第5部 理想郷のお店《1》
「おぉ」
「ふぉ」
思わず、お祖父様と二人、声をあげちゃいましたよ! キャメリア、お口あいてるからね!
目の前では、人が通るたびに自動ドアが開いたり閉まったりしています。100均に行く道すがら、こっちの世界ではお店のドアがかってに開くけど驚かないでね、大声出さないでねって話してたんだけど、久しぶりの自動ドアに、私も思わず声が出ちゃいましたよ!
「本当に、かってにドアが開くのだな。いったいどういう仕組みなのだ」
「こちら、お店なのですよね。お屋敷のように広いです。」
そうね、あちらの世界じゃありえない広さよね。しかも、ここの100均の広いこと。あちらのお店は普通の一軒家の一階がお店だったりするから、この広さにはびっくりして、お口あいちゃうよね!
『じゃ、行きましょうか』
おっと、お姉さんがショッピングカートにカゴを乗せて来てくれました。わぁ〜、久々のショッピングカート。懐かしいですー♪
「なんだい、これは?」
「ちょっぴんぐ、かーと。かっちゃもにょ、のせゆの」
今日は、ずっとお祖父様に抱っこされて移動するんですよ。お祖父様がかってに、どっか行っちゃったりしたら困るからね!
キャメリアはナースメイドだから、たぶん私からは離れない! はず。
四人で入口の前に立つと、自動ドアが開きます。
お祖父様とキャメリアは、初めて見たこちらの世界のお店に、びっくりして固まってます。こんなにたくさんの商品、見たことないもんね!
私は、あぁー前世以来すごーく久しぶりの100均だぁー! と嬉しくて嬉しくて、思わず手をたたいて喜んでしまったよ。
『かーねーちょん』
そう、入ってすぐのコーナーには季節商品がたくさん並んでいます。カーネーションの造花や、カーネーションのイラストつき商品がいっぱいですよ。
キャメリアは造花が珍しいらしく、とても不思議そうに見ています。
「本物の花、ではないのですよね」
「なるほど、作りものの花か」
お祖父様も興味津々です。そうか、もうすぐ母の日なんだ。これは私も、お母様とお祖母様に何かプレゼントしなくては!
私は売り場にあたったカーネーションの造花と、カーネーションのイラストいりのハートの色紙を二セットカゴに入れてもらいました。お母様とお祖母さまに絵を描いて、プレゼントするのですよ♪
「これは」
「おかぁしゃまと、おばぁしゃまに、ぷれじぇんと。おかぁしゃまのひに、ありあとすゆ」
私は、と言うお祖父様に、来月の父の日に、と言うと、こちらの世界には色々な日があるのだねって言ってた。そうね、海の日とか山の日とか、毎月何かしらあるからねー。
次は、と奥を見ると化粧品コーナー! そこにいるものがあります!! でもお祖父様は、通路をはさんで横にあるカントリー雑貨の方へ。
ちーがーうー、そっちじゃなくて奥に行くのー。カントリー雑貨はさらりと見て、化粧品コーナーへ。
『おねえしゃん。まにきゅあ、ぶらち、ぴんちぇっと、ちーゆ、いゆ』
幼児言を聞き取るのは大変ですよね! でも、この不器用な手じゃ取れる気がしない。お姉さん、お願いします!
マニキュア数点とネイル用ブラシとネイルアート用のピンセット、それにネイルシールを数点。これは別に、爪に使う訳じゃないんだよ。
次に、通路をはさんで奥にある手芸コーナーへ! ここが今日のメインですよ。まずUVレジンです。
さらに、ラインストーンやフレークチップ、ドライフラワー。シリコンマットやレジン用のクリーナーもいりますよ。
「いっぱい買うんだね」
「あい。こえで、あくちぇちゃりーつくゆ。うれゆ。」
私は、この小さな胸をふんと張りましたとも!
あちらの世界のアクセサリーは、貴族階級は本物の宝石。市民は貝や木や石、少し裕福な商人達ならばガラス細工などが手に入るだろう。
こちらの世界では100円でも手に入るレジンは、あちらの世界では革命的な商品になる。
モールドを使えば、クリアなレジンの中に花やストーンが入った美しいアクセサリーができ、フレームやセッティング台を使っても、さまざまなパーツを使うことで、中に一つの物語を閉じ込めることができるのだ。そして軽い。
しかも、レジンさえあれば折り紙でもシールでもレースでも、何でもコーティングすることでアクセサリーのパーツになるのだ。色をつけることもできる。前世で、私もよく作ったよ!
