第3話 いきなりピンチなんて聞いてなかったよね
本をしばらく読む。魔法の本に書いてある通りに、手のひらで念じてみたら、手のひらに炎が現れた。
「あっち! まじかよ、本当に魔法だ・・・」
いろいろな魔法を試したが初歩的なものしかできなかった。本には何度も反復することにより新たな魔法を習得する力を得ると書いてある。
得意な属性は覚えやすく苦手な属性は覚えにくいらしいが、俺には全部の属性があるんだよな・・ふふふ
魔法練習が楽しくなってきた。
「エレンさーんいますか~、いいデボアが取れたので持ってきました」
外から声がする。
「エレンおばあちゃーン、遊びにきたよ~」
子供たちの声もする。
だれだろ? きれいな子だ。子供たちを連れていて微笑ましい光景だ、うん。この屋敷に用があるようだ。エレンなんて知らないぞ。俺の名は露木金太郎、この名前で学生時代は苦労した。地元の英雄だからって子供にそんな名前付けないでほしかった。でもそんな両親も事故で亡くなり、爺ちゃんの下で育った俺・・・って! 昔のことで感傷に浸っている場合じゃない、扉をノックする女性、俺はどうすれば? とりあえずでよう・・・
扉をあけると、びっくりする女性。
*「あの? どなたですか? エレンさんのお知り合いですか?」
「いやエレンさんって誰ですか? 私、今日からここに転生しました露木と申します?」
*「ツユキ? そんな・・エレンさんは何処?」
「いや私に聞かれましても・・・エレンさんがどなたか分かりません」
*「私たちの大先生のグラス・クロムウェル様の伴侶のエレンさんよ! あなたいったい? だれ?」
グラス・クロムウェル!?
ああ前任者のお爺さんか!
「あの・・・そのグラスさんが昨日亡くなって、神様から代わりにここに来るように言われたものです」
*「グラス・クロムウェル様が亡くなる? そんなことあるわけないでしょ! あなた悪魔の手先ね! エレンさんを返しなさい! みんな-村長呼んできて!」
美しい女性は後ずさりして、子供たちを逃がすように俺を睨む。
なんかいきなり修羅場なんですが・・・・すぐに屈強な男たちがこの住居を囲んでしまった。
みんな殺気立っている、その数がどんどん増えていく・・・
「悪魔がグラス様の留守にエレンさんを攫ったらしい」
そんなことを言っている。
どうしようか・・・いきなり命のピンチ、たしか人間はこの家に入れる・・・人間に殺されないようにって、もうそのピンチなんだが・・・
「しかしエレンさんだって相当な魔法使いだぞ! そう簡単に悪魔に捕まるか?」
「でもエレンさんはいなく、あの男しか家の中にはいないぞ、やっぱりエレンさんはもう・・・」
「そんなバカな話あるか! なら我々でエレンさんの仇を取ろう!」
「そうだそうだ! この村の住民はグラス様に教えを受けた精鋭だ! みんなでかかれば勝てる!」
こりゃ俺の話なんて聞いてくれないかな・・・・
さて、ネットルームにいこう・・・・
ネットで拡声器をポチっとした。
するとすぐにその商品が隣の空間に現れた。
よし! これなら
すぐに一階に上がる。
住民たちは徐々に近づく。
拡声器のスイッチを入れる
「え~テス テス テス」
*「な!なんだ!? この魔法は・・・声がでかくなっているぞ!」
*「うあ~頭を刺激する音が鳴る! なんだこれは!」
*「俺の頭がおかしくなったのか!? 悪魔の声がする」
住民たちはまた下がりだした。今度は弓を構え狙っている。
「住民の皆さま聞こえますか?」
*「なんだ? 悪の魔術師よ! 私は村長のザック・ボルスだ。エレンさんをどうした?」
「え~村長のザックさんですね・・・え~と私は神よりグラスさんに代わってこの町を守るようにつかわされた者です」
*「そんなの、グラスさんとエレンさんがいれば必要ない、お主は悪魔の手先か?」
「いえ!聞いてください! グラス・クロムウェルさんは先日に魔王との闘いで敗れ命を落としたそうです・・。
信じられないかもしれませんが本当です、エレンさんというのはグラスさんの伴侶のかたですか?」
*「そうだ! グラス様と共に数千年この世界を守る大魔法使いのエレンさんだ」
「え~と、グラスさんは私と同じように神の使徒でした。神の使徒が死ぬとその伴侶もこの世界から消えてしまうと神から言われました・・・本当なんです。信じてください」
俺は半ば泣きながら訴える。
*「そんなはずは!? グラスさんが魔王に負けるはずは・・・グラスさんは数千年魔王と戦いつつけたお人だぞ。
たしかに、私が死ねば代わりの者が来るとは言ったが、そんなの信じられるわけがない!
