epilogue タイムスリップしたストライカー
『さあ、最高の舞台が整いました!これが、この舞台こそが、ワールドカップに並ぶ全サッカー選手の憧れの場所です!
UEFAチャンピオンズリーグ・
UEFAチャンピオンズリーグ決勝戦。
今大会決勝戦の舞台となるイタリア・ミラノ、スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ、通称サンシーロ・スタジアムは、8万人を越す超満員の観衆で埋め尽くされている。そして、その殆んどが、
『選手たちが
そして、ファイナリストの称号を得た後は、
流れてくるアンセムを聴きながら、俺は遂にここまで来たのだと胸を躍らせていた…。
『UEFAチャンピオンズリーグ・ファイナル!激突するのは、
史上最多の優勝回数を誇るスペインのレアル・マドリード!対するは、レアルに次ぐ2番目の優勝回数を誇るイタリアのACミラン!大陸の王者の称号を得るのは、果たしてどちらのチームなのか?』
―ウワアアアアアアアアアー
アンセムが鳴り終わり、大きな歓声が会場を包み込んだ。
『さて、両チームの紹介を致しましょう。先ずは2大会ぶりの王者返り咲きを狙うレアル・マドリード。クリスチャン・ロバウドを筆頭にベンザマ、ベリル、マドリッジなどの強力な攻撃陣の活躍で、下馬評通り勝ち上がってきました。そして、その攻撃陣のタクトを振るのが、皇帝・香田圭司です!
そして、12大会ぶりの復権を狙うのは、ファイナルの会場でもあるこのサンシーロを本拠地とするイタリアの名門ACミラン。
近年は低迷が続いてましたが、5大会ぶりに参加となった
ピッチに散る前、俺は香田と静かに拳を合わせた。これで…最後の約束も漸く果たせたんだ。
ワールドカップでは、味方として同じピッチに立った。でも、香田がより強く望んだのは、こうして敵として向かい合い、俺に勝つ事だったから。
-ヒューガー、ヒューガー、ヒューガー…
試合開始前だってのに、会場に俺のチャントが鳴り響く。完全にホームだな…まぁ、実際にこのサンシーロはミランのホームなんだけど、なんかレアルには申し訳ないな。でも、決勝の会場は予め決められてるんだから仕方ない。
ワールドカップ後、俺には幾つか海外のクラブチームからオファーがあった。でも、流石に30歳になってから新天地に行くのも気が引けたし、家族の存在もあったから乗り気では無かったのだ。
そんな時、俺の心を揺さぶるチームからオファーが届いたんだ。
そのチームが、イタリアセリエAの名門・ACミラン。TS前には香田も在籍した世界屈指のビッグクラブだ。
CL歴代2位となる7回の優勝、世界が誇る名門中の名門……だったが、近年はカルチョスキャンダルや財政難等ですっかり凋落してしまっている。
だが、俺は子供の頃からこのACミランが大好きだったのだ。
古くは元オランダ代表の20世紀最高のストライカー、マルコム・ファン・ラスティン。リベリアの怪人、ジェフ・ウィアー。ウクライナの矢、アンドリュー・チェフチェンコ。何で其所にいるんだ!?ヒッポ・インザーズ。…ミランのストライカーはいつの時代も俺の憧れだった。
そしていつかは、俺もあのロッソ・ネロのユニフォームを着るんだと夢見てた。だから、タイムスリップ前に香田がACミランに移籍した時は悔しい様な…でも嬉しい様な…やっぱり悔しかったのだ。
そんなミランが俺に興味を抱いてくれている。…正直、心が揺れた。俺には家族がいる訳だし、年齢の事もあるのだから。
でも、そんな俺の不安を他所に、妻は絶対に行くべきだと主張した。日向大輔が海外でプレーせずに現役を終えるなんて勿体ないと。…あれは完全にサポーターの目だったな…。
…ミランはかつて、世界最強と言われていた。だが、今や見る影もなく凋落していた。そこから復活する為にもがいているのだ…。まるで、自分の様だとシンパシーを感じたのも、移籍を決断したきっかけとなった。
で、ミランに移籍した訳だが、開幕から6試合連続でゴールをあげ、インテルとのダービーマッチでも終了間際に決勝ゴールをあげた頃には、俺は
決して俺だけの活躍では無いが、ミランは今シーズン、カップ戦こそ早々に敗退したものの、リーグ戦はあと2試合残して首位ユベントスと勝点2差で2位。俺も得点ランキングを独走し、
だが、ミラニスタが一番に望むタイトルは、セリエAの
10年以上遠退いているヨーロッパの覇権。その覇権を狙えるチャンスに、決勝がホームと云う最高のシチュエーションで決戦を迎えられるのだ。俺達にのし掛かるミラニスタの…いや、イタリア全土のプレッシャーは半端じゃない。
でも…俺はこの環境を楽しんでいる。楽しめている!それは…今目の前ですっかり戦闘モードになっている香田のおかげかもしれない。
『日向大輔と香田圭司…二人の因縁のライバル対決は、史上初の日本人同士によるCL決勝での顔合わせとなりました!
この試合に勝った方…もしくは、より活躍した方がバロンドール確実とも言われる両者、世界に誇る日本の二大エースとして、どちらも絶対に負けられません!』
俺達は視線をかわす。そして、この場所に、この世界最高峰の舞台で戦える事に魂が震えていた。
「…日向。…俺はこの時をどれだけ待ち望んでた事か…。これで、漸く俺はお前を越える事が出来る」
「はははっ、それにしても、あの高校選手権決勝の決着が、まさかCL決勝の舞台になるとはな。流石の俺も予想出来なかったわ」
「フッ、俺は予想してたぞ?お前がこの舞台にまで登って来るってな」
「本当に、お前はどんだけ俺の評価高いんだよ!」
「な~に、今やお前への世界の評価が、俺のお前への評価に追い付いたじゃないか」
「なんか…高校時代と立場が逆転してるな。まあいいや…。お前は、ずっと俺に勝ちたいと思ってたんだろうけど、それは俺も同じなんだよ…」
「何言ってる?お前は昔から………ああ、なるほどな」
「…そーいう事。俺も
「そうか…。でも、
「いーや、
タイムスリップしたストライカー
~能力そのままで過去に戻った俺は、ライバルに勝てるのか? ~
epilogue END
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