第6部 理想郷のあれこれ《3》
私は今、お姉さんのお家にお邪魔してます。
昨日は、昼食に “うまうま♪” とお好み焼きを食べたあと、お姉さんに手作りしたプレゼントを渡しに行きましたとも!
お姉さんは “わぁ〜、すごい! グーちゃん天才!” と、まるで親戚のお姉さんのごとく、
“いや〜、それほどでも〜” と言いたいところだけど、前世では友人達に頼まれてさんざんアクセサリーを作ってきたからね。このできで申し訳ないくらいです。
昨日はお姉さんに作っているのを見られないようにお屋敷で作ったけど、今日はお屋敷の皆にプレゼントを作るべく、見つからないようにお姉さんのお家で作らせてもらうのです。
お姉さんは今、ここで一人暮らしをしています。このお家はお姉さんのお母さんの実家だそうで、先々月の三月まではお母さんとお祖父さんとお祖母さんの3人が暮らしていたそうです。
お姉さんのお母さんは都会でお勤めして、そこで結婚して幸せに暮らしてたそうなんだけど、お姉さんが10才の時にお父さんが病気でなくなって、それからはこのお家で4人で暮らしてたんだって。
学校までの交通が不便なこともあって、お姉さんは高校・大学と寮暮らし。卒業後も都会の会社に就職したらしいけど、今年の四月から大手の会社との合併が決まって、お姉さんのしたかった仕事とは少し内容が違ってきたため、三月いっぱいで会社を退職して戻ってきたらしい。
そんな中、お祖父さんとお祖母さんは親友の死をきっかけに、広い世界を少しでも知っておこうと海外移住を決意し、お母さんも一緒に行くことになって、四月の初めに海外に行ってしまったんだって。
私がこっちの世界にきたのは、その後だった。どうりで生活のあとがまだまだあったわけだ。
お姉さんはしばらくゆっくりして、ここでもできる仕事を探そうと思ってるんだって。今は、職場に行かなくてもできる仕事はあるもんね。
お祖父さん達も一生海外にいるつもりはないらしく、この家を手離すことはないらしい。なので今は、お姉さんはこのお家で1人暮らしです。
『グーちゃん、これ美味しいね』
『あい。くっくちょの、ちゅこーん、うまうま、なのでしゅ』
お姉さんのお家で作業をさせてもらうので、手土産に料理長作のスコーンを持ってきました!
うちの料理長が作る料理は何でも美味しいからね! 自慢でしゅ!
さて、今日は昨日と同じく100均で買ってきた物で、お屋敷の皆にロゼットもどきの物を作ります。
私達の住む所は貴族社会なので、功績をあげたり、何かを表彰したりする時は、勲章を授与するらしいです。だから、勲章をもらうのは、私が思う以上に名誉なことらしい。
うちの使用人さん達は皆仕事が素晴らしいので、ありがとうの気持ちを込めて作りますとも!
前世の世界でも、何かしら式典をする時には、記章リボンとか、式典リボンとか言われる物を胸につけてたでしょう。だからね、この世界でも勲章の形に近いロゼットは、売れると思うんだよね。
ロゼットはリボンでも紙でも作れるし、貴族だけでなく、ギルドとか民間でも使えるし。だからこれも、領地を建て直す一つの手段になるかも知れないと思ってる。
さて、今日作るのは2歳児でもできそうなロゼットもどき。
用意する物は、ワンタッチフラワーリボン、花の形のフェルトセット、3色リボン、安全ピン、グルーガンです。
ちなみに、グルーガンはお姉さんから借りました。本当は100均でグルーガンを買いたかったけど、コンセントがないからしかたなくあきらめましたよ。
さて、まずワンタッチフラワーリボンの裏にあるシール部分を全部外します。外した所に3色リボンの中からワンタッチフラワーにあう色を選び適当な長さにカット。
カットしたリボンを二枚ワンタッチフラワーの裏にグルーガンで接着します。グルーガンは先が熱くなるので要注意ですよ! リボンがついたらその上に安全ピンを置いて、安全ピンを使いやすい位置でキープして、花の形のフェルトで安全ピンの下の部分を覆いグルーガンを使って接着したらできあがり。
これ実際には使うより飾りの感じが強い。だって、何回も使うとワンタッチフラワーがつぶれちゃうからね。
お母様、お祖父様、お祖母様にも、大きめのワンタッチフラワーリボンで作りました。
そのほかの使用人達には、小さめのワンタッチフラワーを使った物を用意しました。 グルーガンを使う所はお姉さんに手伝ってもらったけど、けっこういい感じにできたと思う。
『できまちた。』
胸をはって、エヘヘと笑う私に
『グーちゃん、上手! 私も教えて欲しいくらい』
と、お姉さんがパチパチと手を叩きながら言ってくれました。
余ったリボンを見ていると、クーちゃんやニーガ達の飾りも作りたくなりました。
人数分のロゼットもどきを作り終わった私は、今度はハートの色紙を持ってきてお絵描きをしています。母の日のプレゼントに、お母様とお祖母様に渡すのです。
と言っても、そこは2歳の絵。いびつな丸やら三角やら四角やらでお母様とお祖母様の顔を描き、花の絵も描きましたよ。2歳児の絵にしてはよくできてるんじゃないか。ここは自画自賛しておこう。
お姉さんにお世話になりました、の挨拶をしてお屋敷に帰ります。
帰る途中に
“あぁ〜、私の癒し。可愛い”
「お嬢様、どうなさいました」
ちょうど街へ帰る組の、ベトゥーロやアガトやシィリンゴが通りかかったようです。私は手作りしたロゼットもどきを取り出すと、
「いちゅも、てーねーな、おちごちょ、ありあと」
と感謝の気持ちを込めて、それぞれのカラーをイメージしたロゼットもどきを1人1人に手渡しました。皆、大変喜んでくれました。シィリンゴは、涙ながらに受け取ってくれましたよ。
その後、料理長のお家によってノワイエにも渡し、厨房によって厨房組に渡し、夕食前にほかの皆に集まってもらい、ロゼットもどきを手渡しました。
「まさか、このように素晴らしい、お嬢様お手作りの勲章をいただけるとは。使用人
と、トルキーソが珍しく感動したように言ってくれました。
「みんな、おちごちょ、できゆ。てーねー、やさちい。ぐうな、みんな、だいちゅき!」
皆に向かって “大好きー!” の気持ちを込めて両手を広げて言えば、皆が
「お嬢様!!」
と感動したように喜んでくれました。よかったよかった。
そして、もちろんお母様、お祖父様、お祖母様にも渡し、お母様とお祖母様には色紙とカーネーションの造花も一緒に渡しましたよ! もちろん皆喜んでくれました!
「グルナ、お母様を描いてくれたの。とっても上手よ、お母様嬉しいわ。お部屋に飾るわね、ありがとうグルナ」
お母様は私を抱き上げて、ギューしてくれました。私もお母様に抱きついて、ギューしましたとも! お母様、大好きー♪
「まぁまぁ、私まで。お祖母様も嬉しいわ、グルナからプレゼントをもらえるなんて。ありがとう、大切にするわね」
お祖母様も私に両手を差し出してきたので、お母様からお祖母様に抱きついてギューしました。お祖母様にゆらゆらとんとんされたら、すぐ寝ちゃうけどね!
「グルナは器用だな、ありがとう。」
お祖父様は私の頭を撫でながら、ニッコリしていました。大きくなったら綺麗なロゼット作って稼ぐぞー! おー!!
********
次回投稿は12日か13日が目標です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます