ミスで組長に白い粉を飲ませた俺。鉄砲玉にさせられ、殺されたので、異世界では頑張ります~チンピラ極道 異世界 JINGI~

ミルク

第1話 鉄砲玉、異世界へ

藤沢 博志 35歳

職業 ヤクザ

 それが、俺だ。


 ヤクザと言っても、雑用やって、兄貴分から小遣いもらって細々と生活しているチンピラみたいなもんだ。


 そんで現在、俺の隣にいるのが17歳の「ヤス」

 組に言われて俺が、教育係として指導している見習いみたいなもんだ。

 教育係をしろって言われた時は、やりたくないと思ったが、上から言われりゃ、断れないのが縦社会って奴だからな。


 苦労しながらヤスにイロイロ教えたが、コイツは失敗ばかり。

 指導を始めて暫くするとヤスは俺の事を、兄貴、兄貴と慕ってくれるようになって素直な奴だった。

 俺も、そんなヤスを可愛く思っている。


 ヤスは、この組に入ってから色々やらかしてくれたな。

 ホントに色々と…… やらかした。



 俺は、手にしたドスを眺める……

 街は、冷たい雨がふりだしていた。


数日前、俺の所属するヤクザの事務所ーー


「兄貴、砂糖ないすか?」

 ジャージ姿で、ツンツン頭のヤスが、キッチンでキョロキョロしながら俺に聞いてきた。

 組長へのコーヒーの入れ方に関する指導中なのだが、砂糖がないってお前……

「バカ野郎! お前、砂糖は切らすなって、この前教えたろ?」

 組長は、甘党なのでコーヒーには砂糖が欠かせないからだ。

 怒ってもしょうがないが、どうする?

 俺は、焦った。

 以前、甘くないコーヒーを出してゴルフクラブでぶん殴られた事を思い出す。

 買ってくるか?

 ダメだ!

 組長は、待つのが嫌いだ!

 ゴルフクラブが頭をよぎる。


 どうする? どうするよ!


 はっ! そうだ!


「ヤス! 組長の部屋に砂糖あるハズだ!

早く行って取ってこい! 」

 組長が部屋で角砂糖を舐めているのを見たことがあった!

「へい、わかりやした!」

 ヤスは、元気に返事して走って行った。

 大丈夫かな?

 ……それじゃ俺は、組長の様子を見てこよう。

 キッチンを出て、俺は事務所を覗きこむ。


 奥の方で組長は、椅子に座って若頭と何か話をしていた。

「うわぁ~」

 見るからに機嫌が悪そうだ。

 早くしないと。

「急いでくれよ、ヤス」


 組長の部屋に忍び込んだ、ヤス。

 ソコで直ぐに小瓶を見つけたので、蓋を開けてみた。

 中に角砂糖が一つだけ入っていた。

 ヤスは、それを取ってポケットにしまったのだが……

「これだけじゃ足りねーよな?」

 他に砂糖が無いか、キョロキョロと辺りを物色する。

「なんだコレ?」

 アタッシュケースの中に小袋に入った砂糖を見つけた。

「あっ、こんなにある!」

 ヤスは、小袋を一掴みするとポケットにねじ込み、急いでキッチンに戻った。

「あれ、兄貴いねーな? まいっかコーヒーくらい入れれるっての。

 適当でいいんだよ、こんなもん」

 組長のコーヒーカップに、その辺にあったインスタントコーヒーを雑にいれ、お湯を注ぐ。

 ポケットから角砂糖を取り出してコーヒーに入れて、スプーンでかき混ぜ完成だ。

 ヤスは、砂糖入れに持ってきた小袋の中身を移す。


 その頃、藤沢は組長の様子を伺っていた。


「おい、コーヒーまだか!」

 組長の怒声がした。

 ヤバイ限界だ!

 俺がキッチンに戻ると、ヤスがコーヒーを入れ終わっていた。

 なんだよ、終わってたの?

 しかし、コーヒーカップがビショビショじゃねぇか。

「ヤス、カップ拭け! ビショビショだと怒られる!」

 ヤスが、手元にあった台拭き用のフキンでカップの水気をとった。

 汚っ! でも、時間が無いし……

 俺は、見なかった事にした。

「おい、早くいくぞ!組長がイラついてる」

 急いで、お盆にコーヒーカップと砂糖入れを乗せて運び出す。

 ……大騒ぎしといて、砂糖入ってたんじゃねーか!

