彼女の好感度は100なのに、告白成功指数は0の件
刹那理人
第一章
第1話 青春の一ページ目
突然だが、俺、
――
坂宮はいつも俺に話し掛けられるときは、素っ気ない返事しかしない癖に、他人から話し掛けられると笑顔で話を繋げる。
それ
要は、俺の恋愛状況は最悪である。
絶対坂宮に嫌われている。話してもらえないぐらい嫌われちゃっている!
「はあ、もう今日は寝よ」
そんな絶望感に浸って、俺は今日もベッドへとダイブした。現実が駄目ならば、夢の世界へと逃げればいい。そんな甘い考えが俺の脳を支配している。
そして、そのまま俺の瞳から光は消え、意識を失った。
「結翔! 結翔起きなさい! ご飯よ」
俺の意識が覚醒したとき、真っ先に視界に入ってきたのは母さんであった。現在進行形で主婦をやっている忙しいおばさんだ。
そんな母さんは俺の部屋の扉の前で鋭い視線を俺の方に向けている。
だが、そんなことはどうでもいい。鋭い視線の前に、母さんの頭上に浮かんでいる変な数字はなんだ。
俺はベッドからむくり、と身体を起こし、その数字を凝視する。ただただ俺が今、疑問を持っている点はそこであった。
「母さん、頭の上のなに?」
母さんの頭上を指差しながら、俺は聞いたが、母さんはその疑問に対して少し困ったような表情をしていた。
「あんた、大丈夫? 変な幻覚でも見えてんじゃないの?」
自分の頭上の空気に触れながら母さんは憂いを漂わせていた。どうやら、頭上の100という数値は俺にしか見えていないらしい。正直、意味不明だ。
俺は自分の目を指で荒く擦る。そして、ゆっくりと瞳を開き心配な面持ちをしている母さんの姿を捉える。
だが、数字はなくなったばかりか増えていた。
――俺から見たら母さんの頭の右、母さんから見たら左に妙な数字がもう一つ浮かんでいたのだ。その数値は100とは全く逆の意味を示す0であった。
さすがにこれは幻覚ではない。母さんの頭の上と横には間違いなく数字が浮かんでいる。
「本当に大丈夫? そんなありえないものでも見たかのような表情して」
母さんからのそんな言葉を聞いてふと、俺は我に返る。
数字について話題を挙げても母さんはどうせ、俺のことを注視するだけだろう。だからさっきのはなかったことにしよう。
「大丈夫。ちょっと眠くて変なこと言ってたみたい」
それとなく、頭を掻きながら取り繕う。
母さんはその言葉に安心したのか、強張っていた表情はいつも通りの表情へと戻った。だが、相変わらずの鋭い視線は顕在している。
「そ、じゃあご飯出来てるから下りてきなさい」
母さんはそれだけ言い残して、俺の部屋を出ていった。
ひょっとしてこの出来事が俺の青春の一ページ目なのかもしれない。
心に妙なとっかかりを感じつつ、俺は母さんの後を追うようにして階段を一段、一段、下りていった。
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