わしの爺さんも父さんもグラス様の世話になったんだ、この町はグラス様と共にある街なんだ。
グラス様はわしらにとって神だ・・・それ以上の存在だ、死ぬなんてあるわけがない」
その時、丘の下の方で騒ぎが起こり始めた。
*「大変だ! 魔物が攻めてきたぞ! ものすごい数だ」
魔物? また悪いタイミングで……
*「貴様~やはり悪魔の手下だな! エレンさんをよくも・・・・男ども何人かは魔物に向かえ! 残りはこの男を始末するのを手伝え」
「おおお!」
住民たちが再び近づく・・・
「あ~じゃあ、その魔物を俺が倒します! それじゃだめですか?」
*「そうやって逃げる気だな?」
「ではそう判断したら魔物ごと俺を殺せばいいじゃないですか! どうせ一度死んだ身です、それに僕が死んだらまたここに新しい人が送り込まれます。是非その人は信じてあげてください」
女は気付いた!
グラス様が危険な仕事に一人で向かう時に言う言葉
「どうせ一度死んだ身じゃ、怖くはないよ。わしの代わりはすぐに現れる」
「ザックさんこの人本当のこと言っているのかも・・・」
*「なにを言っているんだ! ジェニファー、そんな言葉に騙されてはいかん!」
「うんうん違うの! あの人が悪魔だったらもう私は死んでるはずよ・・・私は処女で悪魔に真っ先に狙われる存在、でもあの人は私を襲うどころかずっとあの場所で話しているだけ・・・」
*「う~ん、それもある..それにエレンさんを倒すほどの悪魔ならわしらが束になっても敵わないだろう・・・」
*「おい! 男! では今、村を襲っている魔物を退治してみろ、話はそれからだ・・」
「待っててください! 武器をとってきます、すぐに行きます」
ネット部屋に急ぐ。
武器…
真っ先に日本刀が出た。
すかさず、ポチった。
それと・・・AK47 こんなのも買えるのか!? 7.62mm×39mm弾まで、
これもポチった。
すぐに商品が現れた・・・
刀をベルトにさし、AKとたくさんの弾装をもって家を飛びだした。
「魔物の所に案内してください!」
丘をかけ下り街に入ると、街内では人々が逃げ惑っている。そしてその先に、いた!
目の前に数人の男が戦っているが大きな魔物に一撃で吹き飛んだ・・上半身だけが・・それを見て隣の男は逃げだそうとするが、他の魔物に食いつかれてすぐに動かなくなった、俺は構わずにAK47をぶっ放す。
うぉーーーーー
魔物はびっくりした形相でこっちをみる。
死なないの?