 いや、怒るより早く行かないと!

 ヤスがついてきてた。


事務所、組長の前ーー


 コーヒーを持ってくると、若頭が席をはずしていた。

 コーヒーが一つだけだったので、助かった!


「遅くなり、申し訳ございません」

 俺は、コーヒーと砂糖入れを組長の前に置く。

カチャッ


 俺は、ギロリと睨まれた。

「おせーぞ! ボケが」

 組長は、コーヒーを口にした。


「!」


 組長の表情が変わった。


「オメーが入れたのか?」

 組長に聞かれたので、今日はヤスが入れたと答えたが……


 組長が、ヤスをみて笑う。

「若いのに、やるじゃねーか、豆を変えたのか?」

 俺は、尋常じゃない汗が出る。

 あの、バカ、さては組長用の高級豆の方を使わなかったな!

 ヤスをみると、初めて組長に話しかけられ緊張している。


「何時もより旨い。

 だがな…… 甘くねぇ」

 組長が言ったが、味など分からないのだろう。

 それならあんな高い豆使わなくていいなと思った。

 組長は、砂糖入れの蓋を開けて、コーヒーカップに一杯、二杯と入れていく。


「フフフ、オメー、覚えとけよ、コーヒーは、甘くなくちゃいけねぇぞ」

 味音痴の組長が、コーヒーを飲む。


 組長が、首をかしげた。


「あれ? 甘くなんねーぞ」

 そう言って、どんどん砂糖を追加して飲んでいた。


 どうした? なんか、だんだん組長の目が……


「あ、まく、な、らないろ?」

 組長? 呂律が怪しく……


 あぁ、組長よだれが、よだれが駄々漏れです!


「さろう、が、たりらいのか」

 は? 組長なに言ってるか、ちょっと……


 俺とヤスは、明らかに様子がおかしい組長をみて、どうしたら良いかわからない。

 逃げるわけにもいかないしな。

 戻ってきた若頭が、様子のおかしい組長を見て傍に転がっている砂糖入れを手に取った。

 中に指を入れて、指先に着いた砂糖を舌先にのせる。


「……こ、これは!」

 睨まれる俺達。

 あの、何か?


 それから、死ぬほど殴られた。



 ヤスが用意したのは、砂糖では無かったらしい。

 捕まる方の白い粉だったそうだ。



そして、現在ーー


 俺とヤスは、敵対する組織の組長を殺す任務を受けてビルの影から様子を伺っている。

 鉄砲玉って、やつだ。

 一度撃ったら戻ってこれない鉄砲玉。

 まっ、最後ぐらい組に貢献して死ねって言う事らしい。


 ビルの前には、黒塗りの高級車が停車している。


 ターゲットが、このビルのクラブに入ってから結構時間がたったし、そろそろか?


 雨が降ってて寒い。


「ヤス、寒いな?」

 返事がない。

「ヤス?」

 俺が振り返ると、ヤスが、立ちションしてた。

「バカ、早くしろ!」

 俺は、小声で言った。


「兄貴、すいやせん」

 ヤスが戻ってきた。

「ドスを用意しとけ」

 俺は、ビルの入り口をみながら言った。

「へい、兄貴ちゃーんと、ここに、ここ、あれ?」

 ヤスは、腹巻きに入れたハズの持ってきた物をさわりながら、……何を焦ってるんだ?

「あ、兄貴……」


 ビルからターゲットが出てくるのが見えた!


「行くぞ!」

 俺は、ジャケットにドスを隠してターゲットめがけて走る!

バシャバシャ!

 当然、黒服の奴等が行く手を阻もうと俺に向かってくるが、ターゲットは、すぐそこだ!


ガッ!


 横から、現れた黒服! 店から出てきたのか?

 俺は突き飛ばされ、止められた!

 だが、想定の範囲内!

「行けヤス!」

 俺の後ろをぴったりついて走っていたヤスが、俺と、黒服の上を回転して飛び越える。

 ヤスはバカだが、アホみたいに身体能力が高いぜ!

 そのまま、ターゲットの前にヤスが立つ。

 そして、その手にしたテレビのリモコンで、ターゲットを始末し


「リモコン!」


 なんで?

 なんでだ?

 意味が……


「死ね!」

 ヤスがリモコンで敵対組織の組長をぶん殴る。

 いや、死なないだろ!

