第2話 トレジャーハント
「本当にここであってるの?」
「神武天皇の時代に禁呪の飴が生まれたという伝承が残っているくらいだ
神武天皇の所縁の地に禁呪の飴があると考えてもおかしくはない」
冬彦三・黒鈴・庭塚の三人は神武天皇が崩御されたという山奥を探検していた。
「しっ!誰か来る!」
「木陰の中に隠れるのよ!」
三人は木陰に身を寄せた。そこへ屈強な男二人が現れた。
「こんなところに本当にあるのかなぁ?」
「伝承には神武天皇の名前が記されていた。神武天皇に関連する場所に絶対に禁呪の飴があるはずだ!」
それを聞いた冬彦三は小声で呟く。
「やっぱり考える事は皆同じかー」
「でもなんだか信憑性が沸いて来たわね!」
「他の人に先を越されないようにしないと!」
「誰だそこに居るのは!」
男二人が冬彦三たちに気が付いた。
「大声を出すから…」
「さては、お前たちも禁呪の飴を探しに来たのだな!」
「横取りされてなるものか!」
「ちょ、ちょっとタイム…話し合いで解決を…」
しかし、二人は聞く耳を持たない。
「いくぞ!蝦藁!」
「おう!澤村!」
蝦藁という男は海老の尻尾のような髪型をしている。
一方、澤村という男は、スキンヘッドで目の周りに真っ黒なアイシャドーを塗っている。
蝦藁は冬彦三に殴りかかった。
「ひいいいい!!!」
冬彦三はお得意の逃げ足で回避した。後ろにあった木に蝦藁のパンチが当たり、その木はへし折られてしまった。
「なんと!」
「これが俺の自慢の攻々勢パンチだ!」
澤村も冬彦三にキックで襲いかかった。
「なんで俺ばかり!?」
冬彦三はまたしても逃げ足の早さで逃げきった。後ろにあった岩に澤村のケリが炸裂し岩が粉々に砕け散った。
「ばかな!!」
「どうだ!?俺の崩刑キックは!?」
冬彦三と黒鈴は自慢の逃げ足の速さでなんとか逃げきった。
「あら?庭塚くんがいないわ!?」
「逃げ遅れたか!」
冬彦三と黒鈴は慌てて引き返した。
「にひゃひゃ!仲間に見捨てられたか…」
「委員長と黒鈴さんはそんな事する人達じゃない!」
蝦藁は連続ジャブを繰り出した。
庭塚はお得意の運動神経で全てガードして受け流した。
「にひゃ!やるではないか!」
「だが二人がかりならどうかな?」
澤村は庭塚を後ろから羽交い締めにした。
「二対一なんて汚いぞ!」
「黙れ!お前はもうおしまいだ!」
「まてええええええ!!!」
そこに冬彦三が駆けつけた。少し遅れて黒鈴も到着した。
「三人居ようが、俺たちには敵わない!」
澤村は庭塚を離し、冬彦三に襲い掛かろうとした。
「今だ!」
庭塚は澤村にスタンガンを当てた!
バリバリ!
「いぎゃああ!!」
澤村は気絶してしまった。
「そこまでだ!」
蝦藁が黒鈴をヘッドロックしていた。
「こいつがどうなってもいいなら…」
「ふざけるんじゃないわよおおお!!!」
黒鈴は催涙スプレーを蝦藁の顔に塗した。
「ぐおおおおお…!!!」
「今の内だ!皆逃げるぞ!!!」
三人は逃げ出した。
「二人なら助けに戻ってきてくれると思っていたよ」
「当たり前じゃない!私たちは大親友だもの!」
「そうさ!
