五十四.余談:とある酒造会社の再挑戦

 これは、とある老舗洋酒酒造会社『ウエスト』のお話。

 かつて名ブレンド酒『ヤマト』で一世を風靡したものの、今ではすっかり左前。

 新しい酒も幾つも造ったのですが、「前に飲んだ事ある味だな」って言われてしまったり、売れ行きはさっぱりでした。

 最後に出した新しい酒『復活ヤマト』も今一つで終わり、二代目はヤマトを再びブレイクさせる為に、若いブレンダーを起用しました。


 先代の下でも働いたことのあるこのブレンダーは、最初のブレンド『ヤマト』の革袋に新たな酒を注ぎ足し、雑味や沈殿物を取り除く一方、深夜酒場のお客も呼び込むために蜂蜜も注いで、甘口スッキリの酒を造り上げました。


 新たなブレンド『ヤマト99』は売り上げ好調。しかし二代目はこれに満足しませんでした。かつての『ヤマト』はもっと売れたのです。今だって『巫女の口食み酒』が爆売れしたりしているのです。現代の『ヤマト』だって、これくらい売りたいではありませんか。


 そこで二代目は、新たなブレンダー三人を雇いました。こんどは一番売れた辛口の『さらば』の革袋に、やや甘口の『2』を混ぜて昔のお客を呼び戻し、今のお客を逃がさないために『99』もブレンドし、さらに新しいお客を呼ぶために新味も加えてほしいと頼みました。

 彼らはアメリカの樫の木のフレーバーや、香辛料を加えて新たなブレンド「02」を作り上げました。


 売り出された『02』は、個性が強すぎて好き嫌いが分かれました。悪酔いをする人、むせる人も続出しましたが、売り上げは不思議と『99』よりも良かったので、二代目は更なる『ヤマト』を作り出す事を決めました。


 次の『ヤマト』はどんなものになるでしょう。

 古い革袋に残った昔の名酒に新たな酒を注ぎ足し、元作の客をもっと呼び戻し、『99』と『02』の客を離さず、さらに新しい客を山ほど掴む、そんなお酒を狙うのでしょう。そして目標は、今度こそ『巫女の口食み酒』を超える爆売れ。なんて無茶振りでしょう。そして次なるブレンダーは、いったい誰になるのでしょう。今はただ、明らかにされる日を待つだけです。


1.頂いたコメントからこんな妄想が爆誕しました。ありがとうございます

 そして申し訳ありません(土下座)


2.正直、こんなお酒が有ったら超まずそうw

 これ以上味を足すより、水で割った方がいいかもしれません。


3.ここまで読んでいただいた方はお察しと思いますが。




 作者はお酒に無知です。

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