バキィーー!

 リモコンがぶっ壊れた。


 ターゲットが頭を押さえて倒れこむ。


 テレビ前のテーブルに並んで置いたドスとリモコン。

 間違えて、リモコンを腹巻きに入れてきてしまった事を、ヤスは後悔したが、一か八かで行ったのだ。


パン! パン! パン!


 ヤスが撃たれた。


 リモコンでも、結構効いてるみたいだな。

 でも、殺せなかったな。

 ターゲットがじたばたしてる。


 俺は、身体中を刺されながらその様子をみていた。


 ヤスは…… もうダメだろう。


 俺も…… 意識が……


 そして、俺達は死んだ。



 世界が真っ暗だ。


 俺は、落ちているのか?

 死後の世界って奴に向かっているのだろうか?


 わからない。


 ん?


「…にき……」

「兄貴、お……」

「兄貴、起きるっす!」


 声? ヤスなのか?


「はっ!」

 気がついた俺は、刺された時と同じ姿で倒れていた。


 アスファルト…… じゃない?

 土と草の臭い。


 体を起こすと、周りには木々が生い茂っていた。


「兄貴、ここどこっすか?」


 ヤスが、頭を掻きながら聞いてきた。

 お前、頭、撃たれて……

「生きていたのか?」

 俺は、涙が出た。


「兄貴、どっか痛いんすか?」

 ヤスが、泣いてる俺を心配して言ってくれる。

 優しいやつなんだよ、こいつは。

 ん?

 何?

 くれるの?

 何かフルーツのような物を渡された。


カプッ


「甘いな」

 俺は、一口食べて言った。

「どうした? これ?」

 ヤスに聞くと、無言で指を差してる。

 その指の先をみると、赤や黄色の斑模様をしたデカイキノコみたいのがあって、千切った後が残ってる。


 俺は、手にしていた、それをポトリと落とす。


「おい、そんなもん食って大丈夫なのかよ?」

 ヤスに聞いてみた。

「いや、わかんないっす」

 ふざけんじゃねーよ!

 俺は、喉に手を突っ込んで、さっき口にしたそれを吐いた。

「大丈夫っすか?」

 ゲー、ゲー、言ってる俺に、ヤスが聞いてきた。

 いや、喧嘩うってんのか、お前!



 俺は、すっかり、吐き終わって、辺りを見渡す。

 ホントに、どこだここ?


「兄貴ー! あっちで、襲われてる!」

 ヤスの声が聞こえた。

 てか、なんで一人でどこでも行くの?


 俺は、ヤスの声がした方に走っていくと、ヤスが、誰かと揉めている。

 揉め事はヤメテと思いながら、駆け寄る。

 なんだ? アレ?


 コスプレ外国人と、緑色した……ゴブリン?


? ? ?


 何これ?


「何でコイツいじめるっすか!」

 ヤスが、外国人に言った。

「なぜ止める! コイツは、ゴフリンだぞ!」

 外国人が答えた。

 日本語上手いね。

 あれか、アニメ好きで日本語覚えて、来日したとかのパターン?

 しかし、レベル高いコスプレだな。

 俺は、ゴフリンのマスクを抓った。


 あれ?


「おい、ヤス、コイツ」

 ヤスの方をみると、ヤスが外国人をのしていた。


「ヤス、堅気に手ぇ出したらダメだ、つったろう」

 俺は、ヤスの頭をこずいた。

「すいやせん、兄貴」

 ヤスが、やっちゃったみたいな顔をしていた。


「あ、あの、助けていただいて、ありがとうございます」

 ゴブリンが、お礼を言ってきた。

 コイツも日本語上手いな。

 俺は、改めてゴブリンを見ると、ちっちゃなメスのゴブリンだった。

「いや、気にしないでいいよ」

 俺が言うと、メス ゴブリンがヤスに近づいていく。

「なんだ、お前、緑色で、気持ちワリーな」

 ヤスが言った。


 メス ゴブリンが気持ち悪いと言われて、固まっている。


「なぁ、ここどこだ?」

 俺が、固まったままのメス ゴブリンに言うと、

「は? 森、ですけど」

 だって。

 そりゃ、見りゃわかるよ。

「兄貴、森を知らないっすか?」

 ヤス……、この野郎。


「…ゴ、ゴフリンの言葉が、わかるのか?」

 倒れていた、コスプレ外国人が言った。

 何を言ってる?