………それにしても、二人ともなんて物騒な物を持っているんだ?」
「これか?これは護身用だ」
「冒険するならこれくらい準備しておかないと!」
「委員長は何も持って来なかったのか?」
「え?懐中電灯とカメラだけ…」
二人は呆れてしまった。
「と、とにかく先を急ごう!」
三人は山奥を進んだ。進みながら庭塚は虫笑いした。
「またニヤけている…」
「あんまり微笑まないでぇ~」
庭塚は時々虫笑いするから、微笑みデブというあだ名が付けられたのだ。
さらに先に進むと、洞窟があった。
「あの洞窟の中を調べてみよう!」
洞窟の中に入ろうとすると洞窟の中にはすでに先客がいた。
またしても屈強な男が二人いた。
一人は親指が両手に2本ずつある男である。普通の親指と対になる様に小指の隣にもう1本の親指が両手共に生えているのだ。
そして、もう一人は左手が右手で右手が左手の男である。文字通り、左手に右手が付いており、右手に左手が付いているのだ。頭が180°回転しているかのような錯覚をしてしまうように左右の手が入れ替わっているのである。
「お前たちも禁呪の飴を狙うトレジャーハンターか!」
「あれは俺たちの獲物だ!悪いがお前たちには消えてもらう!」
「くそ、またかー!」
三人は逃げ出した。しかし、二人はものすごい形相で追ってきた。
黒鈴はお得意の逃げ足で逃げきれたかの様に思えたが、左手が右手で右手が左手の男は黒鈴のすぐそばまで追いついてきた。
「まてえええええええ!!!!!!」
「きゃああああああああああ!!!」
黒鈴は逃げるが、左手が右手で右手が左手の男は物凄いスピードで黒鈴に迫る!
「委員長よりはやーい!」
「当たり前だ!俺は陸上の名選手!200m走の日本記録保持者なんだからな!」
左手が右手で右手が左手の男は黒鈴の長い髪の毛を捕まえた。その男は黒鈴を引きずり寄せた。
「きゃあああ!髪を引っ張るなんて!髪は女の命なのよ~!」
「うるせー!トレジャーハントに男も女もあるか!」
一方、冬彦三も親指が両手に2本ずつある男に追われていた。
「ぐっ…、こいつ、宇宙一の逃げ足を誇る俺に追いついてきてやがる!」
「じゃあ俺は宇宙一の追い足ってことかな?」
足の速さは親指が両手に2本ずつある男の方が上手だった。何を隠そうこの男は200m走で第2位の日本記録保持者なのだ。
しかし、冬彦三は捕まらない!
木々を障害物として駆使し、なんとか撒いてみせた。
「ヤロー、どこへ行きやがった!?」
冬彦三はすぐそばの小木の中に身を潜めていた。
「出てこーい!!!出てこないとこれを爆発させるぞ~!!!」
(な?!)
親指が両手に2本ずつある男はダイナマイトとライターを手にしていた。
(まずい!しかし、まだ火はつけていない…
今の内になんとかしないと…
くそ!こうなったらやぶれかぶれだ!!!)
「こっちだ~!!!」
パシャッツ!!!
「うぉ!?まぶしっ!」
冬彦三は懐中電灯とカメラのフラッシュで親指が両手に2本ずつある男を目くらましした。
さらに懐中電灯を男に投げつけた!
懐中電灯はその男の頭に激突した。男は怯んだ。
その隙に冬彦三は体当たりし、その男からダイナマイトとライターを奪いとった!
バランスを崩したその男は丘を転げ落ちていった。
「よし、これは使える!」
冬彦三は洞窟の前に戻った!
「おーい!トレジャーハンター!出てこーい!さもないとダイナマイトを爆発させるぞー!」
ガサッ!
(来た!?)
「ま、まて!お、俺だ!」
「なんだ微笑みデブか」
「ずっとここに隠れていたんだ
凄い物見つけたな。ダイナマイトだなんて!」
「トレジャーハンターから奪いとったんだ」
「流石トレジャーハンターというだけあって良い物持っているなぁ」
「そこまでだ!!!」
黒鈴を羽交い締めにした左手が右手で右手が左手の男が現れた。催涙スプレーはその男に奪われているようだった。
「こいつがどうなっても良いのか?」
その男の両手にはサバイバルナイフが握られていた。
「黒鈴!」
「黒鈴さん!」
「こいつを助けたかったら、今すぐそのダイナマイトで自爆しろ!」
「うぅ…
冗談じゃないわよーーー!」
「騒ぐな!」
その男は黒鈴の首にナイフを突き立てた。
「委員長!私はどうなっても良いからダイナマイトをこの男に投げて!」
「な!?」
その男は驚く。
冬彦三も少し悩んだような表情を見せたが、すぐに頷いた。
「分かった!」
「おい!まて!
おい!そこのデブ!そいつにそんな事をさせていいのか?」
「庭塚くん…!」
「俺は信じる…!
委員長!早くダイナマイトをあの男に投げるんだ!」
「ああ!!」
冬彦三はダイナマイトに火を付けた。
そして左手が右手で右手が左手の男と黒鈴の方目掛けてダイナマイトを放り投げた!
