第13話 一体なにがどうなって…
やっちまった…やっちまった…。
俺ァ12年間も無事故無違反でやってきたんだ。
それなのに。ちきしょうそれなのに!
まさか、人を撥ねちまうなんて!
「おまたせしました」
「おっお巡りさん!俺ァ、俺ァ」
「あ、いや落ち着いてください。警らの者の聴取も終わりました」
俺ァいつも通り、自慢のトラックをコロがしてたんだ。
今日はボウズの誕生日だから、早めに切り上げて帰ろうと。
それなのに、あんちくしょうめ!
横断歩道も無いところから、急に道に飛び込んできやがって!
くそっ!くそっ!何もかもオシマイだァ。
すまねぇ、カアちゃん…。
「でね、居ないんですよ」
「…へ?」
「ですから、居ないんです。被害者が。影も形も」
「そんな!俺ァ確かに!…見てたお巡りさんも、いるんでしょ?!」
なんだ?何がどうなってやがる。
「確かに警らの者は見たと言っています。貴方も、人を轢いたと思ったんですよね」
「へぇ、間違いなく」
「ですが、血痕も無ければ車体に凹みもありません」
「いや…俺ァ確かに」
「あるのは、貴方と警らの者の証言だけなんです。被害者は、居ません」
「…てことは…てことは…」
「はい。当然なんらの罪にも問われませんし、罰則金すらありませんよ」
おおお、神様!カアちゃん!ボウズ!
「しかし一体なにがどうなって…」
「おそらく、異世界転生でしょうねぇ」
「イセ…?テンセ…?」
「あぁいや、もちろん転生か転移か召喚か、それはわかりませんけど」
「なんです?そりゃァ」
「ご存知ないです?最近多いんですよねー」
説明を聞いてもよくわからねェが、とにかく、トラックに轢かれてはどっかに行っちまう迷惑なヤカラ共がいるらしい。
よく分からねェが、俺たちトラック野郎をダシにするたァ太ェ野郎だ。
「法整備も遅れていまして…正直我々も対応に苦慮しているんですよね」
「そうですか…そいつァご苦労様なこって…」
「ま、何かあればご協力頂く可能性はありますが、今日の所はお引き取り頂いて」
「このまま帰っても、いいんですかい?」
「はい。先ほども申しましたが、当局としては事件性ナシと判断していますので」
「ありがてェこってす!」
どうやら、無事ウチに帰ることができるみてェだ。
しかし異世界転生野郎共め!こっちの迷惑も考えやがれってんだ!
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