村長宅に泊まるノコ

「ふぅ~。」

 大きく息を吐く。

 あの後、すべてのタケノコ達に付き添った。私がお金を持っていないと知っても『お礼ノコ!』とすべて奢ってくれた。彼らには感謝しないとな~。

 今、私はこのラダサフワ村の村長さんの家にお邪魔している。そして先方のご厚意で今晩泊めさせてもらうことになり、お風呂に入らせてもらっていた。

 お風呂と言うが実際は露天風呂だった。私は全身をお湯に浸からせ、今日の疲れを癒していた。露天風呂には柚子が浮かべてあり、爽やかな匂いが私を包み込む。

「それにしても、今日は色々ありすぎよ。」

 まずこの世界に召喚され、伝説の赤茄子魔導師様と言われ、大タケノコ殿を倒してくれと森の中に飛ばされ、タケノコ将軍と対決し、そしてお金がない。本当に一日で色々ありすぎた。もう体がくたくただ。

「ん~~~。」

 私は伸びをして、夜空を見上げた。

「綺麗だな~。」

 夜空には綺麗な星が眩く浮かんでいた。都会では見ることのない景色だ。

「帰りたいな…。」

 リラックスしたら急激に元の世界に帰りたくなってきた。帰って聖良や店主に会いたいな。

「でも、どうしよう…。」

 さっさと大タケノコ殿を倒して帰ろうと思っていたが、タケノコ達と触れ合い迷いが生まれていた。キングトマトマに言われ大タケノコ殿は悪い奴と思っていたのだけど、本当にそうなのか分からなくなった。少なくともタケノコ達に悪い奴はいなかったのだ。タケノコ将軍だって職務を全うしようとしていただけだし…まぁ、彼は嫌われていたけど。

「……。」

 流れてきた柚子を掴み考える。

「よし、トマト達の国に一旦帰ろう!」

 一度帰って再確認しよう。本当に大タケノコ殿は悪い奴なのかを。あと、路銀も持たせず森に放り込んだ仕返しをしなければ。

「赤茄子様~湯加減はいかがノコ?」

 ドア外から村長の奥さんの声がする。

「いい湯加減ですー!」

「あら、よかったわノコ!せっかく異世界からいらっしゃったノコ。ゆっくりしていってノコ!」

「ありがとうございます!」

 そういって奥さんは去っていった。

「く~もう少し浸かってあがろう。」

 奥さんに言われた通り、せっかく異世界から来たんだ。ちょっとは楽しまないとね。



ト マ ト ク エ ス ト(^^^”)



「お風呂ありがとうございます。」

 居間に訪れ声を掛けた。

 お湯から上がった私は、再び今日来ていた服を身につけた。清潔な服を着たいが人間の私に合う服が無いのでしょうがない。魔導師のローブと帽子は着ずに、折りたたんで腕に持っている。

「ゆっくり浸かれたノコ?」

 畳に座り本を読んでいた村長タケノコが聞いてくる。

「はい。おかげさまでゆっくりできました。」

「それはよかったノコ。」

 村長が満足そうに頷く。

「お父さん、赤茄子様、ご夕飯できたノコ~。」

 台所より声が聞こえる。

「あっ私手伝います!」

 流石にここまでお世話になっているのに何もしないわけにはいかない。

「ありがとうノコ~。じゃあこれを運んでくれるノコ?」

「はい!」

 2人で協力して料理を運んだ。

「もうお父さんったらお客様が手伝ってくれているのに本を読んでばっかりノコ!」

「ノコ~。」

 奥さんに怒られ村長がへこむ。

「いえ!私はお世話になっているのでこれぐらいはしないと…。」

「流石は赤茄子魔導師様ノコ~!立派な方ノコ~。」

「いや、そんなことは。」

 あまり言われないことを言われて頬が熱くなる。

「ささ、冷めないうちに食べましょうノコ!」

 今回奥さんが作ってくれた料理は、筍の炊き込みご飯、筍などの煮物、みそ汁、トマトがたっぷり和風サラダ、きゅうりと大根のお漬物だ。

「「「いただきます(ノコ)」」」

 まずは炊き込みご飯から頂く。うん、筍の豊潤な香りが広がって美味しい。

「とても美味しい!」

「お口にあってよかったノコ!」

 奥さんがにっこり微笑んだ。

 煮物やサラダもとても美味しい。そういえば気づいたことがあって、この村だけなのかそれともこの世界全体なのか分からないが、食材に動物性のものが一切なかった。全て野菜など植物性のもので、今日タケノコ達とアイスクリームを食べたのだけど材料が豆乳であった。

「ごちそうさま。」

 しっかりと完食する。噛み応えがあるからか満腹感がすごい。

「お粗末様ノコ。奥の空いている部屋に、お布団引いているから今日はゆっくり休むといいノコ。」

 奥さんが食器を片付けながら言う。

「あっ私が持っていきます!」

「ありがとうノコ。ノコ、なんだか娘ができたみたいで嬉しいノコ!」

「うちにはバカ息子しかいなかったからなノコ。」

「息子さんがいらっしゃったのですか?」

「もうずいぶん前に成人して家を出たノコ。」

「あいつはどこで何をやっているんだかノコ。」

 村長がやれやれって感じで言う。

「きっとどこかで元気にやっているノコよ。さぁ赤茄子様持っていきましょう。」

「はい。」

 私と奥さんとで食器を台所に持っていき、2人で食器を洗った。

 ついでに予備の歯ブラシを頂き、歯を磨いた。

「さっきはありがとうノコ。おやすみなさいノコ。」

「ゆっくり休むノコ。」

「こちらこそありがとうございます。おやすみなさい。」

 奥さんと村長に挨拶をし、奥の部屋に移動した。布団は私の為に縦に2枚引いてあった。心遣いが身にしみる。

 私は布団に入り目をつむる。

「おやすみなさい。」

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