怒りの形相で魔物がこっちに襲いかかってきた。
「人間よ、グラスは死んだぞ、ははは、グラスの町の人間など皆食ってやる、ははは」
どうやら銃はあまり効かないようだ。
ならば刀を取り出し切りかかる、スパッと魔物は切れた! この刀すげえ! って俺の身体能力すげえな
今3メートルくらい飛んだぞ! すぐに刀でその隣の魔物を切る、蛙をでかくしたような魔物だ。
魔物は切られると光となって消える、魔物の胃袋から人間の破片があふれ出てた・・・
当然生気はない・・・ナンマイダブ・・・
次の魔物を探すと、女性の悲鳴が聞こえる。逃げ惑う人々を大きな犬? 狼? が襲っている。
俺はまた飛び出し、先頭の犬を切りつけた。犬はキャンキャン言いながら光と消えた。犬たちは俺を囲み一斉に襲ってきた。
ジャンプしてそれをかわすと、犬たちはお互いにお互いを噛む格好になった。俺はジャンプしながら犬の首を切り落とす、そして、そのまま他の犬に薙ぎ払うと、数匹の犬が光となって消えた。
まだ犬はたくさんいて、さらに犬は襲いかかってくる。この犬は小さい傷でもダメージがあるようだな…
剣で切りつけるが犬の数は減らないため、再びAK47を構える。弾装を交換してフルバーストで犬に撃ちまくる。
犬たちはキャンキャン言いながら倒れ、光と消えていく。
弾装を交換すること3回、100発近い弾を撃ち終わったころ犬たちは皆、消えた。
悲鳴を上げていた女は、唖然とその様子を見ていた。
まだ他にもいそうだ。
再び剣に持ち替え魔物を探す。この町の男たちも強いようで、魔物たちを食い止め切り刻んでいる。
俺も次々と戦線に参加し魔物を倒した。
さほど強いのはでてこない。最初に戦ったのがボスだったのか?
いやこういう動物はボスがやられれば逃げるはずだから、ボスがいるはずだ。
「ブライドボアが出たぞ~逃げろ」
ブライドボア? 知らないが、逃げるくらい強いってことか? それがボスか!
しばらく走る、走りながらも魔物を殺しまくった。
これが30代最高の身体能力か。全然疲れないし、それにこの剣も凄くて刃こぼれひとつない。
しばらく走ると、屈強な町の男が数人で取り囲み、大きな熊のようなものと戦っていた。
しかし熊の口には首のない男、周囲には明らかに死んでいる男が複数横たわり、立ちはだかる男たちにも悲壮感が漂っている。
「俺が行く!」
男たちが俺をみた。
「誰だお前は!? 死ぬぞ!」
男の一人が叫ぶ。
「死ぬのは一回経験してるよ!」
とりあえず言葉を返してみた。
「周りの小物を頼みます! こいつは俺が!」
刀を大きな熊に振るって熊の右腕を切り落とした。
怒り狂った熊は、左手で俺を攻撃する。
これはやばいとしゃがんで躱したら、俺の後ろにいた男の首が吹っ飛ぶ。だから近くにいるなって言ってるのに・・・
いやこいつのリーチも長いんだ・・・・
グァ~アアアアアアア!!!!
熊は怒りくるって、どんどん攻撃してくる。
「ぎざま! グラスではないよな! グラスは死んだはずだ!
この町にはグラスもエレンもいないはずだ、なぜお前のようなものがいる、なぜだ!」
「交代したからですよ! グラスさんもエレンさんも天国で安らかにしてますよ!」
熊の隙をついて足を切り取った熊は動けなくなり横たわったので、飛び上がって熊の首に切りつけた。
ぐぁああああああああ
熊の首は断末魔の悲鳴を上げてやがて体と共に光と消え 周りにいた魔物が逃げ出した。
ふぅ・・・・終わったようだ。
初めての仕事完了。しかしAK47は最高の武器だと思ったけど効く相手、効かない相手がいるな。それにこの刀、ただの日本刀じゃないな、調べてみよう。
周りでは、村人たちが俺に対し礼をしていた。
俺が本物ということは、今まで神と思っていた人が死んだというわけで、それはそれで悲しいことだろう。
村人たちは、俺に謝りながらグラスさんが死んだということを受け入れなければいけなかった。
そして、今回の魔物の襲撃で多くの村人が死んだようだ…
次の日は村人の葬儀。
そして、その次の日はグラスさんとエレンさんの葬儀が行われた。
その喪は1週間続いた。俺はその間に勉強をしながら、村人が家に来ていろいろな話をしていった。
俺が使わなそうなグラスさんたちの日用品は形見分けとして村人たちに渡した、村人たちは涙を流してそれを受け取った。
前任者は愛されていたようだ、俺もこんな風に愛されるのだろうか・・・・
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