「シット!!!」
男はナイフと黒鈴を放り出し逃げようとした。
と、同時に、黒鈴は逃げだしていた!
ドカーン!!!
その男は爆発に巻き込まれてしまった。
「ふぅ…間一髪だったわ…」
黒鈴は見事爆風から逃げおおせていた。
「お前の逃げ足の速さならダイナマイトの爆発から逃げてくれると信じていたよ」
「俺も!」
「私も、私の逃げ足の速さを信じて本当にダイナマイトを投げてくれると信じてたわ!
彼が逃げ遅れたのは、まさか本当にダイナマイトをこちらに投げてくるとは思わなかった事ね」
「仲間との信頼があったからこそ紙一重の差で逃げきれたんだな」
「ええ、足の速さでは彼の方が上だったけれど、あなた達を信頼してたから私は助かったのよ」
「そうさ!俺たちはいつだって信頼し合っていたから、いつもどんな苦難も乗り越えられてきたんだ!」
「さぁ、先に進もうぜ!」
三人は洞窟の中を進んだ。
洞窟の奥を進むと、左右に分かれた分岐点に出くわしてしまった。
「右と左…どっちに進めば良いのかしら?」
「右手の法則で右がいいんじゃないか?」
「私は左の方が良いと思うわ。こちらの方が入り口も広いし…」
「じゃあ間を取って真ん中で!」
冬彦三はその場を茶化した。
「も~う委員長!」
「真面目に考えてよ~」
しかし、冬彦三はふざけて真ん中の岩壁を押し進めた。
ゴゴゴゴゴゴ…
「何の音!?」
「俺がここを押したせいか!?
二人も手伝ってくれ!」
三人で真ん中の岩壁を押した。
「いっせーのーで!!!」
ゴゴゴゴーーーーー!!!!
すると岩壁が開き真ん中に道ができた。
「きっとここだ!ここに禁呪の飴があるに違いない!」
「行ってみましょ!」
奥へ進むと白く輝く、小さな球状の物体があった。
「あれよ!きっとあれに違いないわ!」
「やった!ついに禁呪の飴を発見したぞ!」
「本物か?!」
「間違いないでしょ。禁呪って書かれてるわ」
「やったな!みんな!」
「にわははははははは!!!禁呪の飴ゲッツ!!!」
三人は大喜びした。
「この白い光沢はまさか白金の飴か!?」
「いや、よく見たら銀って書かれているな」
「どうやら残念ながら最弱の飴を発見してしまったみたいね」
「どうするんだ?丸のみするのか?」
「最弱の能力かー…。これを口にすると他の禁呪の飴の能力を得られなくなってしまうんだよなぁ…
他の禁呪の飴ならもっと強力な超越能力を得られるかも知れない…
一度最弱の禁呪の飴を飲んでしまうと、他の禁呪の飴を見つけてももう超越能力は得られない…」
冬彦三はしばらく悩んだ。しばらく悩んだ末、ふと思いついた。
「そうだ!
他の禁呪の飴は見つけ次第破壊してしまえばいいんだ!
他の禁呪の飴がなければ俺が最強の禁呪の飴を手に入れたも同然だ!
俺って頭良い!」
「ちょっと、もっとよく考えてから…」
冬彦三はもう銀の飴を飲み込んでしまっていた。
「ごくん!
あー美味しかった!今まで食べた物の中で一番美味しかった!」
「あ~あ、飲み込んじゃった」
「も~、どうなってもしらないわよ!」
冬彦三は突然金色に光り出した。冬彦三は髪が逆立ち、目つきも顔つきも別人のようになった。
「なんだ貴様ら」
「委員長!?」
「委員長、俺たちの事が分からないのか?」
「委員長?それがこの体の名前なのか?」
「いいえ、違うわ、あなたは冬彦三よ」
「委員長はお前のあだ名だよ」
「成程。僕の相棒となる宿主の名前は冬彦三か。よろしくな下僕ども」
「げ、下僕!?」
「全く別の人格が乗り移ったみたい…」
「沈まれ!もう一人の俺!」
冬彦三は元の人格・風貌に戻った。
「どうやら銀の飴は超越能力を得られる代償として別人格まで入り込んでしまうようだ…」
「やっぱり食べなくてよかったぜ…」
「何はともあれ他の禁呪の飴を探そう。それと、もう一人の俺と超越能力をコントロールできるように特訓だ!」
冬彦三は次の目標に向けて邁進した。
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