第24話 ふと気付けばもう六人目
時は、アレンが
場所は、ダイニングまで
ちなみに、『散々な目』とは、アレンが、クラン戦の同意書にサインしてその
それだけでも十分散々だと思うが、追い詰められたリビングの
リルとは既に和解したが、仲間達の怒りは未だに収まっていない様子。だが、アレンは、もう気にしない事にして朝食後のお茶を頂きつつまったりし、そろそろダンジョンに潜る準備を始めようかと思い始めた頃、なんと、クラン結成が認められたという
そして、今、クラン《物見遊山》の認可状を手渡された後に提示されたのは、要するに、このような形で事務処理され登録されました、という事を報せるための資料で、その中には
まず、クラン・マスターのアレン。それから、リエル、レト、クリスタ、ラシャン、カイト、そして――
「ギルドの職員である
リエルが
「表向きは、
表向きは――その一言で、サテラの本意ではない事、更にはそう処理した冒険者ギルドの本意ではない事が
では、何者の意思が働いているのかというと――
「青竜隊だろうな」
そう言ったのはカイトで、
「
目を付けられたが最後、その気になりさえすれば、対抗し得る戦力を有する大手クランの後ろ盾がないギルド職員や
「本当に
アレンが心底
「なら事実は?」
そう訊いたのはラシャン。だが、
「取引したのね」と確信しているかのように言ってから「たぶん、その表向きの理由を受け入れる事と、ギルドが行なった不正を口外しない事を誓約させられたんだと思うけど、それを
「…………」
どうやら、
「――ありがとう」
そんな言葉を聞いて、出かかった言葉を飲み込んだラシャンも、顔を上げて戸惑っているサテラも、他の仲間達も
「俺の身を案じて守ろうとしてくれたんですよね?」
確信を持って言った。
「サテラさんは、俺の担当アドバイザーですから」
「~~~~ッ!?」
サテラは、口を引き結ぶと顔を
「……仕事を、しただけです。ギルドの職員として……アレン様の担当アドバイザーとして……、本当にお役に立てたのか分かりませんが、無力な私に何かできる事はないかと、必死に考えて……」
それが何なのかを語るつもりはないらしい。
気にはなる。だが、アレンは、いずれ分かるだろうと、今それを追及しようとはせず、サテラの目が
すると――
「……仕方ないわね」
どうやら、自分は、自分で想像していたよりも
「今は私などの事より……」
気を取り直し、サテラがそう言いつつ書類ケースから新たに取り出したのは、一枚の文書。
現在、クラン《物見遊山》のメンバーは、自宅のリビングに集合していて、アレンとサテラがテーブルに向かってソファーに座り、他のメンバーは立ったまま
珍しくご主人様の側に姿がないリルは、シグルーンと共に、体調がいいからと家の外に出ているエリーゼに付き
「クラン戦の開催が公式発表されました」
それを聞いて、早いな、と
「日々ランキングバトルが行なわれている
「当然でしょう」
そう言ったのはラシャンで、
「忘れたの? あっちにはランキング1位の〝絶対王者〟、闘技場の
そうだったな、とカイトは
そうこうしている内に、サテラから受け取った文書に目を通し終えたアレンは、それを自分の後ろで
そして――
「――え?」
「なにこれッ!?」
程なくして、困惑の声を上げた。
それは何故か?
