第44話~意地悪な娘~

会議室に残された2人は食事の時間も近かったのでここの食堂に食事に行く事にした。



食堂に着くと周りの目線が気になった、注文が終わると士官らしい男共が片山雪に挨拶を名目に列を作ってしまった。


美由紀は話相手を取られ、机に肘を突き手に顎を乗せてストロー銜えながらいじけた声で


「まぁー確かに背は抜かれ、綺麗になったし、出る所出てるし、しかも支部長の看板まで・・」


最後の挨拶が終わったところで雪が笑いながら世紀末爆弾発言を美由紀にした。


「えー美由紀なんて2年後にはママじゃない、私もいい人いないかなぁー」


「2年後にはママ」と言われ美由紀は口にしたストローを噴き飛ばし慌てて拾った。


「何それ」


「え?とめさんから聞いてないの?」


雪はそう言いながらやばいと言う顔をした。


「うん、聞いてない・・どういう事?」


「こう言う事」


美由紀の後ろからまた懐かしい声が聞こえ、振り向くとそこには何故か4年前と変わらぬ姿の希望が立っていて美由紀の横に座った。


「久し振りね・・元気なママ」


「ま、ま、ママ?え?何それ?生んだ記憶ないし、意味わかんないし」


慌て取り乱した美由紀を見ながら意地悪な笑みをこぼしながら希望は話だした。


「でね私が未来から来た証明をするのにDNA検査やら身元調査やら、色々と改ざんしてたのばれちゃたけど、とめさんに話したらアドバイスしてくれてね、結局未来のテクノロジーで認めさせたけど」


話を聞き終わる頃には放心状態に美由紀はなっていた。


「私が来年結婚して・・2年後に娘を産んで・・その娘が希望ちゃんで・・私まだ16だし・・そもそも彼氏がいないし・・」


「まぁそう言う事だから、受け入れるの大変そうだけど、よろしくねママ」


希望はそう言うととめさんからと指令書を出し、3人で行ってこいって言ってたと言い残し食堂から出て行ってしまった。


指令書には北海道の北にある場所で目撃情報があったので、至急向かって対処する様にと書かれていた。



数時間の現実逃避を終え、何も聞かなかった事にした美由紀は指定された場所に行った、IDを確認されパラシュートとヘルメットを付けられ滑走路の脇まで連れていかれ1人置いていかれた。


「ここって離着陸するところで普通の人が入っちゃいけない場所じゃない?」


美由紀の前を戦闘機が何機か通ったところで雪からルナ間通信が入る。


「もうちょいで降りるから待ってて」


降りる?と言われ何となく空を見上げた時「あれ」が降りて着た。


目の前にさっき通った戦闘機と同じ位の大きさの透明な姿のドラゴンがいて、その中に雪と希望が乗っていた。


「美由紀お待たせ」とルナ間通信が入ったが美由紀は


「何これ?どうやって飛ぶの?こんなのが地球に何であるの?・・」と質問攻めをした。


雪が困ってると希望からのルナ間通信が入った。


「ママ、後ろ痞えてるから」


言われた美由紀がこのドラゴンの後ろを見ると戦闘機が数機パッシングをしていた。


美由紀はドアらしき扉が開きそこから慌てて乗り込み近くにあった椅子に座った。


「飛行許可取ったし、じゃー行くよー」雪がそう言うとこの透明なドラゴンが飛び立ち、あっという間に飛び去った場所が見えなくなった。


上昇している時に美由紀は雪に聞いた。


「もしかしてこれで来たの?」


「うん、美由紀が戻ったって聞いて嬉しくて、つい飛行許可取るの忘れて飛んだら途中戦闘機に追われて、でも雪のテクについて来れる戦闘機は日本にはないよ」


そうじゃなくてって突っ込みたかった美由紀だった。


「これでカレー買って来たの?」


「うん、停める所無くて大変だったけど、近くのデパートの屋上駐車場を緊急って言って借りちゃったから、少し時間が掛かって冷めちゃったけど今度暖かいのご馳走するから許して」


美由紀はとても嬉しそうに答える雪に「嬉しいけど無茶は駄目」って言えなかった。



この乗り物は「竜機」と呼ばれ、操縦席1名と後部に3人乗れ魔力で飛び、東京本部から札幌の支社まで30分程度で着くと説明された。



「私のいない間に地球のテクノロジーは進化したんだ、凄い」


美由紀がそう言うと操縦席にいた雪が指で頬を掻きながら


「これは希望さんが持ち込んだ例の技術で・・」


「そう・・これはパパが未来で作った物」


希望が竜機内の壁を触りながら言った。


「パパ」と聞いた美由紀はもじもじし始め小さな声で。


「ねー希望ちゃん、あのね・・聞いていいのかわからないけど」


希望は急にもじもじ始めた美由紀を見ながら「何?」と答えた。


「そのね・・希望ちゃんのパパって事は・・私の旦那さんになる人で・・」


希望は物心付いた時にはいなかった過去ではあるが母親が今ここにいて、何となく「今」意地悪をしたくなり「そうよ」とだけ答えた。


そう言われた美由紀は下を向きもじもじモードのままで少し大きな声で


「そうじゃなくて・・パパってどんな人なのかなって」


頭から湯気を出しながら耳を真っ赤にしている美由紀を見た希望はゆっくりとこう言った。


「そうね・・な・い・しょ」


操縦席からクスクス笑いを堪えながら雪が。


「希望さん、美由紀さんが可愛そう」


美由紀は真っ赤な顔を上げて希望に猛烈に抗議した、それを見た希望は手で制し全部話すのはパパに悪いからと言い竜機内から見える遠くの空を見ながらゆっくりと思い出すかの様に。


「そうね・・とても優しくて・・私を大事に育てくれて・・何よりママを心から愛してたわ」


「愛してる」と聞いた美由紀は顔面から火山の大噴火をしていた。


「雪ちゃん、この辺暑くない、エアコン効いてる?」


と恥ずかしさを隠そうとする美由紀に片山雪はお腹がよじり切れそうな笑いを堪えながら。


「ここは高度3000mで凍る位寒いところですよ」


「ですよねー」と美由紀は言い下を向いてしまった。


そして最高に満足顔の希望がそこにいた。

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