ゲーム内で死亡不可避の少女と出会う

鬼天竺鼠

0 プロローグ

 漆黒の闇に浮かぶ一つの天体。

 表面には大量の水、そして大陸。人間が生活するのに適した重力、気圧、気候‥‥‥etc。

 しかし、地球ではない。


 天体の大きさは直径約1,500km、多くの人間プレイヤーがこの天体で人生を謳歌おうかする。楽しみ方は人それぞれだ。友達と話す者、任務クエストに挑む者、苦難モンスターに立ち向かい仲間と達成感を分かち合う者もいる。世界は日々、充実感であふれている。

 しかし、現実ではない。




 20XX年、人類はついに夢のVRMMO仮想現実空間を作り上げた。

 発売初日、ヘルメットのような不恰好なヘッドギアに一般庶民では手の出しにくい高額な値段。一部では、売れないのでは? と言った意見もあった。しかし、人々は店の前に長蛇の列を作った。

 今まで見ていた画面の中の世界に自分自身が飛び込むことができる。やはり人間は夢への欲求に抗うことはできなかったのだ。


 VRMMOゲームの発売は世界を変えた。


 アクションゲーム、シューティングゲーム、レーシングゲームなど、様々なゲームが出回り、人々を楽しませた。

 売り手側も、様々な企業がこの競争に介入。ヘッドギアの改良や価格競争、まさに世の中はVRMMO一色となった。


 発売から約3年、衰えを知らなかったVRMMOの開発競争に終止符が打たれることになる。


 ウインブライト社。ずば抜けた天才たちが集まっていることからマギア魔法の異名をも持つその会社は、ついに現実世界と変わらない、いや、それ以上のクオリティをもったゲーム、Space Beyond Reality・通称SBRの開発に成功したのだった。

 SBRの発売は現実世界の存在意義さえ揺るがしかねないほどのものであった。全世界で1億人以上がプレイしていると言われているこのゲーム。いや、ゲームというよりは、『裏世界』と言ってしまった方がしっくりくる。

 SBR内にはほぼ地球と環境が変わらない仮想の天体・イデアステールが存在し、そこで現実世界ではできないような様々なゲームが楽しめるようになっている。

 そしてSBRが発売されて2年半、いまなお人々はSBRに熱中する日々が続く中、裏では一つの大きなプロジェクトが動き出していた。

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