10年後、あなたの前からいなくなるとしても
@harusora1115
第1話
「貴方がこれから過ごせる時間は、9年間です。これを踏まえて、近々決めるであろう大切なことをどうしたいか、決断してください。」
なんでもない日の夜に、突然目の前に立っていた初老の男性に、そんなことを言われた。
周囲は、ぼやけて暗い。
やけにリアルな、夢だと感じた。
初対面のその男性は、決して感じが悪いということはなく、無難なスーツを無難に着こなして、微かに微笑んでいるような目元の柔和な表情で立っていた。
「…9年後に、死ぬということですか?」
私は、その男性が俗に言う死神のようなものと推測して、ちょっと死ぬには早いなと驚きながらも、確認をした。
「はい。」
淡々と、でもこちらが不快にならないようなトーンで、男性は答えた。
なぜ急に、しかも今、こんなことを宣言されるのか、謎だらけだった。
「これって、みんな言われるんですか?」
「えぇ。然るべきタイミングで、一度だけ。」
諸々の謎は謎のままだったが、私は考えることが多すぎて、しばらく言葉を発せずにいた。
また一呼吸置いて、男性は続けた。
「あと、もうひとつだけ、貴方から質問をお受けできます。貴方が亡くなることに関して、何か、確認されたいことがあれば、ひとつだけ、お答えが可能な範囲でお伝えできます。」
「そうですか。」
私は、こんな状態でも当たり障りのない返答を返して、何か会話を繋げなければと気を使う自分に、心の中で苦笑いをしていた。
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