そこには、クラン戦が開催される時と場所、ルールなどが記載されており、当然、先日アレンが持ち帰った同意書の写しと同じ――と思いきや、
――試合形式は、決闘。両クランから代表者を1名ずつ選出して戦闘を行ない、一方の気絶または死亡によって決着とする。
ここまでは同じなのだが、その後に、
――同クランメンバーに限り、最大で100名まで加勢を認める。
そんな一文が付け加えられていたからだった。
それ自体は、円形闘技場で行なわれる決闘ではよく採用されるルール。明らかに力量や員数で
だが――
「ほらっ、やっぱりそんなのこっちには書いてないよッ!」
クリスタが持ってきて、そう言いつつテーブルへ叩きつけるように置いたのは、アレンが持ち帰ってきた同意書の写し。
思い違いではなく、確かに、何度よく見直してみても、そんな一文は存在しない。
「典型的な
「要するに、
通常であれば、写しにも本物と同様にサインと
修理屋を経営し書類仕事などの実務も自分で行ない不備がないよう気を付けているカイトや、冒険者になるためラビュリントスに来た
「お前……まさか、こうなる事を【予知】していたのか?」
アレンにはまるで動揺する
「いいえ」と首を横に振り「ただ、サインした同意書に
不正を行なわない、行なわせない、そのための誓約の儀式魔術。
それを実行するための知識や技術がないのなら
「なら、これはお前の望むところだって言うのか?」
「まぁ、そうですね。裏でコソコソされるより余程良い」
アレンは、それに、と続けて、
「たぶん、あちらさんは知らないと思うんですよ。
そう言って右手で指差したのは、持ち上げた自分の左手の手首――そこに
それを見て、サテラを除く仲間達が、あっ、と声を
冷静になってよく考えてみれば、こちらには【時空】【水】【生命】【冷熱】――4機もの〔
「そうだよッ! よく考えたらこのルール、ボク達もアレンと一緒に戦えるって事じゃんッ!!」
真っ先にそう声を上げたのはクリスタで、リエルとレトも大きく頷き、
「なるほど……。決闘の日までにどれだけ腕が立つメンバーを集められるか、
「あっちにも【電気】の〔
精鋭の中の精鋭から選抜されるであろう《群竜騎士団》100名を相手に本気で勝てると、諦めずに奇跡を起こそうとするのではなく、実力で勝利を
そこにいたのは、追及しようとしていた時とは打って変わって、同情するような眉尻を少し下げた笑みを浮かべているラシャンで、
「私も成り行きで仲間に入れてもらうまで知らなかったんだけど、――ここはおかしい」
「おかしい?」
「この
「異常?」
「それに、アレン君も普通じゃない」
「普通じゃない?」
「貴女にもじき分かるわよ。少なくとも、今日の夜と明日の朝、アレン君の日課だっていう朝稽古と夜稽古を見れば、うちのクラン・マスターの
「凄まじさが?」
ひどく混乱しているらしく、
そんな彼女がいつもの冷静さを取り戻すのを待つ事なく、アレン達は打倒《群竜騎士団》の作戦を練り始めた。
――その後。
経緯はどうあれ、クラン《物見遊山》のメンバーは、サテラを仲間に迎え入れた。
そして、ギルドを辞めさせられた事で生活していた女子寮から出て行かなければならなくなり、しばらくは宿屋住まいだという話を聞いたアレンは、すぐさま自宅に彼女の部屋を用意し、【空間転位】と【異空間収納】でさっさと引っ越しを済ませると、全員で決闘の日まで
その一方で、仲間達は早くも決闘に向けて動き始めていた。
リエルとレトは、〔超魔導重甲冑〕を第1形態で装備して、先日アレンから受け取ったばかりでまだ初期形態のクリスタは、除装した腕環状態のまま〔力晶銃〕を手に、射撃場で慣熟するための訓練を開始。
ラシャンは、元仲間の借金を返済するために、最低限の防具を残してほとんどの装備を売ってしまったそうだが、普段は嫌いな二つ名で呼ばれないようローブを纏って後衛っぽい雰囲気を出してはいても、その正体は、【
カイトは、仲間達の装備を完璧に整備する事こそ己の
その日以降も、
それは、とても好ましい事だ。
ついこの間まで、友達や仲間ができないと思い
だが、やはり、師匠や老師から昔話で聞いたような、以心伝心や
特に問題なのは、そもそも戦闘経験が少ないリエルとクリスタ、それに、銃器の
つまり、連携は、まだまだ本番では使えない。
しかし、それを言って仲間達のやる気に水を差したくはない。
そこで、アレンは、負けじと修行に
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