 お前ら、日本語しゃべってんじゃねーか。

 いちゃもんつけてんだな。

 はい、無視です。


 俺達は森を歩いている。

 メス ゴブリンが、助けたお礼に集落に案内してくれるそうだ。


「おい、ゴブ名前は?」

「名前は、ないです」

 俺の問いにメス ゴブリンが答えた。

「オメー、名前ないのか? じゃ、緑だから、ミドリな」

 ヤスが、安直な名前をつけたが、メス ゴブリン改めミドリが喜んでいるので、良かったんだろうと思った。


「いいか、このお方が、俺の兄貴分の藤沢さんだ、くれぐれも、失礼の無いように!」

 ヤスが、ミドリに俺を紹介してくれた。

「わかりました、ヤス兄貴」

 ミドリの奴、だいぶヤスになついているな。

 俺は、なんだかほっこりした。

「よし! お前を、藤沢組の構成員見習いにしてやる。

 俺のような立派な極道を目指すように!」


ブフォ!

 俺は、吹き出した。


 藤沢組……

 チンピラだった俺が、組長に……

 この世界で極道として、成り上がるのも有りか?

 俺は、思った。


「しっかし、ここ、どこなんすかねー?」

 ヤスが俺に聞いてきた。

 まだ、気づかないのか仕方ねーな。


「ここは、異世界だ!」

 俺は、ミドリを見て疑念が確信に変わっていたのだ。

 物知りだからな、俺は。

「ほう、ここは、異世界って国なんですね?」

 ヤスの理解がちょっと、おかしい。

 まぁ、ヤスは残念な子だから気にした方が負けだ。


 そうこう言ってる内に、ミドリの仲間のゴブリン集落に到着した。


 粗末な建物。


 原始的な生活。


 俺は、都会生まれの都会育ちなので、やっていけるか?

 もの凄く不安になる。

 お前もそうだろう、ヤス。

 あれ、ヤス?

 ヤスも、ミドリもいない。

 やめてよ、もう。

 俺は、タバコを取り出しくわえる。

 カートンで買った時にもらったライターをポケットから取り出した。

 ゴブリンの男が、その様子をじっと見ている。


シュボッ!

 ライターでタバコに火を着けた。

「なっ!」

 横にいたゴブリンの男が驚いて声をあげる。

「わっ」

 俺は、その声に驚き、タバコを落としそうになった。

 ゴブリンの男が俺に近づいてくる。

「え? なに?」

 自慢じゃないが、俺は、喧嘩弱いぞ。

「あなたは、魔法使いですか?」

 ゴブリンがキラキラした目で言ってきた。

 何を言って…

「いや、単なるライターだから」

「らいたあ」

 ゴブリンがキョトンとしている。


「はっ!」


シュボ


 俺は、ゴブリンの目の前でライターをつけて見せる。

 ゴブリンは、目を見開いてライターの火をじっと見ている。

 そして、火にさわった。

「熱っ!」

 ゴブリンが、火に触れた指をすぐにひいた。

 そりゃ、火は熱いでしょ?

「す、すごい」

 ゴブリンは、俺を尊敬の目でみてくれた。

 初めてだ。

 生まれて、初めてそんな目で見られた。

 ヤクザ者だぞ? 俺?


「なにやってんすか?」

 ヤスが、戻ってきたようだ。

 俺は、ヤスを見る。

 ヤスと、ミドリと、ジジィゴブリンがいた。


「ヤス、一人で行くな。 不安になる」

 ヤスに注意する。

 ジジィゴブリンが、俺に近寄ってきた。

 なんなの?

「フジサワ兄貴、仲間を助けていただいて、ありがとうございますじゃ」

 ジジィゴブリンが頭を下げる。

 あんた誰?

「あぁ、ミドリを外人から助けた事?

 そんなの気にしないでいいよ。

 そこのヤスが勝手にやったことですから」

 俺は何もしていないので、お礼を言われても困る。

「いや、名前までつけていただいたようで、ワシも、ヤス兄貴から、ミドジと言う、立派な名前をいただきました」

 ジジィゴブリン改めミドジが言った。

 どうせ、緑色のジジィだから、ミドジだろ?


「兄貴、緑色のジジィだから、ミドジにしやした」

 ヤスが言ったが、やっぱりか。


「フジサワ兄貴、よろしくお願いします」

 ミドジ?

