鉄砲玉の話

月夜幾多

最後の会話

 ああ、ついに俺の番か。同期はもう既にいっちまった。

 おう、わけぇの。少しの間、愚痴に付き合ってもらうぜ


 俺はお偉いさんぶっ殺して一山あげたくて、この業界に入ったんだ。

 同郷の奴も大勢こっちに流れてな。それが蓋を開けてみたらどうだ、埃まみれの倉庫の中をぐるぐるしてるだけ。ようやく使われると思ったら、隣のタッパがある野郎やった。

 ……知ってるか、俺の故郷からなぁ、相手の親玉をぶっ殺したドスの兄貴が出たんだよ。

 カミソリみてえな奴っていうが 、そんなチャチなもんじゃねぇ。

 兄貴は本当に日本刀みたいな切れるやつだよ。


 あーあ、ドスの兄貴と一緒に戦いたかったぜ。


 ん? 急遽狙い変更? ターゲットは長年対立してきた島田組の組長、島田享司?!

 あの、不死身のか?!

 ドスの兄貴でさえ、殺れなかったという?!

 ──いいねぇ! 最後の最後に運が回って来たぜ!

 チャカと一緒に振り回され続けた一生だったが、悪くなかったぜ。

 ──ふう、最初で最後の一服だ。

 わけぇの、てめぇもいるか?

 まだ早い? ふふ、そうだなその通りだな。

 まだ、煙を出すには早いもんな!

 あばよ、わけぇの。てめぇも頑張りな!


 この日鉄砲玉は発射され、脳天を貫き、不死身の凶を即死させた。

 死体解剖で取り出された弾丸鉄砲玉は全身をグシャグシャにして、笑っているようだったという。


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鉄砲玉の話 月夜幾多 @tuciyoyicut

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