おで、オークだけど、くぅるに生きてぇだ。

ぱぷぅ

-1度 あしたのスエオ

 おではオークのシャドウ・インテリジェンス・エターナル・スペシャルだ。

 みんなは現世の名前であるスエオって呼ぶだが、CSって呼んで欲しいだ。


 エロいことしか考えてない他の連中とおでは違うだ。

 おではくぅるな英雄を目指すだよ!




 ここは物語にありふれた、剣と魔法の中世ファンタジー世界。

 その中の、悪役として頻出ひんしゅつするオークの村に変なオークが産まれた。


 しかし、果たしてこの変なオークは本当に変なのだろうか。

 元はゾンビ的な怪物だったり、海に住むウロコがある豚鼻の怪物だったはずが、気付けば森で女性を襲っている設定になっているのだ。

 クールなオークがいても良いのではないか。

 ……本当にクールかどうかは別問題であると追記しておこう。



 電気もガスもなく、夜中の灯りはランプやかがり火があるものの、燃料を節約する必要があるため村は暗闇に沈んでいた。

 石造りの建物すら無く、木造の平屋が並ぶ人口八十人あまりの小さな村の、中央の広場にそのオークは両手を空に向けてたたずんでいた。


「もっと月の光を!この世界を喰らう混沌を封印せし右手に魔力を!」


 彼の名前はスエオ、彼は厨二病だった。


「さて、今日はこんなもんでいいべ。

 また一歩くぅるに近付いてしまっただ。」


 そしてクールと厨二病をはき違えた、残念なオークだった。

 雰囲気を楽しむだけの月光浴に満足したそのオークは、右手に布を巻き直すと自宅へと帰って行く。

 明日は初めて受ける、オークの成人の儀だ。


 オークの成人は年齢で決まるわけではない。

 生殖能力が認められたその時、成人として認められる。

 メスは初潮が成人の証として認められるが、オスは儀式を受けるのが普通である。

 通常八歳から十歳で成人の儀を受けるオークにおいて、十三歳の今まで儀式を受けなかったスエオは異端であった。


「くぅるなおでに、あんなエロいことをみんなの前でやれとか……

 やっぱりくぅるなおでにオークの世界は合わないだ。」


 成人の儀は性描写有りのタグを付けないと書けないような内容であり、この小説では描写できない。

 つまりは性欲を持てあます第二次成長期において、興味の対象でありいち早く受けたがるのがオークの常識である。


 成人として扱われるという事は、つまり労働などの義務や責任を負うことだ。

 それなのに成人の儀を受けたがるオークが多い。

 成人になれば一人暮らしが許され、結婚も出来る。

 魔法を使えるようになるのも成人してからだ。

 しかし、ほとんどのオークの目的は成人の儀そのものであった。

 つまり、エロいことをしたいだけだった。

 それで成人を目指すということは、ある意味自立を促す良い方法なのかも知れない。

 おつむの方は別問題である。


 そんな中、成人の儀を受けたがらないスエオに両親はヤキモキし、周囲は別の疑惑を抱いていた。

 実際はビビっているだけなのだが。

 ビビっているクールでない自分を認めたくないがため、ずっと成人の儀を先延ばしにしていたスエオ。

 しかし、十四歳になっても成人の儀を達成できないオークは村から放逐されてしまう。


 スエオは明後日が十四歳の誕生日だった。

 つまり、明日が最初で最後のチャンスなのである。


「成人の儀なんてとっとと済ませて、くぅるな氷魔法でも覚えるだ。」


 魔法は村内の制限だけの問題であり、放逐されても覚えられなくはないのだが、スエオは放逐される事を考えていない。

 自信があるわけではなく、現実から目を背けているだけである。




 そして、成人の儀で立ち上がれなかったスエオは村を放逐された。

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