「はあ? こちらこそ、よろしくお願いします」

 俺は、よくわからないが挨拶した。


「ささ、あちらに、宴の準備をさせておりますので、どうぞ」

 宴? 意味がさっぱり。

 とにかくミドジから、ついてくるよう促された。


 広場に通されて、ゴブリン達の前に向かい合う形で座らされた。

 そこでミドジが、俺とヤスを紹介してくれる。

 ミドリを救ったとか、名前をつけてくれたとか言ってるな。

 俺は、適当に聞いている。

 もう、何がなんだか……

 ヤスは、目の前の食べ物をすでに食べ始めてるし。

 ミドジの話が終わって、みんな食べ始めたので、俺も食べ始める。

 乾杯! とか、無いんだと思った。


 なんか、よくわからない酒と、木の実や、何かの肉とか、イロイロ出してくれた。

 味は、素材の味や、薄い塩気のあるような感じで、旨くはないけど、腹は満たされるな。

 酔いもまわって、良い気持ちだ。

 異世界も、のんびりしていて良いかもな。

 酒を傾けながら俺は、そんな風に思った。


「フジサワ兄貴」

「あー、お前、さっきの奴か」

 ライターの火を見て驚いてたゴブリンが、酒を注ぎにきた。

「ところで、みんな、なんで俺を兄貴って、呼ぶの?」

 俺が聞くと、さっきミドジがこの村の住人は、藤沢組の構成員になると言ったって教えてくれた。

 そうなのか。


「なんでっ!」


「おい! ヤス、ここの奴等、藤沢組って」

「あー、兄貴、ここの奴等、守ってやるから、みかじめ払えって言ったら金がないって言うから……

 無一文で可哀想なので、藤沢組に入れてやりやした」

「……お前」

「いや、冒険者って組の奴等が、ここの奴等いじめてるらしいんすよ、だからナメられないように組をでかくしました」

 だめだ、何を言っているか、さっぱりわからん。

 だからって、何が?!

 用心棒になるって事?

 そもそも、なんでコイツ等も了承してるの?

 わからん。

 ……もう、疲れた。


 しかし、この酒、強いな。

 眠い。

 俺は、意識が遠退いていく……



 目が覚めると、小屋の中で寝ていた。

「あつっ」

 完全なる二日酔いだ。


「フジサワ兄貴、起きました?」

 目を覚ました俺をみて、女が言った。

 なんだ? こんなおっぱいデカイ女いたっけ?


「今、ミドジ呼んで来ますね」

 言って、女が小屋を出ていく。

 起きよう。

 小屋を出た。


 ガタイの良い奴が、俺に近寄って来る。

 怖っ……


「フジサワ兄貴、昨日は、突然倒れられて驚きましたぞ」

 ガタイが良い奴が俺に言った。


 誰?


「はぁ、すんません」

 こえーよ!

 俺は、ムキムキゴブリンから目をそらしながら言った。


「ミドリ、フジサワ兄貴に水をもってきてあげなさい」

 ムキムキゴブリンが言ったら、おっぱいがデカくてスタイルの良い女ゴブリンが返事した。

「ミドリ…… なのか?」

 ミドリが、姿が変わってエロい見た目の女に変わったんだ。


「ボフゥ!」

 俺は、変な声をだした。

 えぇーー!

 すると、お前は?

「ミドジか?」

 俺の問いかけに、ムキムキゴブリンがキョトンとして、

「はぁ、そうですが?」

 だと。


 はぁ?

 アレか?

 上位が下位の者に名前つけたら、能力アップ的な奴か? そうなのか?

 これが、俺の力……

 俺は、自身の能力に驚愕した。


 ……あれ、俺は名前つけて無いよな?


「兄貴ー! 起きたんすかー」

 ヤスが歩いてくる。


 お前か!


 俺はヤスを見た。

 どこも、おかしい所は無さそうだ。

 昨日の、俺が思わせぶりに気を失ったのは、なんだったんだ!


「ミドジ、朝の狩りで、アイツ仕留めたぞ」

 ヤスの後ろにゴブリンの若者がデカイ猪を運んできた。

 お前は、なんでそんな馴染んでるの?


