃん。
ふふふ。
寝顔ちかーーーいっ!
かわいいなあかわいいなあ。
まつげ長い~
お肌ツヤツヤ~
唇ぷるぷるしてる~
はああ……お姉さんドキドキしてきたよう……
こんなお姉さんの気持ちも知らずにスヤスヤ眠っているなんて、罪な弟だねえ……
でも、そんなところも好き。
ほっぺた突っついてみようかな
--ぷにぷに
きゃー!! もち肌ってこのことを言うのよね!
LDCの肌! これはもう犯罪ですわ! よだれ出まくりですわ!
ああ……だめだ! もう我慢できない!
ちょっと恥ずかしいけれど、私のファーストキスを翔ちゃんに……捧げちゃおうかな……
本当は、起きてる時にキスしたいけれど、翔ちゃんったら『恥ずかしがり屋さん』だから、思いっきり拒否するよね(実績あり)。
まったく……
素直じゃないんだからぁ……
そーっと……
そーっとだよ私、焦らないで私……
--うわっっっあああっ!
私の顔に、翔ちゃんの寝息がかかる。
これはこれで、ごちそうだよー! ごちそうさまだよー!!
だめだめ。こんなことで満足しちゃダメだぞ私! 私は
翔ちゃんのファーストキスは私が頂くんだ。
絶対、他の女には渡さない!
むしろ、私以外の女と翔ちゃんのキスなんて、絶対認めないんだからね!
……と言う訳で、再チャレンジ!
そーっと……
翔ちゃんの唇に私の唇を……近づけて……
あと五センチ……
あと三センチ……
あと一センチ……
…………
--わんっ!わんわん!
「!!!!」
--バチッ!
翔ちゃんは驚いた様子で大きく目を見開いた。
その光景に、思わず
隣の家のバカ犬が吠えたせいで、翔ちゃんは目を覚ましてしまったのだ。
なんだこの茶番は!
キス寸前で邪魔されるとか、純愛系のドラマじゃないのだからやめて欲しいわ!
本当に何てことなの?!
もうちょっと……もうちょっとだったのにっ!
「か、
翔ちゃんは上半身を起こして、ビックリした顔で私を見つめた。
はああーバレたかー……あのバカ犬さえ居なければ……
もう少しだったのになあ……残念無念……
私は翔ちゃんの太ももに
「えへへ。おはようのキスなどを……ね?」
私は可愛く首を
「おはようのキス……じゃねえよ! なに当り前の様に僕の布団に入ってきているんだよ! 早く出て行けよ!」
「ええー? 冷たいなあ翔たん……女の子には優しくしなきゃいけないのだぞー?」
「香ちゃんは女の子以前に、僕の姉さんだから対象外だよ!」
「そんなこと言ってえー……小学生の頃は一緒にお風呂にも入ったじゃない? 何だったら今でも一緒にお風呂に入ってもいいんだぜっ! えいっ!」
私は、ドサクサに紛れて翔ちゃんのことを抱きしめ、強く強く胸を押し付けた。意外と翔ちゃんって良い身体つきしているんだよね。着やせするタイプってやつ?
翔ちゃんの胸板で私の胸が潰れているのがわかる。何て気持ちいいのだあ……離れたくない、離したくない。
--はあぁ……
私がうっとりと
ちょっとちょっと……?!
私は姉と言えども、美人『巨乳』女子高校生なのだぞ?! こんなシチュエーションになったら、普通、やりたい盛りの思春期の男子中学生としては、野獣と化して理性を吹っ飛ばし、逆に私のことを襲っちゃうくらいのことをしても良いんじゃない?
むしろ襲いなさいよ!
『据え膳食わぬは男の恥』だよ?!
それに、男の中で私のことを、こんな雑に扱うの翔ちゃんくらいだよ?!
他の男どもは頼んでもいないプレゼントを贈ってきたり、ご飯やデートに誘ってきたり、ウザいくらいなのに。
『でも、そう言うところも好き』
私は感極まって、更に更に、強く強く、翔ちゃんのことを抱きしめた。
--ぎゅうう……!
私の気持ちに反して、翔ちゃんは脱力して肩を落とした。まるで命の無いぬいぐるみのように。
「なあにー? 翔ちゃん、怒ってるの……?」
「怒ってると言うかさ、呆れてる……香ちゃんも来年大学生なんだから、もっとしっかりしなよ。むしろ服着なよ。おっぱいこぼれそうだよ?」
「へへへ……見ても良いよ? ……見せようか?」
「そう言うところがダメだって言っているんだよ! 早くしまえ!」
LDCから諭されてしまうLJK。
だけれど、翔ちゃんから諭されるのも嫌いじゃないんだよね。むしろ、大好物なのですよ。
何か従順な仔犬みたいな気持ちになれるんだ。
--わんっ!
そんな気持ちを読み取られるのは悔しいから、あえて私は翔ちゃんから身体を放し、落ち込んで
そんな私の様子をみて、慌てふためくLDC。
「か、香ちゃん……! 泣いちゃった……?! ごめん、ごめんて!」
ふっふっふ。
まだまだ甘いな少年。
でも、そんな優しいところがたまらないのだ。
「翔ちゃん……だーいすきっ!」
放した身体を再び翔ちゃんにくっつけて強く強く、そして強く力一杯抱きしめる。
「ったく……しょうがないなあ……香ちゃんは」
翔ちゃんは半ば呆れ顔で呟いた。
……お?
これは、私の粘り勝ちってことかな?
「えへへ……翔ちゃん、ずっと一緒に居ようね」
今日のところは、ファーストキスを我慢してあげる。
--必ず翔ちゃんの唇を奪ってやるんだから、覚悟しておいてよね!
いつか、結婚しようね。
王子さま!
<おしまい>
弟にファーストキスを捧げたい 桐生夏樹 @tomox9209
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