ヘイセイガオワルマエニ
幻典 尋貴
ヘイセイガオワルマエニ
桜の木もいつの間にか緑色に染まっていて、花粉の舞い散る今日
元号が変わるという事で、世間の話題は持ちきり。多分今誰かが大きな事件を起こしたとしても、誰も構わないんじゃないかな。
新しい時代が来る、って言われても、法律や住む環境が変わるわけでも無く、なんかピンと来ない。
「平成最期の〜」なんて言うけれど、結局終わるのは“平成”って元号だけなんだろうな。
いや、確かに人間にとって区切りってのは大切だと思う。何かを成すにも終わらすにも、明確な区切りって物があるとやり易い。
それで僕も中学の時、卒業までに〇〇ちゃんに告白するぞ!なんて思ってたけど、結局他の奴に取られて、僕の計画はポシャった。
結局、勇気が無ければ区切りも意味がない。
だから僕は今、勇気を求めて旅をしている。
世界の何処かにある勇気を求めて!なんて意気込んで家を飛び出して早三日、勇気を見つける前にやる気が無くなりそう。
――おや?
あれは勇気では?
…なんて目に見えるものだったら、探し易いんだろうけど、勇気は目に見えない。
早くドロシーに拾われて、オズの魔法使いの所に行きたい。まぁ、そんな事は起こらないって事も、今歩いているのがエメラルドグリーンの道でないことも知っているけれど。
あ〜あ、どうしてこんな旅に出てしまったのか。財布の中には千六百円。残り少ない。節約しなくちゃ。
時刻の確認ついでにスマートフォンを開く。
『13:30』の表示の下に、書きかけの小説が表示される。
五、六スクロール分書かれた小説の次の段落の部分で、カーソルが虚しくチカチカと点滅している。後一文、たった一文が思い付かない。
この小説は、夢を無くした少年の物語。夢を無くし、自分を失ったと悩む彼は色々な人の影響を受けて、自信を取り戻す。そこまでは良い。だが、彼が何と言って夢がない事を受け入れるのか、それが分からない。
だからこそ何と無く、この小説を書き終わった時に、勇気は見つかる気がしていた。
今まで勇気が出せなかったせいで色々な失敗をしてきた。さっき言った告白の事だってそうだ。
勇気がないと損をするのだと思う。
昔、「ロスタイム・ライフ」って言うドラマがあって、死ぬ直前に人生のロスタイム分だけ生きる事が出来るって設定だったけれど、僕のロスタイムは膨大なものだろうな。
勇気を出せなかった瞬間イコールロスタイムだ。
――それで、僕の考えを聞いて君はどう思う。
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