「さすが、ヤス兄貴」

 ミドジがヤスの仕留めた猪を眺めながら言った。


「フジサワ兄貴ー、水です」

 おっぱいをぶるんぶるんさせながら、ミドリが水をもってきてくれた。

 濁った汚い水で、飲む気が……


「あれ、兄貴、飲まないんすか?」

 ヤスが言ったので、水を渡してやる。

 ゴクゴク飲んでるし!

 腹壊すぞ。

 スゲーなお前…

 俺は、普通に水を飲み干したヤスをみて思った。


「冒険者がやってきたぞー!」

 遠くから声が聞こえた。

 次は何?

 俺は、嫌な予感しかしない。

「兄貴! さっそく出入りっすね!」

 ヤスが俺の手を取って走り出す。

 ヤメテ。

 そう思ったのに!


 なんか、集落の入り口に数人の武装外国人がいた。

 どうか、穏便に。

 俺はヤクザだが、お茶くみ集金、掃除とかしかやった事ないんです。

 美味しい思いだってしたことないんです。

 うだつの上がらない、チンピラなんです。

 異世界は、キャッキャウフフのハーレムチートじゃないの?

 そう思って、ここに立っているのが嫌で嫌でしょうがなかった。


「あの、何か用ですか?」

 俺は、外国人の人達に聞いた。


「なぜ、人間が、ゴブリンの巣にいる? 貴様は、何者だ?」

 スゲー剣幕で、言われた。

 てか、質問に質問で答えんな!


「お前ら! ここが、藤島組のシマとわかってカチコミかけてんすか?」

 ヤスが、煽るような事を……ヤメテね。


「貴様らは、ゴブリンの仲間だな! 容赦はしねぇ」

 武装外国人が武器を構えた。


 チッ、しゃーねーか。


 藤沢の目付きが変わる。

「ミドジ! 戦える者を集めろ! ミドリは、女子供を避難させろ!」

 俺は、二人に指示を出す。

 素早く行動を開始する二人。


「ここは、藤島組のシマ。 俺は、藤島組 組長 藤島 博志だ!」

 俺は、大きな声で言った。

 もう、なるようになれ!


 外国人達は、キョトンとしている。

 なぜなら、意味がわからないから。

 そうだろうね!


「かまわねぇ、テメーら、たかがゴブリン! やっちまえ」

 そう言って、攻めてきた。

 まだ、こっちの用意が出来てないのにズルイ!

 とりあえず、ドスを構える。

 そして、

「行けヤス! やっちまえ」

 俺は、華麗に命令する。

「へい! 兄貴」

 ヤスが、外国人武装勢力に駆けていく!


バス!

ドス!

ガス!


 スゲー、スゲー! ヤスが、どんどん外国人をのしていく。

 俺は、その都度、せっせと倒れた奴から武器を奪う。

 そして、続々やってくるゴブリンの方に武器を投げ渡す。

 そんなんを何回か繰り返せば、ほら、俺達の勝ちだ。

 元々、少数でカチコミかけたお前らがバカだったな。

 冒険者達が、逃げていった。


 勝った! 俺たちの勝利が決まった!

 ゴブリン達が、勝利の雄叫びをあげた。

 その日、ヤスに住人のゴブリン全てに名前をつけさせた。

 これで、戦力アップになって俺の危険が減る。


 藤沢組、本日より活動開始!


 組長 藤沢 博志


  若頭 ヤス


  若頭補佐 ミドジ


  若頭補佐 ミドリ


  構成員 ゴブリン集落の住民


 総勢 40名(子供と老人を含)


 俺は、組員の生活の為、これからどうするか頭を悩ませる。

 単なるチンピラだった俺が、組長になったのだからな。

 ヤスに名前つけさせると、戦力アップに女もエロい体になる。

 たまらん!

 たまらんぞ!

 異世界最高だぜ!

 ってか、極道って何すりゃ良いんだ?

 俺は、威張って、上手いもの食って、良い女とヤりたくてヤクザになったが、仕事もお手伝い的な事しかしてないから分からないよ!

 理想と、かけ離れた慎ましい生活だったんだから知る訳ねーよ!

 とりあえず、コイツらを豊かな文化的な生活をさせる事を目標に頑張ろう。


 そんで、行く行くは、ハーレムチートでウヒョヒョヒョ!


 甘い考えの藤沢が高笑いする声が集落に響き渡るのだった。


 一度死んだ彼らなら、この異世界でも、たくましく生きていくのだろう。

 彼らの冒険は続く。

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