-85度 遭遇のスエオ

 スエオ達は緑の道を行き、川のほとりへとたどり着いた。

 狩人が魔物に遭遇したのはこの辺りのはずである。

 上流と下流を見渡した一行は、緑の森の中に不自然な物体を見つけた。


 それはまるでモップのようにもさもさであり、人型のようだが座り込んでいるのか毛玉のように見える。

 頭の上には双葉のように黄色い何かが生えているが毛の色は全身赤、緑の植物の中にその存在は目立っていた。


 赤い毛玉がこちらを振り向くと、その表情がうかがえた。

 ぎょろりと飛び出したような眼玉は動きに合わせて揺れているようで、口はまるで腹話術の人形のようにパカパカと動き出す。


「緑が二体もいるですぞ!緑は腹黒悪魔ですぞ!!」


 こちらを見ていきなり叫び出したかと思えば立ち上がる赤い毛玉。

 その体は大きく、身長は二メートルほどあるのではなかろうか。


「まんまムッ○じゃないのよおおおおおおお!怒られるわよおおおおおおお!」


 その赤い毛玉を見ていきなり叫び出すサクラ。

 サクラ以外には○ックという存在がわからず、とりあえず武器に手をかけて身構えた。


「うるさいですぞ緑のメス!子供番組なのについに色仕掛けまで始めやがったですぞ!」


「やめてぇ!それ以上は削除されちゃうううううううう!」


 意味不明な事を言い出す赤い毛玉に、全力で突っ込むサクラ。

 ある意味世界の危機なのではなかろうか。


「とりあえずあれが狩人さんが会った魔物なんだべか?」


 マイペースで確認を取ろうとするスエオ。

 緑色におびえていたはずなのに赤い毛玉というのは少しおかしいと思っているのだろう。


「緑に洗脳された男がたくさんいるですぞ!ついに性転換にまでチャレンジして大人の男までたぶらかすとか、性格が悪いにもほどがあるですぞ!

 この前緑の怖さを理解した狩人さんを見習うですぞ!」


 どう見ても犯人はこいつだった。

 と言うか聞いてもいないのに自供した。

 この赤い毛玉のような大男に洗脳されてしまったのだろう。

 サクラが犯人なんじゃないかと思わせるバレバレのミスリードを即回収ですぞ!


「この赤き、大地に光をもたらす如き大男よ!

 貴様のその赤を紅蓮の炎で染め上げてくれるっ!」


「スエオ、思い出したようにクールやるなよ……」


 いきなり厨二病発言を放つスエオに、冷静に突っ込むオトワール。

 クールという物がよくわかっていない為、突っ込みに少しキレが無い。

 一方サクラは顔を真っ赤にし、頭をかきむしって悶えていた。

 何やら古傷を抉っているようだ。


 ついでに紅蓮の炎担当で呼び出されたプロウレムも顔を真っ赤にして手で覆っている。

 こっちは単純に恥ずかしいだけのようだ。

 黒歴史どころか、スエオが生み出したばかりで歴史自体が無いからだろう。


 勇者(笑)達はメモしていた。

(黒なら漆黒とかがいいか?)

(緑ってどう言い換えれば良いんだろう?)

(青は空と海どっちに例えた方がいいのだろうか……)

(紅蓮の炎とかカッコイイですぞ!)


 二人が恥ずかしがって二人洗脳されかかって混乱はより酷くなっていくのであった。

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おで、オークだけど、くぅるに生きてぇだ。 ぱぷぅ @papu

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