-84度 行軍のスエオ

「ところで、普通の服があったら分けて欲しいなーなんて……」


 オトワールの主張で無害認定されたサクラが真っ先にした事は、腰ミノの卒業希望であった。

 セクシー成分が減ってしまうではないか!と思わなくもないが、さすがに野生児全開の恰好では色気もクソも無いのだ。

 とんでもない!とか言う特殊な人はいないと思う。多分。

 いたらアフリカとか行くと幸せになれるよ。うん。


「オトワールちゃんの服じゃ小さいだろうし、俺の予備を貸すよ。」


 スエオよりも先に提供を申し出たのは勇者(笑)の緑だった。

 緑に緑を着せる暴挙である。

 これは完全に色だけでシンパシーを感じているのではないだろうか。

 だらしない顔を見ると、少しばかり下心を感じているのかもしれない。

 だってキャラクターデザインは現代の浮世絵師(省略されました)

 日本酒が美味しく見えそうな美人画なので(省略されました)


「さすがに黄○意識しすぎじゃないの!?」


 名前がここまでストレートなのに意識していないわけが無かった。

 ついでに言うなら商品送ってくれないかなとか下心が作者にあったのかもしれない。

 地の文にも容赦なく突っ込むサクラに、オトワールは戦慄を覚えた。

 何故なら地の文のボケもサクラのツッコミもこの世界には無いネタであり、ボケだと気づくどころか、面白いとも思えなければ意味も分からなかったからだ。

 作者もビビッて伏字や省略で濁しており、元ネタを知らない読者の方と一緒である。作者絶賛迷走中だ。



「とにかく私たちは緑の魔物を退治しに来たんだけど……」


 話の流れを戻そうと、今度は自分達の事情を説明しだすオトワール。

 本来依頼を受けていた勇者(笑)達はあてにならないという判断だ。

 グッジョブ!


「確かに私は川を泳いでやって来たけど、この辺りにたどり着いたのはついさっきよ?

 何か別のがいるんじゃないかしら。」


「それじゃあやっぱり、最初の目的通り川に行く事にするべ。

 んだども、これ以上緑が増えたら区別つかなくなるんでねぇべか?」


 ひとまず緑と言うだけで疑われていたら、勇者(笑)の緑が真っ先に容疑者になってしまう。

 ひとまずは狩人が魔物に遭遇した現場を確認する事にしたスエオ達であった。


 ちなみにサクラですらスエオの発言の後半部分はスルーした。


 森の中を歩く七人(?)

 徐々に道も細くなり、ほぼ獣道の状態へと変わっていく。

 その中を歩く赤・緑・青・黒・茶・ピンク・緑。

 このパーティーは隠密性とか完全無視である。

 ちなみに茶色は麻の服を着ているオトワールである。


「こうやって森の中歩いてっと、おでの産まれた村を思い出すべ……

 植物の魔力も豊富にあるみたいだし、オトワールは魔法の練習しながら行くといいと思うだーよ。」


「うん、わかった。」


 川まではもう少しかかるようだが、スエオの発言に意味が分からない勇者(笑)達。

 植物の魔力ってなんだよと心の中で突っ込んでいた。

 しかし、オトワールが素直にうなずいた後

 人が二人通れるかどうかぐらいの幅しか無かった獣道は草が倒れて足場を固め、まるで絨毯じゅうたんのように道を作っていた。


 人の常識からは外れた魔法だが、サクラはまだこの世界に慣れておらず、魔法の種類に詳しくはない。

 結果、驚いたのは勇者(笑)達だけであり、その勇者(笑)達もプライドが邪魔をして当たり前のように思ってるフリをした。

 実際驚いていい魔法なのだが、スエオとサクラが平然としている事、使ったのがオトワールだった事から見栄をはったのだ。


 そしてこれがオトワールの勘違い系魔法無双物語へと続……くわけがなかった。

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