レジンのいいところは、太陽光さえあればできるところだ。そりゃUVライトがあれば言うことはないけど、あちらにはコンセントがないからね。
『グーちゃん、どれにする』
グーちゃん。はい、私のことよ! 昨日までグルナちゃんだったけど、今日からグーちゃんに進化したのですー♪ えっ、クーちゃんと似てるって、グーちゃんとクーちゃんコンビになるのさ! じゃなくて、
『ふるーちゅ、ほちぃでしゅ』
フルーツの輪切りシールを指さします。輪切りネックレスと、輪切りイヤリングを作るのですよ。
そして次はアクセサリーパーツです。丸カンやピン、ヒートン、イヤリングやピアス金具などなど。チャームもいるよね。
「わぁ、綺麗です」
キャメリアがビーズを見て呟きました。そうでしょうそうでしょう、100均のビーズは侮れないのですよ。
オーロラ加工されたビーズやガラスビーズ、天然石ビーズにカットビーズ、パールビーズやコットンパール。花や星、ハートなんて形もあります。
テグスや平ヤットコ、丸ヤットコにニッパーも買いましょう。
『あっちゃ!』
そしてそして、レジンと共に今日欲しかった物、それは編み機です! 私は嬉しくて、両手を上げて喜びましたとも♪
100均に編み機があるの、知ってました。冬になると、売り切れてしまうこともあるんですよ!
種類もけっこうあって、マフラーやネックウォーマー、アームウォーマーにクラッチバッグ、編みぐるみまでできちゃいます。
この編み機のいいところは、簡単なところ。編み針を使うよりも簡単なので、子供でも作れるはず。孤児達やお年寄りに色々作ってもらって、バザーで売ってもいいと思うの。
これに、棒針も必要ですね。こちらは本格的に編みものをしたい時用に。
どれもこれも、手作りした物を売って稼ぎたい気持ちもあるけど、領民の皆に綺麗なアクセサリーを着けさせてあげたい。寒い日には、暖かなマフラーやネックウォーマーを使ってもらいたい。それも、できるだけ安い値段で。その気持ちの方が大きいのだ。
そのためにはコーメンツ辺境伯領で、これらの物が作れるようにならなければいけない。毎回こちらに買いに来る訳にはいかないんだから。昨日お祖父様から聞いた錬金術の箱、とりあえずそれに片っ端から入れて、似た物ができるかどうか確認することが大事。
そのためには、たくさんの物を買って帰らなくっちゃ。
「おちいしゃま、これ、かけてみゆ」
私はお祖父様の手をポンポンとたたいて、それを指さします。お祖父様やお祖母様、それにトルキーソ達にも必要だと思うの。これがあれば、きっと皆の仕事がはかどるはず。
「おぉ、これは!」
「みえゆ?」
「あぁ、よく見えるぞ」
そう。それは、老眼鏡ですよ。仕事を頑張ってもらって、領地向上でしゅ!
そのほかにも、折り紙や塗り絵、色鉛筆やクリアファイルなどをカゴに入れました。
お祖父様やキャメリアは、何でも珍しいので各コーナーで立ち止まり、そのたびに私は説明を繰り返しましたとも!
その中でも、二人とも突っ張り棒が気になったようです。確かに、突っ張り棒便利だよね。特に、四人部屋のキャメリアは、いいですねコレ! と言ってた。
そう言えば、工場の窓にもカーテンはなかった。突っ張り棒に、カフェカーテンふうの物をつけたらどうだろうか。私は思わず、一番小さな突っ張り棒をカゴに入れちゃいました 。錬金術の箱に、はいるといいなぁ。
その後、お屋敷の皆へお土産になりそうなものを買って、計103個の購入です。
「これは……」
「れじちゅたー、でしゅ」
「レジスター」
お会計中お祖父様はレジをガン見です。確かに珍しいでしょう、あちらの世界にらないもんね! 私はレジの定員さんに、ニッコリ愛想を振りまき、小さな手で12000円を渡しましたよ♪
レジの定員さんは私が受け取りやすいように、私の両手に丁寧にお釣を乗せくれました。さぁ次はホームセンターです!
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「○○」→異世界語
『○○』→日本語
次回投稿は27日か28日が目標です。
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