第7話
俊一は必死で沼田の車を追尾した。見失ったら元も子もなくなるからだ。
車の波に乗ってしばらく走った沼田の車は、賑やかにネオンの点いたファミレスの駐車場に頭を入れた。俊一たちの車もすぐ横に停めると、階段を上がって店内に入った。金曜日だというのに客の姿はそれほどでもない。
六人は店員に案内されていちばん奥の喫煙席に陣取った。話を聞くのは沼田ひとりでいいのだが、四人で来ている以上そういうわけにもいかない。飲み物を注文し終えると、櫻子はテーブルにICレコーダーと手帳を置き、すぐに本題に入った。
「で、あそこのホテルに入ったのははじめてじゃないわよね?」
「ああ、俺は三回目」
「三回も行ってるの? 何で? そんなに面白い?」
櫻子は怪訝な顔で質問をする。
「そうだよ。っていうか、みんなにあそこの話をすると、どいいうわけか行きたがるんだ。怖いもの見たさっていうやつかな。だから俺は生ビール一杯で案内してやるんだ。それも大ジョッキを」
沼田は得意げな顔になって話す。
「さっきの三人組もその手合いなの?」
「いや、あいつらはまったく知らない。ここにいるふたりが見たいっていうから、連れて来たら、あとからあいつらもやって来たんだ」
沼田の話からすると、沼田の横に坐っている女性は、どうやら沼田の彼女らしかった。
「あなたは、何でこのホテルのことを知ったの?」
「俺も最初はダチから聞いたんだけど、俺としては案内されるより自分ひとりで行ってやろうと思ったんだ。まあ度胸試しってやつかな」
「三回目っていったけど、不法侵入で捕まったことはないの?」
「そういえば、二度目の時にヤバいことがあったけど、何とかセーフ。まあポリに捕まったとしても説教くらいですむだろうからあんまり気にしないけどね」
沼田は平然とした顔で煙草に火を点けた。
「ところで、あなたは壁の血を見たんでしょ?」
「もち。こいつと一緒に写真も撮った」
隣りの女性を指差したあと、ポケットからスマホを取り出し、写真集のなかから一枚の写真を櫻子に見せた。
「で、どう思う? この血の手形なんだけど、本物だと思う?」
「わかんねえし。でも俺たちは本物だと思ってる。だって、あの部屋の噂話は半端なかったから。それと、本物と思わなきゃ危ない目をして何度も侵入しないだろ」
「まあ、そうね」
そういってから櫻子は一息つこうとコーヒーカップに手を伸ばした。
櫻子はそれからも沼田に幾つかの質問をし、何かあったらまた話を聞かせて欲しいといって沼田たちと別れた。
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